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「配信など破廉恥な!」と言っていた古風な最強呪術師様、現代っ子の俺にバズ術を教え込まれて登録者100万人を突破してしまう  作者: すかいはい
第1部:【新星爆誕編】

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第10話:【証明】

 一条蓮が、高級ドローンのモニター越しに絶句した。


「――嘘……だろ。何だ、あの呪力は」


 彼がこれまで見てきた、血統や修練によって練り上げられた青白い呪術の輝きとは違う。それは、数万人の人間の意志が直接形を持ったかのような、圧倒的な圧を持った虹色の光だった。


 虹色のオーラをまとった己の手を見つめ、眞白さんが呆然と呟く。


「其の方、これは……一体」


 かつて罪人として恐れられ、暗闇に封じられた彼女の力が、今は温かく、そして無限に広がるかのような善意によって上書きされていた。


「これこそが、俺が貴女のために作った『新しい呪術式』です」


 俺はスマホの画面をフリックし、虹色の『グッド』ボタンから、さらに高度なUIユーザーインターフェースへと切り替えた。


 画面には、D-Liveのコメント欄がリアルタイムで流れ、その横に『弾道計算』のゲージが表示される。


「プロトコル、コメント・バレット。起動。――眞白さん、準備はいいですか?」

「うむ……。異国の言葉はよく分からぬが、よかろう! 身体の奥底から力があふれて止まらぬ! 颯太郎、何をすればよい!」

「貴方の背後に浮かんでいる『文字』。……それは、今この瞬間、君を応援している人たちの『声』です。眞白さんが指を指せば、その『想い』が物理的な弾丸となって、敵を撃ち抜きます!」


 俺がドローン『まなこ一号』のレンズを通して、視聴者の熱量を眞白さんの呪力へと変換する。


 眞白さんが振り返ると、そこには虹色に輝く無数の文字が、マシンガンの弾倉マガジンのように整列していた。


『眞白様、がんばれ!』

『一条をぶっ潰せ!』

『本物の呪術ってやつを見せてくれ!』

『⊂二二二( ^ω^)二⊃ブーン』

『颯太郎、信じてたぞ!』


「民の……声が、私の……力に?」

「なんか空気読まない顔文字のやつとかもいるけど……そうです! 貴方が一人じゃないっていう、何よりの『証明』です! 眞白さん、君の『指』に、みんなの声を乗せてください!」


 眞白は、俺の方を振り返り、不敵に、そしてこの上なく美しく微笑んだ。


「――面白い! 民よ、其の方らの『想い』、この九曜眞白……しかと受け取ったわ!」


 平安の最強呪術師が、現代の『バズ』を纏い、虹色の指先を情報の化け物へと向けた。


「――言霊掃射!!」


 眞白が指先を弾いた瞬間。


 彼女の背後に浮かんでいた虹色の文字弾が、光の奔流となって撃ち出された。


 ――ドォォォォォン!!


 着弾。ウェブ怨霊が、悲鳴を上げる。


 アンチコメントで構成されていたその体が一斉に赤く染まり、情報の文字弾が怨霊の『情報の海』を浄化していく。


「よし、俺たちの『情報の弾丸』が、あいつの本質を上書きしている……!」

「なんという、心地よい戦いか! 私が練った呪力とともに民の声が飛び交っている……!」


 眞白は、虹色の呪力をまとい、情報の化け物を圧倒する。


 ウェブ怨霊が纏っていたアンチコメントが一斉に温かいメッセージへと上書きされていく。


「……眞白さん。最後の一撃、貴女にみんなの『想い』を込めて、世界で一番『バズる』英雄にしてみせる」

「颯太郎……?」

「プロトコル、コメント・レーザー。起動」


 俺の指が、スマホの画面を高速で叩く。


 再びコードが展開され、式神型ドローン『眼一号』が捉える視聴者の熱量、その『注目』という概念を、俺のシステムが解析し、呪力へと変換し始める。


「眞白さん! この一撃に、貴女からみんなへの『愛』を込めて、敵を撃ち抜いてください!」

「私から民への……愛?」

「そうです。眞白さんも俺と一緒に今まで配信をしてきました。見てくれている人たちに何か感じている想いがあるはずです。その想いをそのまま術式に乗せるんです」


 その言葉を聞いた眞白さんはわずかに考え込み、それから顔を上げた。


「……民たちよ。私を見つけ、こうして応援してくれていることに感謝する」


 彼女はカメラドローンに視線を向け、照れ臭そうに微笑んだ。


「……ありがとう。大好きだぞ」


 その瞬間、ドローンの向こう側のコメント欄が滝のような速さで流れた。高額のスーパーチャットが飛び交う。


 ドローンを介し、視聴者の熱量がログとして視覚化されて眞白さんの周囲に渦巻いていた。


『女神降臨』

『眞白様の初配信から見ていてよかった……』

『眞白様、俺と一緒に人生歩もう』

『ぬるぽ』


「ガッ」

「ガッ、とは……?」

「いえ、なんでも……。眞白さん、とにかく今なら最大級の一撃を放てるはずです!」

「うむ!」


 眞白さんが、手を高く掲げる。


「これが、『ばず』とやらの力よ!」


 虹色の閃光が迸った。


 轟音が響く。


 圧倒的な呪力の渦が目の前の空間を走り抜けた。


 ウェブ怨霊が甲高い金属音のような断末魔をあげ、インターネット上に巣食った悪意の塊が情報の海へと還っていく。


「……やった」


 ウェブ怨霊が消滅し、迷宮に静寂が訪れる。


 その瞬間、俺たちの配信カウンターは一条蓮の同接を遥かに上回り、四万人を突破していた。


【一条蓮 D-Live リアルタイム・チャット】

蓮様信者: 蓮様、ボスに到達! ……あれ? なんであいつらの配信、同接四万人も行ってるの?

一条蓮: な、何だと……? なんであいつらが……。えっ、特殊案件スペシャリティを倒した!?


 眞白さんは蓮の呪術が感じ取れる方角を一瞥し、侮蔑を含んだ笑いを漏らす。


「ふん、呪術なのか魔術とやらなのかは知らぬが、あやつからは『想い』の欠片も感じられなんだ。民を驚かせ、己を誇示するためだけの力。あのような増長、万死に値すると思うぞ」


 眞白さんの纏う虹色のオーラが、彼女の怒りに呼応して一瞬、烈火のごとく燃え上がる。


「眞白さん、いいじゃないですか。こうして勝ったんですから」


 俺が彼女の肩を叩くと、オーラは再び温かい虹色に戻り、彼女は少しだけ照れくさそうに笑った。


「……致し方あるまい。此度の件、其の方に免じて預けよう。……して、颯太郎。今宵の褒美は特上寿司か。それとも懐石料理とやらか」

「……その件なんですけど。ちょっとだけ待ってもらってもいいですか」


 俺は、ふらつく体をダンジョンの壁に預け、地面にへたり込んだ。


「さすがに……体力の限界で……」

「颯太郎!? ……颯太郎ーっ!」


 俺がゆっくりと目を閉じると、眞白さんの絶叫がダンジョン内に響き渡った。

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