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異世界ふぁみりぃ ~のんびり異世界生活~  作者: すぱ☆たま
新たな家族

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第48話 クロの特訓

モフが村の正式な家族となってから、ウェーノ村の平和と癒やし度はさらに磨きがかかっていた。


そんなウェーノ村のしんっと静まり返った夜明け前の森。

朝霧が立ち込める中、ひとつの人影があった。

人型の青年に姿を変えたクロである。

まだ村の誰も起きていないと思い込んでいるクロは、誰にも見られないようにこっそりとニ本足で歩く練習をしていたのだ。


「……よし、今日は転ばない……はず……!」


真剣な顔で呟きながら、ぎこちない足取りで数歩前に進む。

しかし、人間の身体の重心移動にまだ慣れていないクロは、足元の小さな石に気付かず――


「わわっ!」


見事に足をもつれさせ、ドサッと盛大に転んでしまった。


「キュウゥゥ……!」


痛みに思わず竜の鳴き声を漏らし、涙目で頭を抱える。


だが、クロは知らなかった。

少し離れた木の陰から、ウェーノ家の全員が彼の努力をそっと、そして温かく見守っていることを。


「今日も朝早くから頑張ってるな。」


トーヤが腕を組み、感心したように頷く。


「転んで痛がってる姿も可愛いのよねぇ~。」


アインは両手を頬に当ててうっとりとしている。


「こっちに全然気づいてないで必死なところが、またクロらしくて良いよな。」


ソーヤが苦笑しながら見守る。


「がんばれクロっ! 負けるな!」


ユーヤが思わず大きな声で応援してしまい、


「バカ、声がでかい! バレるだろ!」


とソーヤに頭をペシッと叩かれていた。

幸い、クロは自分の練習に必死でこちらには気づいていないようだった。

クロのすぐ横では、白竜のハクが尻尾をぶんぶんと振りながら、一生懸命に声にならない声で鳴いていた。


「キュルルっ!」


「ハク、応援ありがとう! お兄ちゃん、がんばるからな!」


ハクは「うんうん」と全力で頷く。

その姿はまるで、不器用な兄を健気に励ます妹そのものだった。



数日後。

毎朝の秘密の特訓の甲斐あって、クロはようやく人型の姿で、スムーズに歩き、軽く走ることすらできるようになった。


「やった! これでみんなと同じ目線で、普通に生活できるぞ!」


クロが嬉しそうに飛び跳ねた、その瞬間――


「……おにぃ……ちゃ…ん……やった……ね!」


ハクの小さな口から、はっきりとした“人間の言葉”がこぼれ落ちた。


「えっ!? ハク!? 今しゃべった!?」


クロが驚愕して振り返ると、ハクは嬉しそうに目を輝かせて、もう一度はっきりと言った。


「クロ……兄ちゃん、すご……い! お兄ちゃん、すごい!」


「ハクがしゃべったぁぁぁぁ!? ハクもすごいよ! すごすぎるよ!」


二人は言葉を交わせたことが嬉しくてたまらず、抱き合って草むらを転げ回った。



その日の夜。

ウェーノ家と村の仲間たちは、竜王国のアルグとエルも特別に呼び寄せて、クロの二足歩行マスターとハクの初めてのおしゃべりを祝う、盛大なお祝い会を開いた。

アインはハンカチで目元を拭いながら、嬉しそうに笑う。


「ニ人とも……本当に、立派に大きくなったねぇ……。」


アルグとエルに至っては、宴会の開始と同時にすでに大号泣していた。


「うぉぉぉ! クロが……我が息子のクロが、見事に人型で歩いておる……!」


「ハクが……私たちのハクが、言葉をしゃべったわ……!? 竜の成長にしては早すぎるけれど、なんて素晴らしいことなの……!」


親バカを極めた竜王家の涙が、宴会場を温かく濡らす。


一方で、村の女性陣たちはというと――


「クロくんがまた人型で生活を始めたって!?」


「大変! まだ慣れてないなら、私たちが付きっきりでお世話してあげないと!」


「ねぇクロくん、今度一緒に村をお散歩しない?」


「クロくんに似合う素敵なお洋服を、私が仕立ててあげるわ!」


口々にいろんな口実をつけながら、彼女たちの思いは完全に一つだった。


(ずっとそのイケメンな姿でいて!!)


そんな女性たちの熱烈な下心に気づくこともなく、クロは「ありがとう!」と照れながらも純粋に喜んでいた。



そんな賑やかなお祝いの輪の少し外れた場所で。

モフがぽてんっと座り込み、なぜか体をふるふると小さく震わせていた。


「モフちゃんも、二人のお祝いを喜んでくれてるのね〜。」


アインが優しく抱き上げようとすると、


「もふ……もふ……。」


と、いつもより少しだけ息が荒く、様子がおかしい。


「モフちゃん、どうしたの? どこか具合が悪いの?」


アインの問いかけに、モフは体を横に振った。

具合が悪いわけではなさそうだが、明らかにいつものリラックスした状態ではない。

すると、モフの体の奥深くから、小さな光の粒子がぽわんと漏れ出し、すぐにふっと消えた。


モフの身に何かが起きようとしているのは間違いないが、それ以上は何も起こらず、モフ自身もすぐに「もふっ」といつも通りのマイペースな姿に戻ってしまった。

その様子を冷静に観察していたトーヤが、顎に手を当てて推測する。


「この間も、村中に溜まった負の感情を一気に吸収していたし……もしかしたら、感情を少し吸収し過ぎて、キャパオーバーしかけているのかもしれないな……。」


「少しの間、モフの様子は注意深く観察する必要があるな。」


トーヤの言葉に、ウェーノ家の全員が真剣な顔で頷いた。

アインが心配そうにモフに顔を近づけて話しかける。


「モフちゃん。みんなのために頑張ってくれるのは嬉しいけど、無理して悪い感情を吸い込みすぎちゃダメよ?」


家族の心配そうな表情とアインの温かい言葉を受けて、モフは安心させるように「もふっ」と縦に大きく揺れた。


こうして、クロとハクの微笑ましい成長を喜びつつも、新たな家族であるモフの不思議な変化にも気を配ることになったウェーノ家であった。


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