第16章 消える前の3分
音を止める訓練から約2週間が過ぎた、8月最後の週。
鷹宮怜司の端末へ、学校から処分終了の通知が届いた。
『本日をもって、校内における能力使用制限期間を終了する』
復帰してから1か月。
授業と認可された演習を除き、『重圧』を使うことを禁じられていた期間が終わった。
新学期からは、能力者クラスの通常訓練にも参加できる。
制服の袖につけていた制限中の腕章は、すでに学校へ返却した。
透と美月への接触禁止については、解除の通知がない。
鷹宮は画面を閉じた。
自由になったという感覚はなかった。
机の上には、終わっていない夏休みの課題が積まれている。
その隣には、修理から戻った万年筆が置かれていた。
内部部品は交換され、外側のインク汚れもきれいに落とされている。
見た目だけなら、故障する前と変わらない。
けれど、鷹宮は一度も使っていなかった。
手に取るたびに、部品だけが8年以上経過していたという診断を思い出す。
久世透が最後に触れた物。
予備検査では、能力なしと判定された生徒。
学校へ現れた偽物の測定局職員。
自分が送った名前。
疑問は、まだ何も消えていない。
鷹宮は課題用の端末を開いた。
数式の続きを入力しようとする。
画面の中央に、灰色の点が現れた。
最初は、表示の不具合だと思った。
点は3重の円へ変わる。
見覚えのない印だった。
その下へ、細い文字が表示された。
『前回照会を再開します』
鷹宮の指が止まった。
認証情報を失ってから、一度も開けなかった会員制情報掲示板。
画面の色も、文字の形も同じだった。
『対象、久世透』
胸の奥が冷たくなる。
次の文章が表示される。
『保護責任者が保有する、過去の同系統能力者に関する研究用複製の所在を確認してください』
『保護責任者、神代宗一郎』
画面の右上に数字が現れた。
『回答期限、00:03:00』
3分。
1秒ごとに数字が減っていく。
鷹宮は入力欄を見る。
相手は、久世が過去の誰かと同じ能力を持っていると考えている。
神代が、その資料を隠していることまで知っている。
万年筆への疑いは、間違っていなかった。
そう証明されたような気がした。
指が入力欄へ近づく。
神代が何を持っているのかは知らない。
保管場所もわからない。
そのまま答えればいい。
『知らない』
それだけなら、新しい情報を渡すことにはならない。
入力欄へ文字を打ちかけて、止めた。
前回も、最初は学校名だけだった。
次に名字の頭文字。
情報が足りないと言われ、最後には久世の氏名と所属クラスを送った。
1つ答えれば、次の質問が来る。
相手は、知りたい鷹宮の気持ちを使って、必要な情報まで歩かせた。
残り2分31秒。
鷹宮は入力した文字を消した。
端末の画面を保存する操作を行う。
反応はない。
保存先を開いても、画像は作られていなかった。
前回と同じように、端末の内部から記録を消す準備がされている。
鷹宮は椅子を蹴るように立った。
机の脇にある家庭用の印刷機へ手を伸ばす。
端末と印刷機は、課題を印刷するために接続したままだった。
画面全体の印刷を指示する。
印刷機が低い音を立て、白い紙を吸い込んだ。
残り1分58秒。
最初の紙が出てくる。
上半分には3重円と、久世の名前が印刷されていた。
下の文章が途中で切れている。
鷹宮は表示範囲を動かし、2枚目を印刷する。
残り1分21秒。
紙がゆっくりと送り出される。
画面には、新しい1文が加わった。
『回答がない場合、協力意思なしと判断します』
残り48秒。
鷹宮は3枚目の印刷を指示した。
印刷機の動きが、数字より遅く感じる。
27秒。
紙の端が見える。
14秒。
鷹宮は出てきた紙を引っ張らず、排出が終わるのを待った。
無理に引けば、紙詰まりを起こす。
5秒。
4。
3。
2。
1。
画面が暗くなった。
