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「配信など破廉恥な!」と言っていた古風な最強呪術師様、現代っ子の俺にバズ術を教え込まれて登録者100万人を突破してしまう  作者: すかいはい
第2部:【チーム結成編】

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第26話:【チームデビュー戦】

 タワーマンションの指令室タクティカル・ルーム。俺は複数のモニターに囲まれ、ヘッドセットを調整した。


「――ライブ配信、開始まで五、四、三……」


 画面越し、別室にいる潤が指先を弾く。


「……全ノード、正常。……ドローン『眼弐号(まなこにごう)』、映像出力8K。……世界に、眞白様の神性を叩きつける。……配信開始オンエア


【D-Live:新生・九曜眞白、地下迷宮「大手町深淵」攻略ライブ】


 配信開始と同時に、同接カウンターが爆発的に跳ね上がった。瞬く間に五万人を超え、なおも加速している。


「皆様、ごきげんよう! 眞白様の公式秘書、凛ですわ! 本日は一味違いますわよ。伝統と革新、そして皆様の熱い『想い』が、今、一つになりますの!」


 リビングに特設された広報デスクから、凛がプロ顔負けのテンションでチャット欄を煽る。


「……颯太郎。準備は整った。いつでもいけるぞ」


 迷宮の入り口に立つ眞白さんが、ドローン『眼弐号』のレンズを見つめた。


 凛がプロデュースした新しい戦闘装束――防弾性能を持つ漆黒の袴と、霊銀の刺繍が施された白い羽織。その背後では、重武装化したドローンが静かに浮遊している。


「よし。J、敵の走査スキャンを」

「……了解。……前方100メートルに死霊系怪異、三十四体。……さらに壁の奥に特級の反応。……先輩、術式のコンパイルは?」

「終わってる。眞白さん、前方に術式を。――出力、全開で」

「承知した!『雷公・三連』!」


 眞白さんが前方に指を向けた。


 本来なら数十秒の詠唱と精神統一が必要な大技。だが、新居の機材室で唸りを上げる『クオン・エンジン』が、彼女の脳波を読み取り、コンマ数秒で術式の構造を完成させる。


 ――ドォォォォォォン!!


 迷宮の通路を、眩い蒼白の雷が駆け抜けた。


 一度ではない。二度、三度。

 

 『眼弐号』の霊子砲が、反動で空気を震わせる。怪異たちは悲鳴を上げる暇もなく、呪力の塵へと還元されていく。


【D-Live リアルタイム・チャット】

考察ニキネキ: は!? 今の、連射したのか!?

魔術マニア: ありえない、平安時代のあの手の術式は高出力だが再装填が遅いはず……!

アンチ: チートだろ! ヤラセだ!


「……アンチのログ、検知。コメント数、一万件。よし。……全部エネルギーに反転。……眞白様、さらに加速する」


 潤が冷徹にキーボードを叩く。


 ドローンから放出された虹色の粒子が、眞白さんの身体に吸い込まれていく。奴らの呪詛が、俺のハックによって眞白さんの加速へと変換された。


「……颯太郎、身体が軽い! 風になったようだ!」


 眞白さんが迷宮を駆ける。


 潤が最適解のルートをナビゲートし、俺が敵の防御結界をハックして無力化する。そして眞白さんが、圧倒的な火力で全てを薙ぎ払う。


「皆様、ご覧ください! これが眞白様の、真の力ですわ! アンチの皆様もありがとうございます、貴方様たちの醜い悪意が、眞白様のドレスをより一層輝かせておりますわよ!」


 凛がSNSに最高画質の切り抜き動画を秒速でアップし、世界中のトレンドを塗り替えていく。


 かつては三時間かかっていた深層までの攻略が、わずか十五分で完了しようとしていた。


「……ターゲット、捕捉。迷宮主ボス――『大天狗』」


 潤の声がわずかに緊張をはらむ。


 人の形をしていながらも数メートルはあろうかという威容。その怪異が翼を広げた瞬間、禍々しい呪力が満ちる。配信画面にビリビリとしたノイズが走った。


 ――天狗。日本での最古の記録は奈良時代の歴史書『日本書紀』にまで遡る。アマツキツネとも呼ばれ、天より降りて地上に災禍をもたらす凶星。人を魔道に導く魔物であり、人の身でありながら神仙に至った存在でもある。


 以前であれば眞白さんでも多少は手こずる羽目になっただろう相手だ。


 だが、俺は確信していた。今の眞白さんと俺たちならばどんな怪異だって敵ではない。


「眞白さん、最後の一撃です」

「心得た! ……皆の想い、そして、私を妬む者たちの声さえも! 全てを我が刃の糧とせん!」


 眞白さんが、眼弐号から放たれた光の剣を掴んだ。

 

 ――一閃。


 まさに一撃だった。巨大な怪異が、断末魔と共に霧散する。


「……お疲れ様です、眞白さん。過去最高の効率……完璧なデビュー戦でした」


 俺の言葉に、眞白さんがドローンに向かって、凛に教わったピースサインを少し照れ臭そうに向けた。


 指揮、分析、広報、そして暴力。バラバラだった歯車が、今、最強の軍団チームとして噛み合った瞬間だった。


 そして、俺たちが目標としていたチャンネル登録者数は――。

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