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異世界ふぁみりぃ ~のんびり異世界生活~  作者: すぱ☆たま
ぜルディア帝国

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第60話 無謀な戦い

玉座の間に一歩足を踏み込んだその瞬間、世界のルールそのものが書き換わったかのような錯覚に襲われた。

周囲を取り囲む黒い靄が激しく渦巻き、吸い込む空気さえもが毒に変わるような、世界そのものが内側から腐敗していく圧倒的な圧迫感がウェーノ家の肌をチクチクと刺す。

その絶望の中心で、玉座に腰掛けたまま、まるで虫ケラを観察するかのようにこちらを見下ろす絶対的な存在——ルシファー。

「我の領域へ、逃げずによくぞ来た。その愚勇だけは褒めてやろう。」

ルシファーの声は低く響き、しかし隠しきれない極上の愉悦を含んで歪んでいた。


トーヤは恐怖をはねのけるように力強く一歩前に出ると、鋭い眼光でルシファーを真っ向から睨み返した。

「お前のような化け物を野放しにするのは、この世界にとって危険すぎる。ここで、私たちが完全に終わらせる!」

ルシファーはクククッと喉を鳴らしながらゆっくりと立ち上がり、口角を吊り上げた。

「はは……いい眼だ、素晴らしいねぇ。せいぜい我を、束の間だけでも楽しませてくれよ?」

その傲慢な言葉が、事実上の戦いの火蓋を切る合図となった。



「いくぞ、遊也!」

「オーケー、兄ちゃん!」

ソーヤが即座に脳内でイメージを構築し、極大の光を放つ神聖な『聖剣』を創造した。

激しく引き抜かれた刃から放たれた極太の斬撃が、空間を裂く衝撃波を生み出しルシファーへと襲いかかる。

同時に、ユーヤが構えた二丁の魔導銃から雷鳴のような銃声が鳴り響き、無数の光り輝く銃弾の雨が、紫電を纏ってルシファーへと降り注いだ。


ドガガガガガガッ!!

凄まじい着弾音が響き渡る。

だが、ルシファーは避ける素振りすら見せず、ただ直立していた。

攻撃は確かに、寸狂いなく奴の肉体に直撃している。

しかし――。

「嘘だろ……聖剣の直撃なのに、キズ一つ……ついてない……!?」

「そんな……硬すぎるよ、ボクの魔導弾が弾かれるなんて……!」

ソーヤが驚愕に目を見張り、ユーヤも悔しそうに歯噛みした。


2人の攻撃が効かないと見るや、今度は後方に控えていたクロが咆哮と共に前に躍り出た。

その巨大な胸を大きく膨らませ、体内の魔力を一気に沸騰させる。

「グルァァァァッ!!」

次の瞬間、クロの口からすべてを焼き尽くす超高熱の灼熱ブレスが放射され、広大な玉座の間を一瞬にして真っ赤な地獄の業火で染め上げた。

並の魔獣なら一瞬で灰燼に帰すその業火の中、ルシファーは、まるで暖炉の前に心地よく立っているかのように、衣類すら焦がさず微動だにしていなかった。

「ふむ。少々暑いな。冷房を効かせたいところだ。」

炎の隙間から聞こえたその圧倒的な余裕に、ウェーノ家全員の背筋に冷たい戦慄が走った。


唯一、トーヤが放った最高位の創造魔法の刃だけが、激しい火花を散らしながらルシファーの硬固な頬に、かすかな一本の切り傷をつけた。

「……っ! やっと、かすり傷一つか!」

だが、次の瞬間には、そのかすり傷から黒い霧が溢れ、最初から何もなかったかのように瞬時に完全再生してしまったのだ。

(バカな……ここまでの異常な再生能力、それにこの防御力……!)

トーヤの胸に初めて明確な焦りが芽生える。しかし冷静さを失えば全滅だと己を鼓舞し、冷や汗を流しながらも、次々と新たな属性魔法や拘束魔法を間髪入れずに繰り出した。


「ふむ……大層な大口を叩くから期待していたのだが、所詮は人間の域を出ないか。つまらんな……。」

ルシファーは心底退屈そうに呟くと、品定めを終えたかのように冷酷に右腕を軽く横に振った。

ただの腕の一振りに過ぎなかった。

しかしそれは、大型台風をも凌駕する超高圧な衝撃波となってウェーノ家を直撃した。

「くっ……!! 全力展開、《トリプル・バリア》!!」

トーヤは瞬時に、これまでにない強度を持った強固な魔力障壁を三重に展開した。

だが次の瞬間――パリィィィンッ!!と、まるで薄いガラス細工のように一瞬で粉々に砕け散った。

衝撃を殺しきれず、トーヤ、アイン、そして子供たちとクロは、激しく後方の石床へと叩きつけられた。

全身を襲う激痛に、全員が息を詰まらせて苦悶する。

「さて……ゲームオーバーだ。もう終わりにしようか。」

ルシファーが、文字通りゴミを処分するかのように退屈そうな顔で、倒れた彼らへ向けて右手をかざした。

その掌に、世界を消滅させかねない濃度の暗黒魔力が集束していく。

まさに絶対絶命――その瞬間。

バリバリバリッ!!!と、誰も予想していなかった場所の空間が、力任せに引き裂かれた。



「――間に合ったぁぁぁ!!」

裂けた空間から眩い光のゲートが開き、濁流のような光が溢れ出す。

そこから雄叫びと共に飛び出してきたのは――。

置いてきたはずの、リル、ミラ、ハク、リィナ。

そして――なぜかその後ろから、不自然なほどふわふわしたお馴染みの毛玉、モフまでもが一緒に勢いよく飛び出してきた。

「みんな……っ!? どうしてここに……来るなと言ったはずじゃ……!」

驚愕のあまり痛みを忘れて叫ぶトーヤに、リルが静かに叫んだ。

「危険なのは分かってる! でも……。」

ミラもまた、みんなを守るように前に立ち、静かに、しかし強い意志を瞳に宿す。

「……心配で、居ても立ってもいられなかった……。」

ハクは無言で頷き、リィナは恐怖で震えながらも前に出た。

「……マスターを……皆様を守りたい……!」

最後尾のモフは「もふっ!!」と短く凛々しく鳴き、なぜかこの場にいる誰よりも一番やる気と闘志に満ち溢れたポーズをとっている。


ルシファーはその滑稽とも言える乱入劇を見て、腹を抱えるように大爆笑した。

「ははははは!!! 傑作だ! 有象無象がさらに増えたところで、一体我に対して何ができるというのだ? 蟻の群れが何匹集まろうが、象は簡単に踏み潰せるぞ?」

だが、その嘲笑を浴びながらも、トーヤをはじめとするウェーノ家、そして愛すべき仲間たちは、ボロボロの身体を支え合いながら再び力強く立ち上がった。


目の前にいるのは、世界の破滅そのものである絶対的な悪魔。

絶望的な実力差、無謀極まりない戦い。

――それでも、彼らの心は、誰一人として一切折れていなかった。

絆の光は、暗闇の中でこそより一層強く輝き始めるのだ。


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