第2話 いよいよ、本格的な異世界生活スタート!食料調達は難しい!?
《おはよ~。みんな起きて~。朝ごはんできたわよ~。》
愛の呼びかけで、男たちが起きてくる。
「母さん、子供たち、おはよう。」
「「父さん、母さん、おはよう!」」
と元気な声とともに、リビングに現れた男たち。
リビングのイスに座るのと同時に、さっそく美味しそうなハムエッグと食パンにかぶりつく。
朝ごはんを食べながら、十夜は一人思案していた。
(異世界での生活も三日目になり、少しずつこの世界に順応してきている。まだまだ分からないことだらけながらも、いくつか分かってきたこともある。)
(まず、この世界は地球と同じような環境で、空や山、川などがあり、様々な植物が生息していた。)
(また、生態系に違いはあるものの森の中には鳥やウサギっぽい小動物も生息している。今のところ異世界物でありがちなモンスターに出くわしていないのは幸運と言えよう。まぁ、必ずしもモンスターがいるとは限らないが、用心しておくに越したことはないだろう。)
(そうやって、安全を優先して探索しているため、探索できた範囲はあまり広くなく、少なくとも人が住んでいる町や村などはまだ見つかっていない。)
(この世界に俺たち家族以外の人間はいるのだろうか?)
(もし、俺たち四人しかいなかった場合は…。)
(まぁ、今後探索範囲を広げれば、町や村が見つかるかもしれないし、今考えてもしょうがないか…。)
(スキルに関しても分かったことがある。スキルを使用するときは、きちんとしたイメージができていないと、うまくスキルが発動しないということだ。)
遊也がまたしても、ゲーム内の食べ物(主にお菓子)を召喚しようとしたときがあったのだが、
「こんな感じで、丸くて、甘くて、それで…。」
といったふうに、うろ覚えのあいまいな情報だけでは、うまく召喚することができなかった。
また、創也しても、アニメに出てくるヒーロースーツを作成しようとしたときに、
「あれ~。こんな感じだった気がするんだけど、なんで変形しないんだろう…。」
といったふうに、作成したいものが明確にイメージできていない場合は、スキルが発動しないということが何度かあった。
そのことから、兄弟のスキルに関しては、しっかりとイメージができていないと、スキルが発動せず、何でもかんでも創作、召喚ができるわけではなかった。)
その点、十夜と愛のスキルは、非常に優秀で、兄弟のようなイメージに左右されることはなかった。十夜の”ウィザード”の場合、ステータス画面上のスキル画面から、火や水などのそれぞれの属性でカテゴライズされた魔法の一覧表を見ることができ、その中から魔法を選ぶことで、発動することができる。さらに、魔法の名前を覚えてしまえば、いちいち確認しなくても魔法名を唱えるだけで発動可能であった。
愛の”テイマー”にいたっては、そもそもイメージや確認をする必要すらなく、「この植物、動物とお話ししたい。」と考えるだけで、すぐに意思疎通が可能になるので、直感的に使用することができる。また、いたずらしようとして十夜に”テイマー”を使用したときに、テレパシーのように声はっさずとも、会話ができるという事も分かった。そのときの十夜の驚いた表情は、いつも冷静な十夜が普段見せることのない表情で、密かに愛の十夜思い出コレクションの一つとなっている。どうにかして、もう一度あの表情を見たいと、作戦を考えているのは、愛情があるからということにしておこう。
冒頭の朝の一声もテレパシーを使って、三人の頭の中に直接話しかけていたのである。
朝食を終え、食後のコーヒーを飲みながら、一通り自分の頭の中を整理してから、十夜がみんなに話し始める。
「さて、今後の生活のことだが…。」
「まず、この家についてだが、オール電化にしてあったのと、太陽光発電のおかげで、今のところ、電力は確保できているみたいで、家電は問題なく使えている。」