再び表示されたとき、情報掲示板も入力欄も消えている。
課題の数式だけが残っていた。
印刷機の上には、3枚の紙がある。
鷹宮は1枚ずつ確認した。
文章は全て読める。
3重円も、回答期限も残っている。
紙は、画面の向こうから消せなかった。
鷹宮は学校から渡されていた緊急連絡先を開いた。
前回の情報流出後、不審な連絡を受けた場合に使う番号だった。
発信の直前で指が止まる。
報告すれば、自分が久世への疑いを捨てていないと知られる。
今日で終わった処分が、再び始まるかもしれない。
家の関係者から認証情報を得た経緯も、改めて調べられる。
何も言わず、紙を捨てることもできる。
前回、自分は知りたいことを優先した。
今度は、知られたくないことを優先しようとしている。
形が違うだけで、中心にいるのは同じ自分だった。
鷹宮は発信ボタンを押した。
『はい。緊急連絡窓口です』
応答した職員へ、最初に名前を伝える。
「2年の鷹宮怜司です」
『どうしましたか』
「以前使った情報掲示板から、もう一度連絡が来ました」
言葉にすると、後戻りできなくなった。
「返信はしていません。消える前に、画面を紙へ印刷しました」
その日の午前10時34分、透の端末へ神代から電話がかかってきた。
透は自室で、音の停止実験について操作記録帳を整理していた。
頭痛は翌日には完全に消えている。
神代から直接電話が来るのは、訓練日時を知らせるとき以外では珍しかった。
『今から学校へ来られるか』
「行けます」
『鷹宮君が、外部の相手から新しい連絡を受けた』
透の手から鉛筆が落ちた。
「俺のことですか」
『君の名前と、私が持つ資料について書かれている』
「鷹宮先輩は、何を送ったんですか」
『今回は何も送っていない。画面を印刷して、学校へ報告した』
透はすぐに返事ができなかった。
鷹宮が自分の名前を外へ渡した。
その事実は変わらない。
けれど、同じ相手から連絡を受け、今度は答えなかった。
『接触禁止は継続中だ。学校で話を聞く場合も、君が同席する義務はない』
「美月さんは?」
『同じように選んでもらう。君たちが別々の結論を出しても構わない』
「少し考えてもいいですか」
『もちろんだ。10分後に、もう一度連絡する』
電話が切れる。
透は落ちた鉛筆を拾った。
机の上には、黒い操作記録帳がある。
日時。
対象。
方向。
終点。
起きたことを、感情と分けて記録するための帳面。
透は新しい紙を1枚取り、今わかっていることを書いた。
鷹宮が、外部から連絡を受けた。
透の名前が書かれていた。
返信はしていない。
画面を印刷した。
学校へ自分から報告した。
まだわからないこと。
鷹宮が何を考えているか。
外部の相手が何を目的に連絡したか。
神代の資料を、どこまで知っているか。
書き終えても、怒りは消えなかった。
消すために書いたのではない。
怒りだけで、今日の鷹宮の行動まで決めつけないために書いた。
透は美月へ電話した。
『透くん』
「学長先生から聞いた?」
『うん。今、行くか考えてる』
「俺は、行こうと思う」
『理由、聞いてもいい?』
「紙に俺の名前がある。相手が何を知ってるのか、自分で確認したい」
『鷹宮先輩と話したい?』
「わからない。でも、話さないまま、また想像だけで考えるのも嫌だ」
美月は数秒黙った。
『私も行く』
「無理に同じにしなくていいよ」
『同じにしたんじゃない。私も、自分で決めたの』
「うん。わかった」
『学校まで別の道で行こう。着いたら連絡する』
正午前、学長室の隣にある会議室へ6人が集まった。
神代、榊原、鷹宮の担任、鷹宮、透、美月。
透と美月は扉に近い側へ並んで座った。
鷹宮は、長机を挟んだ反対側にいる。
制服ではなく、白いシャツを着ていた。
袖に、能力使用制限を示す腕章はない。
透明な証拠袋へ入れられた3枚の紙が、机の中央に置かれている。
