第1話 今日から異世界暮らし!? 上野家、そろってお引越しです!
◆上野十夜・元会社員:≪ウィザード≫(あらゆる魔法が使用可能)
◆上野愛・元専業主婦:≪テイマー≫(あらゆる動植物と会話・手懐けることが可能)
◆上野創也・元中学生:≪クリエイター≫(あらゆる物質から様々なものを創作可能)
◆上野遊也・元小学生:≪ゲーマー≫(ゲームの世界のものを現実世界に召喚することが可能)
ある日、上野遊也は普段とは違う雰囲気とともに目覚めた。自分が眠っているベッドはいつものベッドで、部屋もいつもの自分の部屋なのだが、何かがおかしい。
「なんだろう?何かが変な気がする…。」
寝ぼけ眼をこすりながら、周りを見渡して、違和感の正体に気付いた。窓から見えるはずのいつもの家の庭が、どこまでも続く草原になっている。
「いったいどうなってるんだ?寝ぼけてるのかなぁ?」
何度も目を擦りながら困惑していると、外から家族の声が聞こえてきた。
「すげー!こんなこともできる!」
という、兄の上野創也の声に続いて、
「いろいろ試すのはいいが、もう少し安全を確認してからの方が…。」
と、父、上野十夜の声が聞こえる。そして、
「空もとてもきれいだし、空気も美味しくて、清々しいね~。」
と、母の声が続いた。
遊也が外に出ると、父は周りを警戒しており、母は楽しそうに小鳥と遊んでいた。
「遊也、ようやく起きたか? ここは……どうやら異世界のようなんだ。」
「何がどうなったかはわからないが、どうやら家ごと家族が全員異世界に飛ばされたらしい…。」
「まったく。何がどうなっているのやら。」
と父が溜息交じりに答えた。そんな父の困った様子を気にすることもなく、
「ラノベでよくある異世界転生だね!」
「でも、転生は死んでから異世界に行くのが王道だから、この場合は異世界召喚かなぁ?」
「でもでも、異世界召喚だとしたら、召喚したであろう王様やお姫様がいないし、そもそもお城でもないから異世界召喚でもないのかなぁ?」
と、木でできた剣を振り回すのをやめて、創也が思案し始めた。
「転生でも召喚でもどっちでもいいんだが、間違いなく異世界に来たというのは間違いないさそうだな…。」
「家があるのは不幸中の幸いだが、この世界がどんな世界かもわからないし、これからどうやって生活していくか…。」
十夜が悩んでいると、
「まぁ、悩んでいても解決しないし、家族みんなで力を合わせれば、何とかなるわよ。」
「意外と楽しい世界かもしれないし。ね?」
と、母、上野愛が答えた。
「確かに、母さんの言うとおりだな。」
「やっぱり、母さんは頼りになるよ!愛してる!」
「私もよ!あ・な・た♡」
といつも通り、先ほどまで悩んでいたのがウソのように、完全に二人の世界に浸っているのを横目に、
「まったく。またいつものが始まったよ…。」
「ああなったら、周りが見えなくなるもんね…。」
と兄弟二人があきれている。
「そんなことより…。」
と創也が話題を変えて、遊也に話しかけた。
「遊也はどんなスキルをもらったの?」
「スキルって、何のこと?」
遊也が聞き返すと、創太が木の剣を地面に突き刺して答えた。
「視界の右上の方を意識してみて。そうしたら、ステータスが表示されるから。」
その言葉通り、創也の視界の右端には、HPやらMPなどの数値が表示されていた。
「異世界といえば、やっぱりスキルだよね♪」
「さっき確認したらちゃんとユニークスキルが付与されてたんだ。俺の場合は、”クリエイター”っていって、”あらゆる物質からいろんなものを創作可能”って書いてある。」
「この剣は、遊也が起きてくる前に、試しにクリエイターで作ってみたんだ。」
と、創也が先ほどの木の剣を取り直して、自慢気に言った。
「遊也も何かユニークスキルが付与されてると思うから、一度ステータスを見てみろよ。」
兄にそういわれて、遊也も自分のステータスを確認してみる。
「え~と、スキルは…。”ゲーマー”って書いてある…」
「なんだかスキルっぽくないよ!」
「こんなのただのゲーム好きってだけじゃん!」
と、遊也が不満げに漏らしている。
「まぁまぁ。文句を言う前に、どんな能力か一度試してみれば?」
「もしかしら、意外と使える能力かもよ?」
という、兄の言葉に、スキルの説明を確認する遊也。
「え~と、”ゲーム内のモンスターや武器を現実に召喚可能”って書いてある!」
「すげーじゃん!」
「試しに、何か出してみろよ。」
と、創也が促すと、
「じゃあ、せっかくだから食べ物にしようかなぁ~♪」
「ふわふわのパンケーキを召喚!」
遊也が”ゲーマー”を使用すると、バターとはちみつがとろりとかかった、あったかくてふわふわのパンケーキが目の前に現れた。
