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異世界ふぁみりぃ ~のんびり異世界生活~  作者: すぱ☆たま
ぜルディア帝国

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第63話 天より降り立つ光

黒く染まってしまったモフを前にして、ウェーノ家は絶望のあまり言葉を失っていた。

その愛らしい小さな身体は冷たい地面にぐったりと横たわっており、いつも触れるたびに心を温めてくれた、あのふわふわとした優しい温もりはどこにもない。


アインは震える指先でそっとモフの背中に触れ、堪えきれずに大粒の涙をこぼした。

「モフ……嘘でしょう? どうしたら……どうしたら助かるの……?」

トーヤは一縷の望みにかけて、未だ≪ディメンジョン・ロック≫の中で忌々しげに暴れ回っているルシファーへと鋭い視線を向けた。

「おい、ルシファー……! お前なら、悪魔の力の性質について何か知っているはずだ。モフを元に戻す、助ける方法はないのか⁉」

しかし、檻の中のルシファーは鼻でせせら笑うだけだった。

「……ふん。そんな奇妙な生き物の生態など、この俺様が知るわけがないだろう。」

「それに、だ。仮に万が一その方法を知っていたとしても、お前たちのような人間に教えるわけがないだろうが。」

トーヤは激しい怒りを宿した目でしばらくルシファーを睨みつけていたが、やがて諦めたように深く、重い息を吐き出した。

「……本当に助ける方法は知らなさそうだな。だが、念のため生かしておく。」

そう呟くと、トーヤは≪ディメンジョン・ロック≫の光の檻ごと、ルシファーを誰の手も届かない『亜空間』へと隔離した。

ルシファー自身が言った通り、ここで消滅させて復活の可能性を残す以上、完全に消し去るよりも、このまま世界の隔離空間に封印し続ける方が安全だと判断したのだ。

「みんな、ここに長居は無用だ。急いで村に戻るぞ。長く生きてきたエーテル族なら……何か分かるかもしれない……!」


トーヤは即座に空間を繋ぐ≪ワープ・ゲート≫を展開し、ぐったりとしたモフを抱えて全員でウェーノ村へと帰還した。

すぐさま高名なエーテル族の長老たちを呼び集め、黒く染まったモフの状態を見てもらう。しかし、長老たちはモフを一目見るなり、一様に深く顔を曇らせた。

「……我々エーテル族の持つ清浄な光の魔力を使えば、黒い汚染の進行を一時的に抑えることくらいはできるかもしれません……。」

「しかし……これはあまりにも酷い。ここまで深く、悪魔の純粋な“負の感情”を取り込んでしまった状態では、我々の力で完全に浄化し、元の姿に戻すのは極めて難しい……。」

「そんな……! 何か、何か他に治す方法はないでしょうか⁉」

トーヤの声は、焦りと恐怖で激しく震えていた。

長老はただ静かに、痛ましげに首を振る。

「……残念ですが、今の我々の光では、これ以上の奇跡を起こすことはできません。」

その冷酷な現実は、全員の胸に重く冷たい岩のように沈み込んだ。

アインは黒く染まったモフの身体を愛おしそうにきつく抱きしめ、涙をぽろぽろと落としながら、天を仰いだ。

「……神さま……お願いです、どうか……私たちの、みんなのモフを助けてください……!」

アインの純粋で切実な祈りが、世界に響いた――その次の瞬間だった。

アインの持つ固有スキル≪ネイチャー・リンク≫が、彼女の意志とは無関係に突如としてまばゆい光を放ちながら発動する。

そして、アインの頭の中に、鈴の音のように澄んだ声が響き渡った。

――その切なる願い、確かに天へと届きました。

「……え? 誰、の声……?」

アインが涙を拭い、呆然と顔を上げた。


直後、空一面が目も開けられないほどにまばゆく輝き、村全体が神聖な白い光によって包み込まれた。

天の割れ目から、巨大な光の柱が轟音と共に大地へと降り注ぐ。

そのまばゆい光柱が地面に触れた瞬間、周囲の木々を揺らす風が、静かに、優しく渦を巻いた。

やがて光がゆっくりと収まると、その中心に一人の女性が立っていた。

この世のものとは思えないほどに美しく、完成された容姿。

艶やかな白金の髪がそよ風に揺れ、その背には圧倒的な存在感を放つ、幾対もの巨大な光の翼が輝いている。

ただそこに佇んでいるというそれだけで、世界中のあらゆる穢れがたちまち浄化されていくような、神々しさの塊のような存在。

「……天、使……?」

アインが呆然と呟くと、その美しい女性は慈愛に満ちた笑みを浮かべて優しく微笑んだ。

「はい。あなたのどこまでも純粋な祈りに応えて、この地に舞い降りました。」

「私は天界を統べる大天使――ミカエルと申します。」


ウェーノ家一同もエーテル族の長老たちも、そのあまりの神々しさと圧倒的なオーラに、ただ息を呑んで立ち尽くすことしかできなかった。

ミカエルは光の粒子を振りまきながら、ゆっくりとした足取りでアインの抱えるモフの方へ歩み寄る。

「安心なさい、ウェーノ家の者よ。この小さき命を救う方法……確かにあります。」

その確信に満ちた言葉に、全員の胸が一気に熱くなり、希望の光が差し込む。

しかし、ミカエルは静かに、その美しい声を少しだけトーンを落として続けた。

「ですが――これ程の呪いを解くとなれば、その代償は決して小さくありません。」

「それでもなお、あなたたちは、この子を救うことを望みますか?」

その問いかけは、あまりにも美しく、そしてあまりにも重く、ウェーノ家一同の覚悟を試すように響いた。


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