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五人の覇者  作者: コウモリ
十三人参上
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十三人参上(六)

どんちゃん騒ぎが続く中、正気を保っているのは酒を飲んでいない人間だけである。

皆にお酌をしているツルギ、未成年のフェニックス、サラマンダー。

理性を保っているのはこの三人だけである。

また、人によって酒に強い弱いがあり、それによって酔い潰れるタイミング、急性アルコール中毒になる境目が変わってくる。

バタンッ!

だから、酒に弱い水神が居眠りを始めた。

「水神さん酔い潰れたな」

土方が自らの肺は気にせずに振り向いた。

「酒に弱かったよーだな」

日本酒二瓶目のサンガーがヒックウイーとやりながら言った。

「ベッドまで移動させるか」

天上界王が抱き上げて運ぼうとすると、

「天上界王セクハラー」

と笑いっぱなしの沖田がキャッキャと言った。

「総司、無礼は慎まんか」

酒バカ組で最も飲量が少ない近藤がたしなめる。

「え、無礼講じゃないの?」

沖田が返した。

そんなどんちゃん騒ぎである。

「お前らいい加減にしろー」

すると、全く酔っていないフェニックスが忠告した。

どうやら当初の目的を思いだしたようである。

「そろそろ話を再開するぞ」

「らぁらぁ、ろうろっろられらっれるれろ(まぁまぁ、もうちょっとだけ待ってくれよ)」

「何だぁ、ペガサス?イカれたか?」

「いられれれーろ、ろっろろっららっらられらろ(イカれてねーよ、ちょっと酔っぱらっただけだぞ)」

「ったく、酔い覚ませや、テラフレア!」

「大龍火炎!」





天上界王の門番の会話。

「お、おい、火事だ火事だ!」

「なに!?ホントだ、屋内燃えてるぞ!」






「酔いは覚めたかい、酒バカ組?」

「アルコールは良く燃えただろう」

フェニックス、サラマンダーの説教。

十一人のアホ共が体の内側から燃えて聞いている。

因みに、ツルギは避難済みだ。

「あの…そろそろこの燃え盛る炎を消していただいても…」

「ケッ、クラーケンと水神で何とかしろよ」

見捨て放つ二人…と言いたいところだが、消す手段を持っていないのだった。

「パワーモア!」

「パワーモア!」

火を消し、さらに酔いが原因で唸る全員への特効薬である。

意外と、「二日酔い困ったときはパワーモア♪ ピーンポーン♪」なんてCM出したら売れるかもしれない。

とにかく、全員復活である。

フェニックスの出番だ。

「話を続けるぞ」

進行、クラーケン。

「どこまで話してたんでしたっけ」

「ったく、覚えてろよ、俺の軍人の位置についてだ」

全員が、あー、と思い出す。

それにともない浪士組の五人が輪から外れた。

天上界王が言った。

「フェニックス、どうなんだ?」

「世話役も後継ぎも決まったし、承諾するよ」

「そうか」

天上界王が安堵の表情を見せる。

「で、どんな位置に就くんだ?」

「第二の極界戦争が勃発し、終わるまでは地上界防衛長、という事でどうだ?」

「長!?」

フェニックスの目が飛び出そうなぐらい驚く。

「長って、一番上ってことか!?」

フェニックスだけでなく、他の奴等も相当驚いているようだ。

「そうだ。地上界防衛長。」

天上界王が当たり前のように言う。

「地上界の事を知らないのはわしだけではない。というより、九割九分の民が知らないと言っても過言ではない。だから、長には地上界の人間が妥当だろう」

天上界王の言い分には誰もがなるほど納得である。

しかし、

「でもよ、天上界王。俺は長なんて今までやったこと無いからどうすれば良いのか良く解んないぜ」

なのだ。

「心配ない。そう言うだろうと予想はしていた。だから、副長、補佐などはしっかりアシストの出来る人間にしておく。地上界に関すること以外はそいつらに任せておけば良いから自ら戦線に立つことも可能だ。そうでなければやりたくないだろう?」

図星。

「なら大丈夫か…。」

フェニックスの悩みが解消された。これで断る理由はない。

というより、かなり良い条件だ。

「解った。地上界防衛長になるよ」

周りから歓声が沸き起こった。

そして、フェニックス君の質問。

「極界戦争が終わったらどうなるんだ?」

「軍幹部に席を用意する」

「エリート街道まっしぐらじゃん、フェニックス君!」

サラマンダーがこういう状況の時の典型的な褒め言葉を口にする。「エリート街道まっしぐら」だなんて、典型的にも程がある。

だが、典型的を超えて単細胞になったフェニックスには十分通用する。

「そんな、世辞はいらないよぉ、サラマンダ〜」

体中クネクネさせている。

尻尾を振る犬よりも解りやすい。

「寂しくなるなァ、フェニックス!」

コンニャク小僧の肩にバジリスクが手を置いた。

「バジリスク…。」

ニコニコがシュンと消える。

「ま、でも地上界防衛の際は覇者隊も戦線に立つからそん時また話そうや、地上界防衛長!」

「…そうだな」

フェニックスに笑顔が戻る。だが、その中身は「照れ」ではなく「寂しさ」だった。

「心配するな」

「…天上界王?」

心配するな。

天上界王がそう言ってきた。

「地上界防衛長の最初の仕事は地上界に行ってそこにいる人々を説得することだ。それには覇者隊も同行してもらう」

「おおっ」

全員が驚いた。

「ありがとう、天上界王」

フェニックスが珍しく、真面目に礼を言った。

「で、我々は今から何を?」

クラーケンが天上界王に聞く。

「軍に行って入隊の手続きを行う」


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