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異世界ふぁみりぃ ~のんびり異世界生活~  作者: すぱ☆たま
ぜルディア帝国

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第67話 復興への歩み

大天使ミカエルと、力を封印された元大悪魔の堕天使ルシファー。

天地を揺るがすほどの存在である二人が、こののどかなウェーノ村に住み着いてから、あっという間に一週間が経過していた。


「あぁ、アインさんの淹れるハーブティーは今日も最高ね! この焼き立てのクッキーも絶品だわ!」

「……おい、我の分のクッキーがないぞ。貴様、大天使の分際で食い意地が張りすぎではないか?」

「あら、堕天使のあなたにおやつなんて百年早くてよ? もしかして、帝国でしでかしたことをもう忘れたの? ほら、文句を言ってないで庭の草むしりの続きをなさい。」

「ぐぬぬ……。それを言われると……。」

首には神聖な『光の首輪』をはめられ、魔力を完全に封じられたルシファーが、麦わら帽子を被りながら、少しテンションを下げて、庭の手入れをしている。

(ああ見えて、帝国での出来事をかなり反省してるみたいね。)

(やっぱりこの村は不思議ね。)

ミカエルは優雅にティータイムを満喫しながら、ルシファーの心情の変化を掴んでいた。


最初はいつ村が吹き飛ぶかとヒヤヒヤしていたトーヤだったが、今ではすっかり村の“賑やかな日常”の一部として定着しつつある。

(……とはいえ、さすがにレオニス王には、ルシファーが村で一緒に暮らしているなんて伝えられなかったな……。)

トーヤは縁側で平和な光景を眺めながら、先日アトレイア王国へ赴いた際の報告を思い返していた。

モフを蝕んでいた呪いをミカエルが解いた後、帝国で起こった出来事の報告のために、トーヤが単独でアトレイアに向かい、ルシファーは完全に排除した――レオニスにはそう説明していた。


国王として国を守る立場のレオニスに、「大悪魔を村で飼うことになりました。」などと言えば、無用な心労をかけるどころか、アトレイア中がパニックになりかねない。

これはウェーノ家とミカエルだけの、絶対の秘密なのだ。



それから数日後。

トーヤ、アイン、ソーヤ、ユーヤのウェーノ家の4人は、再びアトレイア王国の王城を訪れていた。

「よく来てくれた、トーヤ殿。ウェーノ家の皆も。」

執務室で彼らを出迎えたレオニス国王は、以前よりも少しだけ顔色が良く、憑き物が落ちたような穏やかな表情をしていた。

しかし、その瞳の奥には、まだ深い悲しみと疲労が僅かに見え隠れしている。

「レオニス王、その後、ぜルディア帝国の状況はいかがですか?」

トーヤが真っ直ぐに尋ねると、レオニスは静かに頷いた。

「ああ。現在、我がアトレイア王国をはじめ、周辺諸国が連携して、帝国の復興支援に全力を注いでいるところだ。ルシファーの呪縛が消え去ったことで、帝国を覆っていた黒いもやも完全に晴れた。」


そこまで語ると、レオニスの表情がスッと暗く沈んだ。

「……だが、残念ながら、オルディナス国王は助からなかった……。私が駆けつけた時、彼はすでに……。」

友の最期を看取れなかった悔恨に、レオニスはギリッと唇を噛み締める。

英雄王とまで呼ばれた偉大な男は、悪魔の野望の犠牲となり、帰らぬ人となってしまったのだ。

「レオニス王……。」

沈痛な空気が流れる中、トーヤは静かに一歩前へ出た。

「オルディナス王のことは、本当に残念です。ですが、彼が愛した帝国と民は、これから救うことができます。」

トーヤは力強い眼差しでレオニスを見据え、そして後ろに立つ家族を振り返った。

アインが優しく微笑み、ソーヤとユーヤも力強く頷き返す。

「俺たちのスキルが、必ず帝国の復興に役立つはずです。俺たちも帝国へ向かい、復興を手伝わせてください。」

その申し出に、レオニスは驚きに目を見開いた後、深く、深く頭を下げた。

「……恩に着る、トーヤ殿。あなた方ウェーノ家の存在は、我々にとってまさに希望の光だ。」



数時間後、ウェーノ家の4人は相棒であるクロの背に乗り、ゼルディア帝国の中央広場へと降り立った。

黒い靄が晴れたとはいえ、崩壊した街並みは未だに痛々しい爪痕を残している。

しかし、そこには周辺諸国から派遣された騎士や復興部隊が忙しく駆け回り、生き残った民たちも瓦礫の撤去に汗を流していた。

絶望に包まれていた街に、確かに“命の息吹”が戻り始めている。

「よし、みんな。俺たちも全力を出すぞ!」

トーヤの号令に、家族全員が気合の入った声を上げた。


「じゃあ、いくよ!」

テンションの上がったユーヤが、さっそく《ゲームマスター》を発動させる。

「まずはこれだ!いでよ、エリミネイト・スライム!」

まばゆい光とともに、ユーヤの目の前に、紫色の手のひらサイズのスライムが、大量に現れた。

そして、そのスライムたちに向かって、ユーヤが命令を下す。

「行け!スライムたち!ゴミや瓦礫を飲み込んでしまえ!」

その掛け声とともに、スライムたちが四方八方に散らばり、自分たちよりも何倍も何十倍もある大きな瓦礫やゴミに対して、自分たちの体を大きく引き伸ばして、片っ端から飲み込み、溶かしていく。


その様子を見ながら、「次はこれ!」と言って、再び《ゲームマスター》を発動させるユーヤ。

「イレイザー・ガン、召喚!」

今度は、ユーヤの両手に光が凝集し、2丁の拳銃が召喚された。

ユーヤは両手で銃を構え、瓦礫に狙いを定めて引き金を引く。

バキューーン!バキューーン!

