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第75話 東鶴間、再始動

 進藤竜也が新キャプテンとなってから、東鶴間高校野球部は、確かに変わり始めていた。 


 グラウンドには、

 以前と同じようで、

 どこか違う空気が流れていた。

 

 全体練習が終わり、

 部員たちは、それぞれの個別メニューに取り組んでいた。

 


 高柳龍二郎は、バットを握り、黙々と素振りを繰り返していた。

 

 頭の中には、一人の投手がいた。

 


 東栄高校――


 佐藤秋一郎。

 

 あの規格外の速球。

 

 あの圧倒的な存在感。

 

 その幻影を相手に、高柳は、何度も、何度も、バットを振り続けていた。

 


 ――次は、打つ。

 

 言葉にせずとも、

 その決意は明らかだった。

 


 一方、高橋雪夜は、グラウンドの端で、ノートを開いていた。

 

 隣には、マネージャーの夏目真衣と、監督の九条咲。

 

 部員一人ひとりの課題。


 必要な練習。

 

 成長のための道筋。

 

 三人で話し合いながら、

 練習メニューを組み立てていた。

 

 だが、それだけではない。

 

 雪夜自身もまた、バットを握り、ボールを受け、自分の弱さと向き合っていた。

 

 天宮真十郎は、

 グラウンドの外周を走っていた。

 

 一周、また一周。

 

 息が荒くなっても、足を止めない。

 

 ――連投できる投手になるために。

 

 あの日、投げられなかった悔しさを、忘れてはいなかった。

 

 新井元気は、打撃、守備、走塁。

 

 すべてを満遍なく鍛えていた。

 

 どれか一つでは足りない。

 

 すべてを高めなければ、

 あの場所には届かないと、

 理解していた。

 

 六条遊人は、

 バットを短く持ち、

 何度もボールに食らいついていた。

 

 目指すのは、

 桜桜花高校の市原圭一。

 

 粘り、カットし、決して簡単にアウトにならない打撃。

 

 自分に足りないものを、

 はっきりと見据えていた。

 

 進藤竜也は、

 グラブを握り、

 地面に落ちるボールを、

 何度も捕り続けていた。

 

 桜桜花戦での、あのエラー。

 

 忘れることはない。

 

 だからこそ、もう二度と、

 同じ過ちは繰り返さない。

 

 確実に。

 

 正確に。

 

 ただ、それだけを求めて、


 反復を続けていた。

 

 田中三郎は、

 マウンドで投球を繰り返していた。

 

 少しでも速く。

 

 少しでも鋭く。

 

 新しい変化球を、

 自分の武器にするために。

 

 中山太郎は、

 キャッチャーミットを構え、

 捕球練習を続けていた。

 

 正捕手として、

 チームを支えるために。

 

 マネージャーの夏目真衣は、そんな全員を、静かに見守り、支えていた。

 

 そして――

 

 監督の九条咲は、

 その光景を、

 遠くから見つめていた。

 

 何も言わず、ただ、見ていた。

 

 だが、その目には、

 確かな変化が映っていた。

 

 敗北は、終わりではない。

 

 敗北は、始まりだった。

 

 東鶴間高校野球部は、

 少しずつ、確実に、

 強くなり始めていた。

 

 そして、練習の日々は、静かに、だが確実に、過ぎていった。

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