十三人参上(十)
幹部による審議が始まった。
「天上界王、地上界防衛部にはどれくらいの兵を所属させるのですか?」
「うむ、六、七万の兵を既に確保してある。司令官と話し合っておいたのだ」
「なるほど」
六、七万の兵である。そんな人数の兵をヒョイと確保できる天上界王ってすげー!
いや、それは違う。
天上界軍は大規模でも表せないぐらいの大きさなのだ。
命に何かあってはいけない女と長男以外には兵役が課せられる。
そして、天上界の一年の新生児の数は億単位だ。
それに加え、女長男でも本人から志願するなら軍に加えられる。
これまで話を聞いたら、天上界軍の大きさは解るだろう。
七万なんて、屁である。
「人材が確保できているのならこちらから言うことは無いのですが…」
一人の幹部が言った。
「では、地上界防衛部の設立を承認します」
すると、天上界王が言った。
「平兵士の確保は出来ているのだが、何せフェニックスは政治などに関する能力が低い。副長や補佐などをつけたいのだ」
「なるほど。それならば、彼が妥当でしょう」
眼鏡をかけた男が顔を上げる。
「出来るかね?」
「無論」
「では、君が副長兼補佐という事で良いのかな?」
「無論」
「では、フェニックス。彼と頑張りなさい」
「宜しく」
男が挨拶してくる。
「ドモ」
そう、返した。
天上界王、フェニックス、副長兼補佐は今フェニックスが就任演説をするために巨大ホールへと歩いていた。
道中、彼らと会った。
「フェニックス君!」
「おお、サラマンダー!全員いるな!服が違うから気づかなかったぜ!」
そう、覇者隊の着ていた服は変わっていた。
だが、周りの兵士とは違った。
「これは俺達の制服だ。平兵士とは違うんだぜ」
ペガサスが自慢気に言った。
「マジか〜」
フェニックスが羨ましそうに言うと、男が耳打ちしてきた。
「演説の際はあなたも着替えて頂きます」
「マジで!?やったね!」
フェニックスが七人に向き直ると、
「浪士組はどうしたんだ?」
「彼らは少人数部にいるよ。僕達は地上界防衛部にも所属することになるからね」
「そーか。そーいえばそーだな」
「じゃ、ホールまでお供させてもらうぜ、地上界防衛長さん」
「へ、変な言い方するなよサンガー」
七万の兵士を収容し、かつ演説の出来るような場所。どんな所か、見当がつくだろうか。参考までに、東京ドームの収容人数は四、五万人である。
七万人が収容できる巨大ホール。その用途は野球から今回のような演説まで幅広い。
天上界王が相談した司令官から、既に巨大ホールに向かえと全地上界防衛兵に告げられており、続々と兵が中に入っていた。
「すげぇな…。」
「地上界防衛長、裏口からお入り下さい」
副長兼補佐が告げる。
「お前固いな。フェニックスで良いよ」
「では、フェニックス殿。どうぞ」
続けて天上界王が入る。覇者隊も入ろうとしたが、
「あなた方も地上界防衛兵に過ぎません。向こうからお入り下さい」
「僕達はフェニックス君の友達ですよ」
クラーケンが抗議するが、
「軍に友情は関係ありません」
止められた。
仕方無く大軍の列に並ぶ。
他は全員平兵士なので、服装が違う。フェニックスが見つけようと思えば見つけられるだろう。
フェニックスが中に入ると、不思議な部屋に着いた。
ある部分はメイクや着替え用。ある部分は机がある。そして、真ん中にはエレベーターらしき物があった。
「まず、服を着替えてください。次に、どのような事を話せば良いか大雑把なものを説明します。実際に話す文章は自分でお考えください。そして、あのエレベーターで上がれば会場です」
フェニックスはクローゼットを開いた。
一着しかない。
これを着ろという訳だ。
茶色のスーツ。
目立たなさそうだが、その方が兵が好感を持ちやすいらしい。
二百十三歳にして初めてのスーツ。慣れない手つきで着た。
「お気に召されましたか」
「召してなくてもどうせこれしか無いんだろ」
「では、演説の内容を。自己紹介、抱負、激励。これをお願いします」
「ホントに大雑把なのね」
「では、参りましょう」
フェニックス、副長兼補佐、天上界王はエレベーターに乗った。
上に着いた。
まずは天上界王からのスピーチがあるということで、一旦休憩。
辺りを見回して覇者隊の姿を探す。
「お、いたいた」
ビシッと背筋を立てている兵士の中にちゃらんぽらんなのが七人いたのですぐに見つけられた。
「えー、諸君!今日は地上界防衛部の誕生である。実にめでたい。それでは、何故こんな部を作ることになったか説明しよう…」
天上界王は十三人との事を語り始めた。
すると、フェニックスは異様な気配を感じた。
数は解らないが、覇者隊の他にもいる。
「誰なんだ…。」
フェニックスが必死に探していると、
見つけた。
「あっ、あれは…!」
五人の武士が天上界王を見つめている。
「近藤、土方、沖田、斎藤、山南!浪士組じゃないか!」
きっと天上界王の警護で密かに来ていたのだろう。
だが、気配はまだあった。
「これ、人間じゃないな…?」
そう、フェニックスの感じ取った気配は人間のものとは違った。
すると、空から見覚えのある丼が落ちてきた。
「どんぶりどじょう!」
「一週間ぶりぐらいだな」
「何でここに?」
「可愛い弟子の晴れ舞台を見に来たのだ」
「サンキュ!」
フェニックスが礼を言うと、天上界王の出番が終わった。
「では、これでわしのスピーチを終わろう。次は、お待ちかねの地上界防衛長の挨拶だ」