「始める前に確認する」
神代が全員を見た。
「久世君と相沢君への接触禁止は、現在も有効だ。本日の聞き取りは、学校管理下で行う例外とする」
鷹宮が黙って頷く。
「途中で話を続けられないと感じた者は、理由を説明せず退室していい」
透は紙を見る。
自分の名前が、灰色の文字で印刷されている。
「まず、鷹宮君。今朝起きたことを、順に説明しなさい」
鷹宮は、処分終了の通知を見たあと、課題用端末を開いたところから話し始めた。
3重円。
再開された照会。
久世透の名前。
神代が持つ研究用複製。
3分の回答期限。
入力しかけた『知らない』という言葉。
保存できなかった画面。
3回の印刷。
時間切れと同時に消えた接続。
学校への電話。
「返信は、本当にしてないんですか」
美月が尋ねた。
「していない」
「文字は打った?」
「『知らない』と入力した。送信する前に消した」
「どうして」
「1つ答えれば、次を求められると気づいた」
鷹宮は、透ではなく机の上の紙を見る。
「前回は、そうやって久世の名前まで送った」
透の胸の中で、古い怒りが形を持つ。
目の前にいる鷹宮と、端末の向こうへ自分の名前を打った鷹宮は同じ人物だ。
今日、答えなかったことだけで、過去が別のものにはならない。
「この3重円に見覚えは」
神代が尋ねる。
「ない。前の掲示板には表示されていなかった」
「文章の中にある研究用複製については」
「知らない」
「誰かへ、その言葉を尋ねたことは」
「ない」
「端末を、家の関係者と共有しているか」
「自分だけが使っている」
神代は鷹宮の担任と確認を交わす。
「現時点で、鷹宮君が新しい情報を相手へ渡した形跡はない。印刷された内容も、以前保存された画面と表示形式が一致している」
「相手は、学長先生が何か持ってると知ってるんですか」
透が尋ねる。
「少なくとも、そう考えている」
「本当に持ってるんですか」
鷹宮が神代を見る。
神代は表情を変えなかった。
「君へ開示する情報ではない」
「久世には関係がある?」
「その質問にも答えない」
「でも、同系統能力者と書いてある」
鷹宮の視線が、初めて透へ向いた。
「やっぱり、お前は何か隠してる」
部屋の空気が固くなる。
透の背中が、旧理科準備室で受けた圧力を思い出す。
痛みはない。
鷹宮は能力を使っていない。
それでも、身体は先に緊張した。
「鷹宮君」
担任が止める。
「接触禁止の相手へ、追及するような発言は慎みなさい」
鷹宮は透から視線を外した。
「……すみません」
その言葉が誰へ向けられたのか、透にはわからなかった。
「疑いは、まだ消えていないんですね」
透が言った。
「消えていない」
鷹宮は否定しなかった。
「校内予備検査で何も出なかった。でも、万年筆に起きたことは説明されていない。外の相手も、お前を対象にしている」
「だったら、どうして報告したんですか」
「疑っていることと、外の相手へ渡していいことは別だからだ」
以前、神代が言った言葉と似ていた。
鷹宮は、ようやく透を見る。
「僕は、お前の嘘を暴くことと、自分が正しいと証明することを同じだと思っていた」
「今は違う?」
「疑いを確かめるためなら、何をしてもいいわけじゃない。それだけはわかった」
「遅いです」
美月が言った。
「あなたが名前を送ったあと、学校に偽物の職員が来た。透くんは、ずっと誰かに見られてるかもしれないって考えながら生活してる」
「わかっている」
「わかってない。鷹宮先輩は、自分の名前を知らない人に追われてないから」
「そのとおりだ」
鷹宮は言い返さなかった。
「だから、わかったとは言わない。僕が始めた部分があるとしか言えない」
美月の唇が結ばれる。
怒りを向けても、相手が反発しない。
そのことが、かえって言葉の行き先を難しくしていた。
鷹宮は両手を膝の上へ置いた。
