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異世界ふぁみりぃ ~のんびり異世界生活~  作者: すぱ☆たま
異世界の夏

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第79話 父と息子

エルフ族やドワーフ族、獣人族など多様な種族が住み着き、自然発生的にできたウェーノ村の夕暮れ時は、いつも賑やかで温かい。


そんな村の中心にあるウェーノ家の縁側で、ソーヤは1人、元気がなさそうにぽつんと座っていた。いつもならお調子者のユーヤのやらかしに鋭いツッコミを入れているはずだが、今は膝を抱え、ただぼんやりと赤く染まる空を見つめている。

「どうしたんだ、創也。こんなところでぼーっとして……。」

縁側で元気がなさそうに座っているソーヤを見つけて、トーヤが声をかけた。手にしたアイン特製の温かいハーブティーを差し出し、息子の隣に「よっこらせ」と腰を下ろした。

「……父さん。」


しばらくの間、2人は無言で夕焼け空を眺めていた。村の喧騒が心地よいBGMのように流れる中、ソーヤがぽつりと沈黙を破り、自身のスキルについてトーヤに相談し始めた。

「俺さ。最近、全くスキルを使ってないんだ……。」

その言葉に、トーヤはただ静かに頷いた。ソーヤは小刻みに震える両手を見ながら、絞り出すように本音をこぼす。

「怖いんだ。……俺のスキル、《クリエイター》から《ジェネレーター》に進化したでしょ? 改めて考えると、無から意味や概念を創り出すってとんでもない力だと思うんだ……。これまでは、ただ建物を再構築したり、スマホを創ったり、お祭りで様々なものを作ったり、ただ単に職人気質でモノを組み立てたり、作るだけだった……。」

ソーヤの肩が、微かに震える。

「もちろん、リルの腕輪のように『意味』を持たせる創造も何度かしたけど、世界に影響を与えるほどの何かはなかった……。でも、『概念』を新たに生み出したり、改変したりすることは、俺が思っている以上にとんでもないことなんだと思うんだ。……自分がスキルを使うことで、みんなの認識が、この世界そのものが変わってしまうんじゃないかって。俺がほんの少し想像を間違えただけで、世界の法則や当たり前だったものが取り返しのつかないことになる。そう思ったら、急に恐ろしくなって、自分のスキルを使うのが怖いんだ……。」

自分のような普通の中学生が持つには、あまりにも大きすぎる力。その『概念』を新たに生み出す、改変することへの恐怖があるというソーヤの痛切な告白を、トーヤは頷きながら黙って聞いていた。少し離れたリビングでは、アインが心配そうにそっと二人の様子を見守っていた。


話を聞き終え、深く息を吐き出した後、トーヤはゆっくりと静かに話し始めた。

「確かに、『概念』を新たに生み出したり、改変するということは、世界が変わってしまう可能性があるだろう。しかも、当たり前が変わるということは、変わったことすらも認識できない可能性もある。」

「……やっぱり……。」

「ああ。無から『意味』を定義し、世界の理に干渉する。それは間違いなく人が持つには大きすぎる、人知を超えた神の領域の力だと、父さんも思う。」

トーヤの真っ直ぐな言葉に、ソーヤは息を呑んだ。慰められると思っていたのに、むしろそのスキルの異常さをはっきりと肯定されたからだ。

「でもな、創也。そんなとんでもない力だからこそ、しっかりとコントロールする必要があると思うんだ。」

トーヤは、真剣な眼差しで息子を見つめた。

「その力を恐れ、逃げるのではなく、コントロールしなければならない。使わないで蓋をしていても、いつか取り返しがつかなくなる時がきっとくる。」

「でも……!」

トーヤの言葉にソーヤが反応するが、そのまま続ける。

「もちろん、まだ中学生のお前が神のごとき力を与えられ、一つ間違えば、世界を変えてしまいかねないなんて、到底一人で抱えきれるものではないと思う。でも、父さんは世の中に意味のないことはないと思うんだ。創也ならその力を使いこなせるからこそ、授かったんだと思ってる。」

トーヤの言葉に、勇気づけられながらも、ソーヤはまだ恐怖をぬぐい切れずにいた。

「でも、怖い……。もし、俺のコントロールが及ばなくて、父さんや家族、村のみんなやこの世界に何かとんでもない影響を与えちゃったら……!」

震えるソーヤの肩を、大きく温かな手が力強く掴んだ。見上げると、トーヤがこれ以上ないほど頼もしい、自信に満ちた笑みを浮かべていた。

「何が起こっても俺が何としてやるから安心しろ。たとえ、この世界が壊れそうになってもだ。それにお前なら必ずできる。なんたって、俺の息子だからな。」

トーヤの頼もしい言葉に続いて、アインも傍にやってきて後ろからそっとソーヤを優しく抱きしめる。

「もちろん。私も手伝うわよ。だって、あなたは私のかわいい息子だもの。もし、とんでもないことが起こっても、一緒にみんなに謝ってあげるわ。」

深刻な空気に近寄りがたさを感じ、遠巻きに様子を見ていたユーヤも、ソーヤのことが心配でたまらず、ソーヤの隣にそっと歩み寄ってきた。

「兄ちゃんなら、絶対にうまくいくよ! 普段は僕のことすぐからかうし、いじわるするけど、本当は優しくて、すごく細かい作業が得意で、勉強もできて、それに……、それに……。」

ユーヤが泣きそうになりながら、必死にソーヤを勇気づけようとしていた。

「ありがとな、遊也。それに、父さん母さんもありがとう。」

ユーヤの頭をなでながら、ソーヤがみんなにお礼を言う。


この世のすべての魔法を行使し、魔法を創造することもできる父トーヤ。自然の精霊や世界そのものとつながり会話することができる母アイン。いつもにぎやかでよく失敗もするがいざというときは頼りになる弟ユーヤ。

いつも自分を守って、支えてくれる家族がいる。その事実が、凍りついていたソーヤの心を温かく溶かしていった。

「よし! いつまでもクヨクヨしててもしょうがない! このままだと遊也に笑われそうだし、泣いている弟に兄としての威厳を見せてやろうじゃないか!」

ソーヤは両手で自分の頬をパンッと叩き、ユーヤに向かってニヤリと笑って立ち上がった。「別に泣いてないし……」と文句を言いながらも嬉しそうなユーヤの傍で、アインは涙ぐみ、トーヤは深く頷いていた。


夕闇が迫る空の下、ソーヤのその瞳にはもう逃げ腰な色はなく、覚悟を決めた強い意志が宿っていた。

神の領域に足を踏み入れた少年が、ついにその真の力を御するための第一歩を踏み出そうとしていた。


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