「空にあるのが太陽かどうかは分からないが、太陽光発電がうまく作動している内は、電力に困ることはないだろう。」
「水に関しては、とりあえずは、魔法で作り出し水を貯水槽に貯めているので、こちらも当面の間は大丈夫。」
「やはり問題になってくるのは食糧だ。」
「ここ数日は、家にあった買い置きの食料で何とかなっているものの、それももうすぐなくなる。」
「今後どうやって食料を調達するかが大問題だと考えている。」
十夜の話を聞いて、遊也が答える。
「僕がスキルで食べ物を召喚しようか?」
それを受けて、十夜が答えた。
「ありがとう、遊也。」
「気持ちはうれしいが、スキルで食料を出し続けるには、限界があると思う。特に、創也、遊也のスキルは、イメージができていないと発動しない場合もあるから、別の方法で食料調達できた方がいいと思うんだ。」
「できれば自給自足で食料を調達できるようにした方がいいと考えている。」
「だったら、畑を作るのはどうかしら?」
「畑を耕す機械は、創也が作れるし、野菜の苗なんかは、遊也に召喚してもらったらいいし。」
「一度、うまく育てられれば、自給自足で食料調達できるんじゃない?」
と愛が言うと、
「あと、川はあったし、お魚を釣るのもいいかもしれないね。海があればもっといいんだけど…。」
と創也が続く。
「でも、作物が育つのには、時間がかかるんじゃ…。」
「それなら大丈夫!」
「ゲームの中では、一日あれば、育つようなすごい苗もあるし、成長を促進させる肥料なんかもあるよ!」
と疑問を投げかけようとした十夜を遮って、遊也が答えた。
「物は試しよ。朝ごはんの後、みんなで畑づくりをしましょう。」
「ね?あなた?」
「分かったよ。じゃあ、食休みを取ったら、早速みんなで畑づくりだ!」
「「「おー!」」」
「さて。畑づくりをする前に、まずは役割分担だな。」
「力仕事は、俺たち三人に任せて、母さんは野菜や果物が元気いっぱいに育つようにスキルで話しかけてね。」
十夜がそう言うと、愛は不満そうにしている。
(みんなでやろうって言ってたのに、私だけのけ者じゃない。)
「それなら私は、動物たちと遊んでようかしら。」
「動物かぁ〜。牛やヤギがいれば、ミルクも取れるから、便利になるのにね。」
と、何気なく遊也が答えると、
「あら。ヤギは分からないけど、牛っぽい動物はいるわよ。家まで来てもらいましょうか?」
と愛が何気なしに答えると、一同仰天。
「「「えぇ~」」」
「母さん、牛がいるの知ってたの?」
「牛かどうかは分からないけど、牛っぽい動物がいるのは知ってたわよ。この間お話もしたし♪」
「とりあえず、呼んでみて…。」
十夜はあきれながら、愛に牛みたいな動物を呼んでもらうことにした。
愛がスキルで呼びかけると、ほどなくして、牛のような見た目の動物が数頭集まってきた。早速、愛がスキルで話しかける。
「牛さんって呼んでいいのかしら?ミルクを分けてもらうことはできる?」
「モウゥ~。」
「分けてくれるって~。」
「あっさり交渉成立したみたいだな…。」
十夜があきれ顔で応えた。
「じゃあ、牛小屋も必要になるね。さっそく作るね。」
「僕は牛のエサを召喚するね。」
創也が森の木を使って、パッと牛小屋を作り上げ、そこに遊也が牛の餌を召喚して、あっという間に牛小屋が完成した。
牛たちも喜んで小屋に入っていった。
「さて。気を取り直して、畑づくりに取り組むか。」
と十夜が気合を入れ直したのも束の間、今度は森の方から羊のような動物が群れでやってきた。
「母さん、これはいったいどういう…。」
「あなた、ごめんなさい。」
「牛だけだと寂しいかなと思って、羊のような動物もいたから呼んでみたの。」
「・・・」
「創也。遊也。羊小屋と餌を準備してやってくれ…。」
「よし。気を取り直して、畑づくりは、昼からにしよう。」