「まだ、話していないことがある」
担任が鷹宮を見る。
「今朝の連絡についてですか」
「違います。以前の聞き取りについてです」
鷹宮は一度、息を吸った。
「久世の靴箱へ入れた紙は、僕が書いた」
透は動けなかった。
『相沢から離れろ』
差出人のなかった紙。
「久世が相沢へ付きまとっているという話も、僕が流した。直接言った相手が何人かいる」
「前回の事情聴取では、関与を否定しましたね」
神代の声は静かだった。
「嘘をつきました」
「なぜ、今話すんですか」
美月が尋ねる。
「この紙を持ってきたことだけ話せば、僕が正しいことをしたように見えるからだ」
鷹宮は、証拠袋を見た。
「1つ正しいことをしたからといって、前にしたことは消えない」
誰もすぐには答えなかった。
神代が、鷹宮の担任へ新しい記録用紙を求める。
「今の申告は、継続中だった調査へ加える。虚偽の説明を含め、別途、処分を検討する」
「はい」
「今日で能力使用制限が終わったこととは別に扱う」
「わかっています」
鷹宮は透へ向き直った。
「久世。能力を使って押さえつけたこと。端末を壊したこと。脅す紙を書いたこと。噂を流したこと。外へ名前を送ったこと」
1つずつ、逃げずに口にする。
「僕がした。悪かった」
透の中に、すぐ返せる言葉はなかった。
謝罪を聞けば、何かが軽くなると思ったこともある。
実際に聞くと、痛みも恐怖も、そのまま残っていた。
「今は、許せません」
透は言った。
「今日、紙を残して報告してくれたことには、ありがとうございますって言えます。でも、それと前のことは別です」
「それでいい」
鷹宮は短く答えた。
美月も鷹宮を見る。
「私も、まだ許せません」
「わかっている」
「でも、今日答えなかったことは、正しかったと思います」
「……ありがとう」
鷹宮は視線を下げた。
許すことと、正しい行動を認めることは、同じではない。
疑うことと、傷つけることも同じではない。
1つずつ分けなければ、また何かを正義という言葉で塗りつぶしてしまう。
「能力使用制限が終わったのは、信用されたからですか」
鷹宮が神代へ尋ねた。
「違う」
神代は明確に答えた。
「定めた期間を終え、その間に能力使用の違反がなかったからだ。処分を理由なく延長しないことと、信頼が回復したかは別の問題になる」
「今日、嘘を認めたことで、また能力を制限しますか」
「新しく確認された行為と虚偽説明に対する処分は、手続きに沿って判断する。最初から結論は決めない」
神代は透と美月にも視線を向けた。
「罰を終わらせることは、被害を受けた側へ許しを求めることではない。反対に、許されていないことを理由に、罰を無期限に続けてもいけない」
透は鷹宮の袖を見る。
腕章はない。
それでも、旧理科準備室で起きたことは消えていない。
終わった処分と、残る責任。
2つは同時に存在できる。
「久世君と相沢君への接触禁止は、当面継続する」
神代が言った。
「必要な聞き取りがある場合は、今日と同じように学校管理下で行う。3人とも、それでいいね」
透と美月が頷く。
鷹宮も、異議を唱えなかった。
聞き取りが終わると、鷹宮は担任とともに会議室を出た。
扉の前で一度立ち止まる。
「久世」
担任が注意するより先に、鷹宮は続けた。
「これからは、学校の手続き以外で、お前のことを調べない」
透は少し考えた。
「わかりました」
「疑っていないとは言えない」
「それも、わかってます」
鷹宮は頭を下げ、廊下へ出た。
扉が閉まる。
部屋には、神代、榊原、透、美月の4人が残った。
榊原が、証拠袋へ入った紙を裏返す。
3重円。
久世透。
過去の同系統能力者。
研究用複製。
神代宗一郎。
「ここまで知られています」
榊原が言った。
「国家魔法局に残る閲覧履歴を調べた可能性が高い」
神代は、自分の名前が印刷された行を見る。
