表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ふぁみりぃ ~のんびり異世界生活~  作者: すぱ☆たま
新たな家族

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
56/101

第50話 プログラム外の感情

ユーヤの部屋で、彼自身のスキルによって誕生したNPC『リィナ』。

彼女は、本来であればデータコードの集合体であるゲーム世界の住人でありながら、現実世界の新鮮な空気を吸い、眩しい光を見て、自由な風を肌で感じていた。


『……この世界は、私のデータベースでは説明ができません。』


リィナは窓の外に広がるウェーノ村の景色を見つめながら、静かに呟いた。

ユーヤは胸を張り、誇らしげにリィナに答える。


「ウェーノ村はね、どんなゲームのフィールドよりもすごいんだよ!」


『……既存のアルゴリズムでは解析不能、という意味でしょうか?』


「違うよ! とにかく“楽しい”って意味!」


リィナは青い瞳を小さく瞬かせた。


『……“楽しい”。感情データとして単語の登録はありますが……。私はNPCですので、実際にそれを感じたことは、一度もありません。』


ユーヤはニカッと太陽のように笑った。


「じゃあ、一緒に村に行ってみようよ! 僕が、君に“楽しい”を体験させてあげる!」


リィナは一瞬だけ瞳の奥で青い光を点滅させ、処理を止めた後、静かにコクリと頷いた。


『……マスターの命令であれば、同行いたします。』



ユーヤに手を引かれ、リィナは村の中心へと足を踏み入れた。

彼女の姿は、まるで光の粒子が人の型を取って実体化したように美しく、すれ違う村の住民たちは思わず足を止めて彼女に見入った。


「……誰だ、あの綺麗な子は?」


「新しい種族の旅人か?」


「いや、あれは……人間……なのか?」


不思議な気配を察知したエーテル族が、ふわりと近づき、リィナの周囲を興味深そうに漂う。


「……あなた、この世界の内側で生まれた存在ではありませんね? 世界の外から来た存在……?」


リィナは感情の読めない顔で首を傾げた。


『私は「NPC」です。ゲーム世界から召喚された住人です。』


エーテル族は、驚きに光を明滅させた。


「“世界の外側”の住人ですか……? そのような存在、初めて見ました。あなたの存在の気配は……とても静かで、果てしなく透明ですね……。」


リィナは少しだけ困ったように、プログラムされた微笑みを浮かべた。


『私は、マスターの生活効率を最適化するために作られた存在です。気配や感情といったものは……まだ、よくわかりません。』


エーテル族は優しく温かい光をリィナに寄せた。


「ならば、この村でたくさんのことを学ぶと良いでしょう。ここは、世界で一番“感情”が溢れている場所ですから。」



「まぁ〜〜〜〜! なんて可愛い子なの〜!」


アインがリィナの姿を見つけた瞬間、目を輝かせて猛ダッシュで駆け寄ってきた。

ぎゅっ。


「……っ!?」


リィナの思考処理が一瞬、完全にフリーズした。


「ちょ、母さん! 急に抱きつかないでよ! リィナがびっくりしてるじゃん!」


ユーヤが慌てて引き剥がそうとするが、アインは全く気にせず、リィナを抱きしめたまま頬ずりする。


「リィナちゃんっていうの?あなたは、ユーヤの新しいお友達?」


『……お友達……?』


リィナは自分の胸にそっと手を当てた。


『私は……マスターの生活を補助する目的で存在しており……。“友達”という関係性の定義は……該当しません。』


アインはリィナの肩を抱き、優しく微笑んだ。


「そんな難しいデータで考えなくていいのよ〜。あなたが誰かと一緒にいて、『心が温かいな』って感じたなら、その人があなたの“友達”よ。」


リィナの胸の奥深くで、データにはない“何か”が小さく震えた。


『……心が……温かい……? この感覚は……私のデータベースには存在しません……。』


アインはリィナの手を、両手でしっかりと握った。


「それはね、“あなた自身の本当の感情”なのよ。」



「ねぇねぇ! 君、どこから来たの!? 何者!?」


クロ(竜姿)が、珍しいお客さんに興味津々でリィナの周りをぐるぐると飛び回る。

ハクもリィナのフリルのエプロンを、つんつんと突っついている。

リィナは少し戸惑いながらも、しゃがみ込んでニ匹の瞳を見つめた。


『あなたたちは……竜人族、ですか……?』


クロはえっへんと胸を張る。


「そうだよ! 僕はクロ! こっちは妹のハク!」


「はい!」とハクも元気よく返事をする。

リィナは、プログラムにはない自然な微笑みを浮かべた。


『あなたたちの魔力の波長は……とても綺麗です。私がいたゲーム世界の“ドラゴン”とは、全く違う……。』


クロは目を輝かせた。


「ゲームのドラゴンってどんなの!? かっこいい!?」


「ハクも、お話聞きたい!」


リィナは少しだけ視線を落とし、静かに言った。


『……強かったですが、あなたたちより、ずっとずっと寂しそうでした。』


クロとハクは顔を見合わせた。


「寂しいそう……?」


「どうして……?」


リィナはそっと、ニ匹の頭を優しく撫でた。


『でも、あなたたちは違います。あなたたちは……“家族”という、温かい魔力を持っていますから。』


クロは照れくさそうに笑い、ハクと顔を見合わせた。


「えへへ……ありがとう!」



もふっ。

突然、巨大なモフがリィナの足元に転がり込んできた。


「もふ……。」


リィナは突然の巨大生物に驚いて固まる。


『……あなたは……?』


追いかけてきたリルが優しく説明する。


「モフはね、みんなの寂しさとか不安を食べてくれるの。」


ミラもそれに続ける。


「……心の乱れを食べて、癒やしてくれるんだよ……。」


リィナはモフを見つめ、静かに目を閉じて分析した。


『……なるほど。あなたは……この村における“心の調整プログラム”のような存在なのですね……。』


モフはリィナの手のひらに、温かい顔をすり寄せた。


「もふ……。」


リィナの胸の奥が、再び小さく、しかし確かに震えた。


『……この感覚……。これが、“癒やし”……? 私というデータにも……感じることができるのですね……。』



その日の夜。

ユーヤは自室でリィナのステータス画面を開き、そこに表示された文字列に驚愕した。


【NPC:リィナ】

→ 感情データ:生成中

→ 世界適応率:急上昇

→ プログラム外行動:複数検出

→ “心”の形成:進行中


「……え?」



「リィナ……君、もしかして……。」


リィナはユーヤの方を振り向き、静かに微笑んだ。


『マスター。私は……この世界で、“私自身”を学んでいます。すべては、あなたのおかげです。』


ユーヤは胸が熱くなり、たまらず名前を呼んだ。


「……リィナ……。」


リィナはそっと、ユーヤに向けて手を伸ばした。


『マスター。私に……“名前の意味”を教えてください。“リィナ”とは……この世界において、どういう意味を持つ言葉なのですか?』


ユーヤは少し照れながら、頭を掻いて答えた。


「……この世界で、“光”っていう意味の言葉らしいよ。その名前の通り、君は今日一日で、この世界をすごく明るくしてくれたね。」


リィナは、青い瞳を大きく見開き――


『……とても……嬉しいです。マスター。』


そう言って、リィナはプログラムされた造り物の笑顔ではなく、初めて“自分の意思”で、心からの美しい微笑みを咲かせたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