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「配信など破廉恥な!」と言っていた古風な最強呪術師様、現代っ子の俺にバズ術を教え込まれて登録者100万人を突破してしまう  作者: すかいはい
第2部:【チーム結成編】

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第25話:【嫉妬の牙】

 タワーマンションのリビングに、凛の怒号が響き渡った。


「……酷い、酷すぎますわ! 眞白様の神聖な食事シーンを『CG加工のヤラセ』だなんて……! この連中、全員私の実家の法務部で叩き潰してやりますわ!」


 彼女が握り締めるタブレットには、急上昇中の切り抜き動画と、それに群がる『物申す』系配信者たちの動画が並んでいる。



「……落ち着いて、凛。……颯太郎兄そうたろうにい、こいつらのサーバー、今すぐ物理的に焼き切ってもいい? ……眞白様を『銭ゲバ』呼ばわりした罪は重い。……万死に値する」


 潤もフードの奥で目を血走らせ、指先をキーボードの上で震わせている。


「二人とも、やめろって。……眞白さんが怖がってるだろ」


 俺は画面から目を離し、ソファの隅で少しだけ肩を落としている眞白さんに視線を向けた。


「……颯太郎。……私は、何か悪いことをしたか? 美味しくおにぎりを食べることが、誰かを傷つける『呪い』になるのか?」


 彼女には、ネットの匿名性という概念がまだ理解できていない。純粋な彼女にとって、自分に向けられた悪意の塊は、逃げ場のない粘りつく霧のように感じられるのだろう。


「眞白さんは何も悪くない。……ただ、君があまりにも眩しすぎるから、影に隠れてる連中が自分の暗さに耐えられなくなっただけです」


 俺は機材室のメインモニターに向き直った。画面には、誹謗中傷を繰り返す中堅グループ『五芒星ペンタグラム配信団』のデータが表示されている。一流配信者たちや大手企業の顔色を伺いながら、俺たちの『バズ』を横取りしようとしているハイエナ共だ。


「……放っておこう。アンチも、嫉妬も、全ては『エネルギー』だ。……J、例の『オーディエンス・ハック』の第2段階、ロールアウトするぞ」

「……っ!? ……あの、アンチの悪意を無理やり変換するっていう……『禁忌タブー』のパッチ?」

「ああ。名付けて、【術式:怨敵変換ヘイト・インバージョン】。……これまでは『応援』を力に変えてきたけど、これからは俺たちを叩く『呪詛』さえも、眞白さんの呪力への燃料にする」


 俺はキーボードを高速で叩き、コードを書き換えていく。現代の呪術は情報の密度に比例する。愛であれ憎しみであれ、巨大な注目が集まる場所には、莫大なエネルギーが溜まる。


「奴らが俺たちを叩けば叩くほど、眞白さんの攻撃力は上がる。……誹謗中傷を、直接的な破壊力にハックしてやるんだ」

「……ふふ、やっぱり颯太郎兄、性格悪い。……一条家の落ちこぼれどころか、史上最悪の『情報の魔王』」

「ボロクソに言い過ぎだろ」


 思わず苦笑する。潤は少しだけ口角を上げ、俺のシステムにリンクした。


「……凛さん。君は、わざわざ公式SNSで反論はしなくていい。……ただし、もっと火に油を注ぐような『思わせぶりな投稿』を続けてくれ。……燃料は多ければ多いほどいい」

「承知いたしましたわ、プロデューサーさん。……つまり、彼らを踊らせて、眞白様の最強の肥料にするということですわね!」


 凛も瞬時に理解し、不敵な笑みを浮かべてスマホを取り出した。


「……眞白さん。明日、ダンジョンへ行きます」

「……うむ。……正直、少し気が重いが、其の方がそう言うのなら」

「大丈夫。……君を叩くその醜い声、全部俺が『神の一撃』に変えてあげますから」


 俺はモニターに映る『五芒星配信団』のリーダーの顔をタップしする。牙を剥くなら剥けばいい。その牙が、自分たちの身を焼き切る刃に変わることも知らずに。


 ――翌朝。タワーマンションの一室。機材室の中央に鎮座する、巨大な黒いサーバーラックの前で俺は告げた。


「……よし、全システムの同期シンクロ、完了。――眞白さん、目を開けていいですよ」

 

 そこには、収益の大部分――数千万円を注ぎ込んで構築した、俺たちの新しい武器が並んでいた。


「……おお。これは、以前の『眼』よりも随分と……いかめしい姿になったな」


 眞白さんが目を見開く。彼女の前に浮かんでいるのは、新型ドローン『眼弐号まなこにごう』。以前の市販品ベースの機体とは一線を画す、漆黒のマトリックス・フレーム。四基の大型ローターは静音性に優れ、機体下部には術式を物理定着させるための「霊子砲エーテル・キャノン」が二門、重厚な輝きを放っている。


「ただのカメラドローンじゃない。これは空飛ぶ『外付け魔法陣』です。……そして、その心臓部がこれだ」


 俺は背後のサーバーラックを指し示した。


「外付け呪術プロセッサ『クオン・エンジン』。眞白さんの術式の演算工程コンパイルを、この部屋の演算機サーバーが肩代わりします。つまり、眞白さんが指を弾くより先に、システムが術式を完成させる。……平安の重厚な一撃を、現代のライフル並みの速度で連射可能にしました」

「……連射。……あの、恐ろしく時間の掛かる大技をか? 颯太郎、其の方はやはり……人の領域を超えておるな」


 眞白さんが驚愕に肩を震わせる中、スピーカーから潤の気だるげな声が混じる。


「……颯太郎兄、設定が甘い。……プロセッサの冷却回路に、呪力伝導率120%の霊銀ミスリル液を流しておいた。……これでオーバークロックしても、眞白様の髪一本焦がさない。……完璧」

「仕事が早いな、J。……凛さん、広報の準備は?」

「バッチリですわ! 『次世代の呪術体験』というキャッチコピーで、既に先行告知のインプレッション数は一億回を超えていますわ。アンチの連中も、この重厚な装備を見て震え上がっておりますわよ!」


 凛が不敵に笑い、タブレットで戦績をチェックする。


「……よし。Jは遠隔でドローンの精密操作と映像配信を。凛はここから広報と眞白さんのバイタル管理を頼む。俺は術式のリアルタイム・ハックに専念する」


 俺はメインコンソールに座り、キーボードを叩いた。画面には、眞白さんの背中にリンクされた仮想術式ユーザーインターフェースが展開される。


「眞白さん。……昨日の誹謗中傷、覚えてますか?」

「……うむ。……忘れたくとも、胸に澱のように残っておる」

「それを今から、全部この『弐号』のエネルギーに変換コンバイルします。……奴らが俺たちを嫌えば嫌うほど、君の翼は強くなる」


 俺の指がエンターキーを叩いた。ドローン『眼弐号』が低く唸りを上げ、眞白さんの周囲に虹色の、しかしどこか鋭利な輝きを放つ呪力が渦巻く。


「……あ、暖かい。……いや、これは『熱い』な。……民の悪意が、これほどまでに強大な力に変わるとは」

「皮肉なもんですよね。……さあ、行きましょう。新しい『城』から、世界を黙らせる最初のライブ配信へ」

「承知した! 颯太郎、潤殿、凛殿。……我らの力、見せつけてやろうぞ!」


 タワーマンションのベランダから、漆黒のドローンが夜の空へと滑り出す。それは、潤が言うところの情報の魔王と、そして平安の女神が、現代という戦場を完全に支配するための宣戦布告だった。

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