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異世界ふぁみりぃ ~のんびり異世界生活~  作者: すぱ☆たま
竜王国

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第41話 天空舞踏祭(ドラゴンダンスフェスタ)

ウェーノ村の朝は、いつにも増してそわそわとした熱気に包まれていた。

それもそのはず、今日から三日間にわたって、竜王国とウェーノ村の正式な国交樹立を祝う一大交流イベントが開催されるからだ。


この歴史的な祭りの噂を聞きつけて、リベルタスの街やアトレイア王都からも、物見遊山の観光客が押し寄せていた。

突然の人口爆発に対応するため、ソーヤの《ジェネレーター》とユーヤの《ゲームマスター》がフル稼働し、村の周囲には一晩で豪華な宿泊施設が立ち並んだのだが、それでも部屋が足りなくなるほどの盛況ぶりであった。


「今日は竜王国との交流イベント『天空舞踏祭』の日だよ!」


ユーヤは朝からテンションMAXで、村の広場を駆け回っている。

ソーヤは大量の看板や飾り付けの最終調整をしながら、苦笑して弟をたしなめた。


「落ち着けって。まだ朝だぞ。体力を温存しておかないと、最後まで持たないぞ。」


「だって! 誇り高い竜人族が空で踊るんだよ!? ゲームのムービーシーンみたいに、絶対すごいって!」


そんな兄弟のやり取りを横目に、アインはふんわりと微笑みながら、テーブルに焼き立てのクッキーやパウンドケーキを山のように並べていた。


「みんな、お祭りで遊ぶ前に、朝ごはんはちゃんと食べてからね〜。」



一通りの準備が終わり、広場に多種族の観客たちが集まったころ。

ふわり、と村の上空の空気が大きく揺れた。

次の瞬間――

雲海を突き抜けるようにして、黒、赤、白の三つの巨大な影が村の上空へと舞い降りてくる。

黒竜王アルグレオス、赤竜妃エルヴァリシア、そして白竜のハクノアである。

その後ろには、見事な礼装に身を包んだ竜人族の精鋭舞踏団が、一糸乱れぬ隊列を組んで優雅に空中を滑空していた。


「うわぁ……!」


リルが目を輝かせて夜明けの空を見上げ、ミラも静かに息を呑む。


「……きれい。」


地上では、すでに青年の姿に成ったクロが、誇らしげに胸を張って観客の前に立っていた。


「今日は僕が、みんなの案内役だよ!」


「キュルッ!」


ハクもクロの頭の上を飛び回りながら、元気いっぱいに鳴き声を上げた。

張り切って、人型で登場したクロであったが、まだ慣れていないため、大勢の前で転んで赤っ恥をかいたのはご愛嬌である。



空中で人型のまま滞空するアルグが、天を震わせるほどの重厚な声で吠えた。


「これより、竜王国とウェーノ村の交流イベントを開催する! わが国の伝統であり、誇りもである『天空舞踏ードラゴンダンスフェスター』を披露しよう! 皆のもの――舞え!」