甲高い音とともに、銃口から消しゴムの弾丸が発射され、瓦礫に命中すると、最初からそこには何もなかったかのように、瓦礫が消え去った。

「これ、一度使ってみたかったんだよね〜♪」

ゲーム感覚で次々と、拳銃で瓦礫を消していくユーヤに、後ろからソーヤが叫ぶ。

「遊也。調子に乗って、人に当てるんじゃないぞ!」

ユーヤが振り向きながら、

「大丈夫!これ、生き物は消せないから。」

「それに、僕の銃の腕前知ってるでしょ?」

そう言った瞬間、狙っていた瓦礫の前に、突如アトレイアの騎士が現れ、消しゴムの銃弾が鎧に、コツンッと当たった。

「「あっ!」」

ユーヤとソーヤが同時に叫んだ瞬間、騎士の鎧が兜を残して、跡形もなく消え去り、パンツ1枚の姿となった。

「ごめんなさい。調子に乗りすぎました……。」

素直に謝るユーヤに、騎士は怒ることもできず、恥ずかしいやら何やらで、「気をつけろ!」とだけ言って、小走りに路地裏に去っていった。


「ほら。だから言ったじゃん。」

ソーヤに突っ込まれて、ヘコむユーヤ。

そんなユーヤを尻目に、

「でも、俺も負けてられないな!」

と、2階部分が完全に崩壊し、1階部分だけになった家に向かって、両手を突き出す。

「《ジェネレーター》。リビルド!」

その瞬間、1階部分の壁が淡い光に包まれ、徐々に2階部分に伸びていく。

光のあとから、新たな壁や窓などが作り出され、あっという間に、2階建ての家が再構築された。

ソーヤが「やったね」と思った瞬間、違和感に気づく。


元々あった1階部分と新たに出来上がった2階部分の様相が違いすぎるのである。

1階部分は隣接している他の家と同じ、北欧風の普通の民家っぽい壁だが、2階部分は明らかに王宮で使用されるような白亜の壁で、豪華な金の意匠が施されていた。

「やりすぎちゃったかな?」

ソーヤが反省していると、背後でドサッという音がした。

振り返るとそこには、おそらくはその家の持ち主であろう男性が呆然と立ちつくしていた。

足元には、配給でもらったであろう、パンの入った紙袋が転がっている。

「ごめんなさい。」

男性が喜んでいるのか、悲しんでいるのかわからなかったが、やりすぎたことは事実なので、ソーヤは素直に謝った。



兄弟が相次いでやらかしてる間、中央広場では――

「《ネイチャー・リンク》――大地の息吹よ、再びこの地に芽吹きなさい。」

アインが両手を胸の前で組み、祈るように固有スキルを発動させる。

すると、呪いで枯れ果てていた大地から瑞々しい緑が顔を出し、腐敗していた土壌が瞬く間に浄化されていった。

澄んだ水が湧き出し、復興作業で疲弊していた人々の身体を、温かな治癒の光が包み込んでいく。

「うおぉぉっ!? なんだこの光は……力がみなぎってくるぞ!」

「見てみろ、枯れた井戸から水が……! 大地が生き返っていく!」

帝国の民たちや騎士たちが、奇跡のような光景に歓声を上げる。


一方、トーヤは帝国の中央上空に浮かんでいた。帝国の街全体を見据えて、街の西側へと体を向ける。

「《クリエイト・ビルド》!」

トーヤが虚空に右手をかざして膨大な魔力を解放すると、光の粒子が舞い踊り、崩壊した家屋や施設が、本来の美しい姿を保ったまま次々と錬成され、再構築されていく。

わずか数分の間に、荒れ果てていた街の一角が、かつての活気ある街並みを取り戻してしまった。

「す、すげぇ……!!」

「魔法使い様……いや、救世主様だ!!」

民たちが歓喜の涙を流しながら、ウェーノ家の4人に駆け寄ってくる。

その笑顔を見て、トーヤたちの胸にも温かな達成感が広がっていった。

(オルディナス王……あなたの愛したこの国は、絶対に終わらせない。俺たちが、必ず元の美しい帝国に戻してみせるからな。)

トーヤは抜けるような青空を見上げながら、心の中で密かに誓いを立てた。


ウェーノ家という規格外の家族の力により、ゼルディア帝国の復興は、誰もが予想しなかったほどの驚異的なスピードで進んでいくのだった。


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