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第76話 全国大会、決勝

 練習の日々は、静かに、だが確実に、過ぎていった。


 東鶴間高校野球部は、

 以前のチームではなかった。 


 声が増えた。

 

 動きが変わった。

 

 そして何より、

 全員の目が変わっていた。

 

 その日の練習が終わり、

 進藤竜也は、

 全員の前に立った。

 

 まだ、

 堂々としているとは言えない。

 

 だが、その声には、

 確かな意志があった。

 

「みんな、練習お疲れ様」

 

 部員たちの視線が、進藤に集まる。

 

 進藤は、一度、

 息を整えてから続けた。

 

「僕たちは……確実に前に進んでいる」

 

 その言葉に、誰も反論しなかった。


 誰もが、

 同じことを感じていたからだ。

 

「この調子で……頑張っていこう」

 

 少し照れくさそうに、だが確かに、

 キャプテンとしての言葉だった。

 

「はいっ!」

 

 部員たちの声が、

 グラウンドに響いた。

 

 進藤は、その声を聞き、

 わずかに微笑んだ。

 

 遠くから、

 その様子を見ていた九条咲は、

 小さく呟いた。

 

「進藤……キャプテンらしくなってきたわね」

 

 その言葉には、

 確かな安堵が込められていた。

 

 そして、さらに時は進み――

 

 東鶴間高校野球部の部員たちは、

 部室に集まっていた。

 

 テレビの前に、全員が座っている。

 

 監督の九条咲が、

 リモコンを手にしながら言った。

 

「みんな……これから、全国大会の決勝が始まる」

 

 部室の空気が、

 わずかに張り詰めた。

 

「私たちを倒した桜桜花高校と……東栄高校の試合よ」

 

 その名前を聞いた瞬間、

 部員たちの表情が変わった。

 

 桜桜花。

 

 そして――東栄。

 

 九条はテレビの電源を入れた。

 

 画面には、

 すでに球場の映像が映っていた。

 

 満員の観客。

 

 全国の頂点を決める舞台。

 

 そのグラウンドに、

 両校の選手たちが並んでいた。

 

 東栄高校の選手たち。

 

 その中に、

 一人の少年の姿があった。

 

 ショートの位置に立つ、一年生。

 

 佐藤秋一郎。

 

 すでに、東栄のレギュラーとして、

 そこに立っていた。

 

 高橋雪夜は、

 その姿を見つめていた。

 

 何も言わずに。

 

 ただ、見つめていた。

 

 かつて、共にバッテリーを組んだ、

 あの少年が――

 

 今、全国の頂点をかけて戦おうとしている。

 

 胸の奥に、

 言葉にならない感情が、

 静かに広がっていた。

 

 嬉しさ。

 

 悔しさ。

 

 誇り。

 

 そして――

 決意。

 

 桜桜花か。

 

 東栄か。

 

 どちらが勝つのか、

 誰にも分からない。

 

 だが、

 一つだけ確かなことがあった。

 

 あそこは、自分たちが目指す場所だということを。

 

 テレビの中で、審判が手を上げた。

 

 そして――

 桜桜花高校、対、東栄高校。

 

 全国大会決勝戦が、今、

 始まろうとしていた。

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