十夜は少し疲れて、畑づくりを午後からに仕切り直したのであった。
お昼ご飯は、愛がさっそく牛乳でシチューを作った。地球上の牛乳よりも濃厚でまったりしており、今まで食べたことのない絶品シチューに四人は舌鼓を打ったのであった。
◆
「さて。気を取り直して、畑づくりを始めるぞ!」
十夜が気合を入れながら、腕まくりをすると、それにならって、創也、遊也も腕まくりをしている。
「まずは、土を耕すところからだな。創也。スキルで土を作り変えることはできそうか?」
「たぶんできると思う。やってみるね。」
創也がスキルを使うと、あっという間にただの地面が肥沃な土壌に変わった。
「異世界っていいね~。普通ならクワで耕して、肥料を混ぜて、馴染ませてといろいろ時間がかかるのに、一瞬で畑ができるとは…。」
「これならわざわざ午後に回す必要はなかったかな?」
と十夜が反省していると、
「じゃあ、さっそく野菜や果物の苗を召喚するね!」
と、遊也が大量の苗を召喚し始めた。
葉野菜は、レタスにキャベツに白菜、ほうれん草に小松菜など。根野菜は、ダイコン、ニンジン、ゴボウの他にも、ジャガイモ、サトイモ、サツマイモ、レンコンなどがあった。さらには、果菜類として、トマト、ナス、ピーマン、きゅうり、カボチャなどである。本来、苗ではない野菜もスキルの影響か、すべて苗として召喚されているようであった。
「これだけあれば、地球と変わらないだけのお料理が作れそうね♪」
「苗を植えるのは、力仕事じゃないし、さっそくみんなでやりましょ!」
と言って、すでに両手にレタスとキャベツの苗を持った愛が上機嫌に畑に植え始めていた。
「「僕たちもやる!」」
創也、遊也も負けじと、次々と苗を植えていく。
そこに十夜も加わり、あれだけあったたくさんの苗が、一時間もかからずにすべて植え終わっていた。
「もっと時間がかかると思っていたけど、かなり早く終わってしまったな…。」
「それなら果物の木を植えるのはどうかしら?」
十夜が思案しているところに、愛が声をかける。
「やっぱり、母さんは天才だな。本当に頼りにしてるよ♡」
異世界でも相変わらず、二人の世界に浸り始めた両親をしり目に、
「二人は放っておいて、勝手に進めちゃおうぜ!」
「遊也。野菜は種類関係なく全部苗で出てきたから、果物も種類関係なく木で出せたりするんじゃない?」
「とりあえず、リンゴ、オレンジ、パイナップルの木を召喚してよ。あと、イチゴも食べたいし、桃とマンゴーもいいな~。」
「わかった!さっそくやってみるね。召喚!」
遊也がスキルを発動させると、様々な果物の木が現れた。しかも、すでに果実が実っている状態で。
「すげぇ~。すぐ食べれるじゃん。さっそくリンゴ食べようっと。」
「じゃあ、僕はイチゴにしよっと。」
創也、遊也は、次々にいろんな果物を食べていく。
「「おいしい~♪」」
「「異世界サイコー!」」
兄弟が一通りの果物を食べ終わったころ、ようやく二人の世界から抜け出した十夜と愛がやってきて、
「すごいじゃないか。これで母さんお手製のアップルパイも食べれるな。」
と十夜がご満悦である。
「これで食べ物には困らなくなったわね。でも、アップルパイを作るには卵が必要かも。」
「異世界にもニワトリがいるかしら?」
「試しに呼んでみましょうか?ニワトリさん、いたら集まって~。」
森に向かって、愛が声をかけると、ほどなくして十数羽のニワトリのような鳥が現れた。
「もう何でもありだよ~。」
「僕たちのスキルもいろいろできるけど、母さんのスキルが一番すごい気がしてきた…。」
兄弟があきれている。
そんな兄弟を気にすることもなく、すでに愛は卵を分けてもらっていた。
「今日のおやつはアップルパイにしましょう!」
「みんなも手を洗って、作るのを手伝って。」
「「「はーい。」」」
こうして、今日も上野家の平和な異世界生活に新たな1ページが刻まれるのであった。