「複製を作ったことは、正式な許可記録に残っている。そこへ到達したのだろう」
「白峰朔の名前までは、書いてありません」
美月が紙を確認する。
「鷹宮君へ見せる必要がない情報を外した可能性がある」
「相手は、どこにあると思ってるんでしょう」
透が尋ねる。
「わからないから、鷹宮君へ確認させようとした」
「移したほうがいいですか」
「今、動かせば、その動きを観測される可能性がある」
神代は、管理棟の地下へ続く方向を見る。
地下第二演習室の金属箱。
3つの鍵と、生体認証で守られた白峰朔の記録。
「保管場所は変えない。開封手順と接近記録だけを変更する」
「破棄するのは?」
「複製を失っても、相手が持つ知識は消えない。こちらだけが過去の情報を失うことになる」
透は頷いた。
証拠を消せば、安全になるとは限らない。
遅れて届いた音と同じように、見えなくなっても残るものがある。
「鷹宮先輩へ連絡したのは、資料を探させるためだけですか」
美月が尋ねる。
「ほかの目的も考えるべきだ」
神代は、鷹宮が印刷した3枚の時刻を見る。
「鷹宮君が再び情報を渡すか。それとも学校へ報告するか。私たちがどう動くかを確かめる意図もあったかもしれない」
「報告しても、相手の狙いどおり?」
「正しい行動が、常に相手へ何も与えないとは限らない」
神代は静かに答えた。
「それでも、報告しないよりはいい。相手に観測される可能性と、1人で危険を抱えることを比べれば、共有するほうが守れる範囲は広い」
榊原が新しい行動手順の用紙を開いた。
「学長も、1人で移動しないようにしてください」
「私もか」
「優先観測対象になった可能性があります」
「まだ、そうと決まったわけでは」
「怖いときほど、確認できたことから判断するのでしょう」
夏祭りの写真について話し合ったとき、神代が透へ言った言葉だった。
神代は反論しかけ、口を閉じた。
「わかった。当面、校外へ出る際は同行者をつける」
「校内でも、予定を共有してください」
「それも受け入れよう」
透は少し驚いた。
いつも守る側にいる神代が、誰かに守られることを受け入れた。
「防波堤も、1人じゃなくていいんですね」
透が言う。
「君に言われるとは思わなかった」
神代の口元が、わずかに緩む。
「だが、そのとおりだ」
会議室を出る前、透はもう一度、印刷された紙を見た。
鷹宮が答えなかった3分。
その3分で、外部の相手が消えたわけではない。
過去の責任が消えたわけでもない。
ただ、次に同じ入口が開いたとき、鷹宮は前とは違う方向を選んだ。
それだけは、紙の上に残っていた。
灰色のスーツの男は、学校から通りを2本隔てた場所に停めた車の中にいた。
監視画面には、鷹宮と能力者クラスの担任が校門へ入る様子が映っている。
約40分後、別々の経路から透と美月が入校した。
その後、6人は長い時間、校外の監視映像へ姿を現さなかった。
会議の内容は聞こえない。
それでも、鷹宮が回答しなかったあとに学校へ来た事実は確認できた。
男は結果を報告する。
『旧情報源、回答なし。印刷物を持参し、学校関係者へ報告した可能性が高い』
『神代宗一郎、榊原真帆、候補者、目撃者が同時間帯に校内滞在』
上位者から返答が届く。
『旧情報源を非協力と判定。再接続を停止する』
『接触、威圧、報復を禁ずる』
鷹宮の名前が、情報源の一覧から外される。
代わりに、保護系統の反応記録へ移された。
『研究用複製は神代宗一郎の保護下にある可能性が高い』
『所在確認を継続。現段階での回収は禁止』
男は校門を見る。
夕方、神代が榊原とともに外へ出てきた。
これまで、神代が校外へ出る際に同行者をつけることは少なかった。
保護手順が、また1つ変わった。
鷹宮が返さなかった答えは、紙の上に残った。
その答えを待っていた者たちもまた、見えない場所から消えてはいなかった。




