表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ふぁみりぃ ~のんびり異世界生活~  作者: すぱ☆たま
第2章 隙間の庭

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
18/101

第15話 世界をつなぐ声

新しく進化した《ネイチャー・リンク》のおかげで、アインの日常はさらに賑やかになっていた。耳を澄ませば、風が「今日は東から栄養たっぷりの雨が降るよ。」と教えてくれ、土が「ここの水分、ばっちりだよ!」とアピールしてくる。


そんなある日の午後、アインが庭で洗濯物を干していると、世界のあらゆる自然のささやきの中に、ひときわ澄んだ、けれどどこか震えている小さな“声”が混ざっているのを感じ取った。


(……アイン……こっち……寂しい、よ……。)


「あら?――今の声、もしかして、リルちゃん?」


アインはハッとして手を止めると、すぐにリビングへと駆け込んだ。


「トーヤさん、ソーヤ、ユーヤ!ちょっとリルちゃんに呼ばれた気がするから、“隙間の庭”に行ってくるわね!」


「えっ、母さん一人で大丈夫か!?」というトーヤの心配の声を背に、アインは迷いのない足取りで、家の中に設置されたゲートをくぐり、“隙間の庭”へと足を踏み入れた。



境界の庭は、いつもと変わらない紫色の空が広がっていたが、アインが足を踏み入れた瞬間、庭全体の草木が嬉しそうに輝きを取り戻した。


「――呼んでくれた?」


奥から、リルが嬉しそうに、けれど少し驚いた表情でトコトコと駆け寄ってきた。

その姿は、以前に会った時よりも、ほんの少しだけ輪郭がはっきりとし、瑞々しい“色”を帯びているように見える。


「うん!アインの声がね、ここまで届いたの。だから、庭もびっくりして、アインを大歓迎してるんだよ!」


アインは驚きで目を丸くした。


「私の声が、この隙間の世界まで届いちゃったの? 凄い力ねぇ〜。」


「《ネイチャー・リンク》はね、ただ世界の声を聞くだけじゃないの。アインの優しい気持ちや声を、“世界そのものを伝わせて、どこまでも届ける力”でもあるんだよ。」


リルはそう説明すると、そっと自分の手首にある、ソーヤからもらった腕輪を見つめ、少しだけ寂しそうに視線を落とした。


「ねぇ、アイン……。私ね、ずっと一人だったの。この庭は世界と世界の隙間。誰も来ないし、誰も私なんて存在を知らない。私は、何のためにここにいるんだろうって、ずっと自分の意味を探してた。」


アインは何も言わず、リルの小さな手を、両手でそっと包み込んだ。

その手のひらは、少し冷たかったけれど、アインの体温が伝わると、じんわりと温かくなっていく。


「寂しかったのね、リルちゃん。よく頑張ったね。」


その絶対的な優しさに、リルの華奢な肩がかすかに震えた。


「うん……。みんながここに来て『大掃除』してくれて、ソーヤがこの綺麗な腕輪をくれて……。初めて、“誰かが私を見てくれた”って思えて、すごく嬉しかったの。でもね、さっき届いたアインの声は……それよりもっと、ずっと……あったかかったの。」


リルは顔を上げ、潤んだ真っ直ぐな瞳でアインを見つめた。


「アインの声はね……“世界そのもの”みたいなの。広くて、優しくて、全部を包み込んでくれる。聞いているだけで、胸がいっぱいになって、涙が出そうになるくらい、安心するの。」


アインは少し照れたように、ふふ、と上品に笑った。


「そんな大層なものじゃないわよ〜。私はただ、可愛いリルちゃんや、みんなと、もっと仲良く楽しく過ごしたいだけなのよ?」


「それが、一番すごいことなんだよ……。」


その瞬間、アインのステータス画面が再び静かに発光し、新たなアビリティの文字が刻まれた。


『《ネイチャー・リンク》派生権能:《ハーモナイズ(世界調和)》が解放されました。』

『効果:対象の存在概念の境界を安定させ、世界からの孤立・消滅を完全に防ぐ』


「アインは凄いね。世界にこんなに愛されてる。ねぇ……これからも、この庭に、私のところに、たくさん来てくれる?」


甘えるように見上げてくるリルを、アインはぎゅっと優しく抱きしめた。


「もちろんよ、リルちゃん。私たちはもう、お友達なんだから。いつでも、何度でも会いに来るわね。」


「……うん!」


紫色の空の下、ちりん、と腕輪の鈴が優しく鳴り響く。二人の絆が、世界を越えてしっかりと結ばれた、穏やかな午後のひとときだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