「本当に召喚したものが食べれるかどうかわからないのに、いきなり食べ物を召喚するとは…。さすが食い意地が張っているだけあるな。」
と、創也があきれているのには目もくれず、召喚したパンケーキをおいしく食べる遊也。
「だって。朝起きてお腹すいてたし、ゲームに出てくるふわふわのパンケーキを一度食べてみたかったんだもん。」
と言いながら、すでにパンケーキを一枚食べ終わろうとしていた。
あまりにおいしそうに食べる遊也を見ていた創也もたまらず、
「俺にも一口ちょーだい!」
と、勝手につまみ食い。
「食べるかどうか分からないって言ってたくせに…。」
と不貞腐れる、遊也。
「だって、これだけいい匂いがして、遊也がおいしそうに食べてるのを見てると、さすがに我慢できなくて…。」
「それに遊也が食べて問題なさそうだから、問題なく食べれるんだなって思って♪」
と、ニヤリと笑う創也。それを聞いた遊也が、
「人を毒見に使うな!」
と怒っている。
「ごめん、ごめん。」
「それよりも俺のスキルも見せてあげるから、プラスチックの板を召喚してくんない?」
「別にいいけど、何するの?」
と言いながら、遊也が”ゲーマー”を使って、プラスチックの板を召喚する。
そのプラスチックの板に向かって、創也が”クリエイター”を発動させる。
すると、プラスチックの板が、飛行ドローンへと変形し、宙に浮いている。
それを見て、
「すげー!」
と感嘆している遊也を横目に、
(試しに作ってみたものの、どうやって操縦するんだろう?)
(操縦するためのリモコンも作らないといけないかな?)
と考えていると、急にドローンが高く上がっていき、ギリギリ見える高さで停止した。
それを見た創也は、
(頭の中で思った通りに動かせるのか!これはすごいぞ!)
(じゃあ、さっそくドローンを使って、遊也をからかってやろう。)
と、遊也の周りをグルグルと飛ばし始めた。
「あ~もう!うっとおしいから、僕の周りを飛ばすのをやめてよ!」
「思った通りに操縦できるなんて、すごくね?」
創也は悪びれることもなく、遊也に答える。
それに腹を立てた遊也は、”ゲーマー”で銃を召喚して、ドローンを撃とうとするが、ドローンの動きが速すぎて、全く当たらない。
遊也がいい加減疲れてきたところで、ようやく十夜と愛が仲裁に入った。
「お前たちは、異世界に来てもやることは変わらないんだな…。」
「フリーズ!」
と、十夜が唱えると、ドローンが急に動きを止めて、そのまま落下した。
創也がもう一度動かそうと頭の中で命令しても、ドローンは微動だにしない。
創也はドローンを動かすのをきらめて、十夜が何をしたのかを聞くことにした。
「俺のドローンが止まったのって、父さんのスキル?」
「あぁ。父さんの魔法でドローンを止めたんだ。」
「「え!父さん、魔法が使えるの!」」
と兄弟がハモる。
「父さんのスキルは、”ウィザード”。つまり魔法使いだ。」
「「すげー!」」
と、またしても兄弟が同時に驚いている。
「魔法と言ってもスキルで魔法を呼び出して使用するから、MPの消費もないみたいだな。」
「それって完全にチートじゃない?無限に魔法が使えるじゃん。」
と、驚き半分、羨望の眼差し半分で、創也が答える。
「あら。今頃気付いたの?お父さんはいつでもすごいのよ♡」
そう言いながら、両肩に小鳥を乗せた愛が兄弟に話しかける。
「君ほどじゃないよ。本当にすごいのは愛の方だよ♡」
またまた二人の世界に入りそうな二人を創也が引き留める。
「母さんは、どんなスキルだったの?」
「私は”テイマー”よ。」
「いろんな植物や動物と会話ができるんだって。」
「ね?」
と言って、愛が両肩に乗っている小鳥に話しかけている。
「母さんもすごいスキルをもらったみたいだね。」
と遊也が創也に話しかけながら、
「朝ごはんまだだから、お腹が減ったよ~。」
「さっきパンケーキ食べたじゃん!」
「あれはデザートだから、朝ごはんじゃないの。」
「パンケーキは朝ごはん扱いできるじゃん!」
微笑ましい兄弟のやり取りを見ながら、
「じゃあ、みんなで朝ごはんにしましょうか?」
「これからのことは、朝ごはんを食べながら考えよう。」
と十夜と愛が兄弟を促して、みんなで小鳥たちにお別れを言って、自分たちの家に帰っていった。
(まさか家族全員で異世界に来ることになるなんて…。この異世界で家族を守っていくためには、この世界を知る必要があるな…。)
と真面目に考える十夜とは反対に、
(まさか家族全員で異世界に来るなんて…。でも、これからどんな生活が始まるのか楽しみね?)
と楽観的な考えの愛であった。
そうして、上野家の異世界生活の一日目が終わろうとしていた。




