第8話 ウェーノ家と不思議なお客様たち!
ある朝。家族みんなで朝食用の食材を採取していると、ソーヤが謎の足跡…いや、"尾跡"?を見つけた。
「母さん、畑に変な跡があるんだけど…。」
「あら〜、大きいねぇ。誰か来たのかな?」
「どう見ても“尻尾で引きずった跡”じゃない?」
「何か動物でも入ってきたか?その割には、畑は荒らされてなさそうだけど…。」
ユーヤとトーヤもそれを見ながら、みんなで跡を辿っていくと、畑の端にある池から、ひょこっと“青い髪”が出てきた。と思ったら、そのまま、水面から美しい女性が上がってくる。
「きゃっ!人間さんたち!?こ、ここは地上の方の家…ですよね?」
池から出てきた女性が、唐突に話しかけてきた。上半身は人間ではあるものの、腰から下は光る青い鱗で覆われていた。どう見ても『人魚族』の少女だった。
「確か、マーメル族だ!本物だ!」
「えっ、初めて見た!スゲー!」
ソーヤ、ユーヤがテンション高めに話している。。
「どうして、うちの池に?」
と、トーヤが問いかけると、少女は慌てて頭を下げた。
「ご、ごめんなさいっ!池に迷い込んじゃって…。 水路を伝ってきたら、すっごく美味しい匂いがしてつい…。」
「かわいい〜。池のお掃除してくれてたの?」
という、アインの問いかけに、池を見てみると、確かに池の水がいつもより透き通っている。
「私たちマーメル族は、水を浄化する力を持っているので、泳いでいる間に、水がきれいになったのだと思います。]
「で、でも…、許可もなく勝手に泳いでしまってすみません…。」
と恐縮している少女に、アインはニッコリ笑いかけて、
「大歓迎だよ〜。またいつでも来てね?」
「ほ、本当ですか!?ありがとうございます!」
「私、フィーネって言います。これからよろしくお願いいたします!」
その瞬間、フィーネは心の友認定したらしく、しっぽをバシャバシャ揺らして喜んでいた。そして、知らず知らずのうちに、ちゃっかりマーメル族の加護も授かっているアインであった。
◆
スキルで召喚した水鉄砲で、フィーネと一緒に、ソーヤとユーヤが遊んでいると、ドワーフの工房から材料を持って、背の高い銀色の存在が、ガシャン、ガシャンという機械音とともに現れた。そして、胸のランプが赤く光り、機械音声が鳴り響いた。
「解析中…。この農場…“効率”…“可能性”…高評価…!」
「機械種族!?ってことは、オートマト族だ!」
「それって、人工生命体ってことだよな!?」
ソーヤとトーヤは、驚きと興奮を隠せずにいた。男子たるもの、やはり機械物には弱いのである。
オートマト族はソーヤにすっと近づき、無機質な声で言った。
「創造スキル…高度…照合…一致率98%…
提案:“共同行程”を希望。」
「きょ、共同? なにを?」
「我が名は、ノクス。畑の“完全自動化”を希望。」
それを聞いていたユーヤが、
「やめろぉぉぉ!これ以上やったらもうテーマパークになっちゃうよぉ!」
と、猛反対していると、一緒に来て畑の機械を確認していたダグルスが飛んできて、
「おいコラ機械、勝手に俺の弟子に声かけんな!」
「ドワーフ個体…敵対心検出…無害化処理!」
とノクスとダグルスが一触即発の雰囲気になった。
「ストップ!ストップ!スト〜ップ!」
慌ててソーヤが二人の仲裁に入る。そんな様子を見ながら、アインは笑いながらお茶を入れる。
「まぁまぁ、みんな仲良くね〜。」
その一言で、その場の空気が一気に和んだ。どうやらオートマト族にも、アインのスキルは効果があるようだ。その光景を見て、トーヤが深く頷きながら、
(さすがは我が愛する妻♡)
と満面の笑みを浮かべていた。
◆
ノクスとダグルスが農場の自動化について、真剣に意見を交わし始めた矢先に、今度は森の方から、まるで大木のような巨人がドーンと現れた。トレント族である。
「植物の…悲鳴が…聞こえた…ここ…か…。」
「でっか!」
ユーヤが見上げながら、あまりの高さに後ろに転けそうになっている。
「ここ…よい育成…しかし…一部…ストレス…。」
「ほんと? どこが元気ないの?」
アインが問い返すと、
トレント族は、木の指で、畑の中の一部を指した。
「あそこ…土…少し…乾燥…。土…傷み…始めて…いる。」
「わぁ。よく気づいたわねぇ。」
「我…森の守護木…植物は…みな…我の子…。」
トレント族はゆっくり跪き、アインに言う。
「あなた…植物と…話せる…同胞…敬意…。」「あら。ありがとう。」
「我は…エルウッド…。」
「ここを…『聖樹園』にする…それ…手伝う…。」
「勝手に名前つけた!?」
「それに聖樹園って何?」
思わず、ユーヤが突っ込んだ。どうやら、トレント族が住める聖なる森を作ろうとしているようだった。
◆
そして、三種族は農場の“常連”となり、それぞれが、『人魚族の少女フィーネ → 魚料理の味見役』、『オートマト族ノクス → 畑のデータ解析』、『トレント族エルウッド → 畑のコンディション管理』の役割を持つようになった。
「いよいよ農場の規模がやばいな…。」
「一家族が持つ農場ではないな…。」
とトーヤが頭を抱えていると、
「ゲームでもここまでならないよ…。」
とユーヤが呆れて返している。
「でも、みんな優しくて可愛いねぇ〜。」
と一人のんびりなアインを見て、
「キュアァ。」
とクロが寂しそうな顔をしている。
「クロちゃんはうちのエースだよ〜。」
とアインが答えると、
「キュ!」
と、ドヤ顔をするクロであった。
こうして、ウェーノ家の農場は、今日も賑やかな一日が過ぎようとしていた。
今はまだ定期的に訪れるだけだが、ドワーフやエルフ、獣人なども含め、ウェーノ家の近くに集落を作ろうと虎視眈々と狙っており、その思惑が実現するのは、そう遠くない未来の話である。