その王の号令を合図に、竜人族たちが一斉に跳躍した。

空中で力強く翼を広げ、風を切り、魔力の光を軌跡として描きながら、空をキャンバスにして雄大に舞い踊る。

エルフたちは、その研ぎ澄まされた動きを見て感嘆の声を上げた。


「なんて美しい……! 力強いのに、全く無駄がないわ!」


「風と魔力が、見事に調和している……!」


ドワーフたちは腕を組み、職人としての目で唸った。


「こりゃあ芸術だな……。」


「いや、あれはもう極限まで洗練された戦闘技術の域だろ。隙が一つもねぇ……。」


大人たちがその美しさと技術に圧倒されている中――


「僕も飛ぶー!」


待ちきれなくなったクロ(竜型)が、ポンッと空へ飛び出した。


「キュイッ!」


ハクも楽しそうにそれに続く。

二匹は、威厳たっぷりに舞う竜人族たちの間を、くるくると無邪気に回りながら楽しそうに飛び入り参加してしまった。


「かわいい〜!」


アインが嬉しそうに手を叩き、それを見た村の獣人や人間の子どもたちも大興奮で叫ぶ。


「僕も飛ぶー!」


「わたしもー!」


……もちろん、彼らに翼はないので飛べるわけがない。

が、子どもたちは全力でジャンプし、地面で転がり、笑い転げて、彼らなりの『舞』を楽しんでいた。



「見てて! ぼくも竜の舞できるよ!」


ユーヤが謎のポーズを決め、手から青白いエフェクトを出そうとしている。


「それはただのゲームの必殺技のモーションだろ……。」


ソーヤが呆れたようにツッコミを入れた、その瞬間だった。

ドオォーーン!!

ドワーフの工房の方角から、突如として巨大な花火が打ち上がった。

トーヤがギョッとして振り返る。


「おい! ダグルス! 花火の合図はまだだぞ!」


「すまん! テンションが上がって手が滑った!」


ガハハと笑うドワーフの親方のせいで、昼間の空に大輪の花火が咲き乱れ、それが竜人族の放つ魔力の光と重なって、想定外に幻想的な光景を生み出してしまった。


「なら、私たちも手伝うわ!」


エルフの魔法使いたちがすかさず魔法で光の演出を追加する。


「光の粒子を散らして!」


「風の流れを整えるわよ!」


空はたちまち虹色に輝き、竜人族の舞はさらに煌びやかで美しいものへと昇華した。



「せっかくだし、私たちも踊りましょう〜。」


アインが楽しそうにトーヤへと手を伸ばす。


「えっ、俺たちもか?」


「もちろんよ〜。お祭りなんだから♪」


トーヤは少し顔を赤くして苦笑しながらも、愛する妻の小さな手を取った。


「……まぁ、たまにはいいか。」


リルは、少し恥ずかしそうにソーヤの袖を引いた。


「……踊る?」


ソーヤはニコリと笑って手を取り返す。


「うん! 一緒に踊ろう!」


ミラは、ユーヤの手をそっと握った。


「……一緒に。」


「う、うん!」


ユーヤは顔を真っ赤にして、ギクシャクと頷いた。


こうしてウェーノ家の面々も見様見真似で空の舞を地上で再現しようとするのだが――


・トーヤは照れがあるのか、動きが信じられないほど固い。

・アインはなぜかプロのダンサーのように優雅すぎる。

・ソーヤは舞を分析して真面目に再現しようとするあまり、動きがロボットみたいになっている。

・ユーヤは完全に格闘ゲームのコンボ入力のモーションになっている。

・リルとミラは、ただただ可愛すぎる。


結果――


「本来の天空舞踏とは全く違うが……すごく楽しそうだな。」


空から降りてきたアルグが、呆れながらも豪快に笑った。

エルも優しく頷きながら、彼らの輪に加わる。


「ええ。とても素敵だわ。これがウェーノ村の舞ね。」



舞踏祭のフィナーレ。

竜人族が空に巨大な魔法陣を描き、そこから無数の光の花びらが雪のように降り注いだ。

その光の中心に、クロとハクが舞い降りる。

アルグが、父親として、そして竜王として声を張り上げた。


「――クロディアスよ!」


「お前の立派な成長を、竜王国とウェーノ村の名において、心から祝福する!」


エルが慈愛に満ちた声で続ける。


「あなたは、二つの世界をつなぐ大切な架け橋。これからも、あなたらしく、自由に飛び続けてね。」


クロは人型の青年の姿に戻り、胸を張って、少し照れくさそうに笑って言った。


「ありがとう……みんな!」


足元で、ハクが兄を祝福するように嬉しく鳴く。


「キュルルッ!」


村中から割れんばかりの拍手と歓声が起こり、空にはダグルス渾身の特大花火が咲き誇った。

降り注ぐ光の中で、クロは確かに、強大な竜王国の王子としてだけでなく、“ウェーノ村という温かい家族の中心”として、誰よりも眩しく輝いていた。


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