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第69話 県大会決勝

 三年生が引退してから、何日もの時間が過ぎていた。


 季節は、確実に前へ進んでいた。


 そして――


 県大会は、決勝を迎えていた。


 東鶴間高校野球部の面々は、部室に集まっていた。


 誰かがつけたテレビの前に、自然と全員が集まっていた。


 画面の中では――


 桜桜花高校が、決勝を戦っていた。


 誰も口には出さなかった。


 だが、全員が思っていた。


 ――自分たちを、圧倒したチーム。


 その“続き”を見届けなければならないと。

 


 桜桜花高校の先発は、立塚尚文ではなかった。


 マウンドに立っていたのは――


 白田博樹。


 あの時、名前だけ聞かされた、“秘密兵器”。


 その秘密兵器は――


 本当に、秘密のままだった。


 白田の投球は、静かだった。


 だが、確実だった。


 速すぎるわけではない。


 だが、打たれない。


 ストレート、スライダー、カーブ、フォーク、シンカー――


 すべてが、打者の芯を外していた。


 気づけば――


 八回まで、無失点。


 東鶴間の誰かが、小さく呟いた。


「……すごい」


 その声は、誰のものだったのか分からなかった。

 


 打線もまた、圧倒的だった。


 一番、小金井一が出塁する。


 二番、市原圭一がつなぐ。


 そして――


 三番、斉藤秀一。


 斉藤の打球は、迷いがなかった。


 まるで、この舞台に立つことが当然であるかのように。


 その打線は、相手投手を容赦なく崩し、


 6点を奪っていた。

 


 そして九回。


 白田は、最後の打者を見据えていた。


 投げる。


 振る。


 空振り。


 ストライク。


 そして――


 三球目。


 低めのフォーク。


 打者のバットは、空を切った。


 ストライクスリー。


 試合終了。


 白田博樹、完封。


 桜桜花高校――


 県大会優勝。


 そして、全国大会出場。


 テレビの向こうでは、

 桜桜花高校の選手たちが、歓喜していた。


 斉藤秀一が、笑っていた。


 その笑顔は――


 あの日、東鶴間を打ち砕いた時と同じだった。

 


 部室の中は、静まり返っていた。


 誰も、何も言わなかった。


 その沈黙を破ったのは、

 六条遊人だった。


「僕たち……」


 テレビを見つめたまま、言った。


「桜桜花と、もっと後に当たっていたら……」


 少しだけ、言葉を止める。


「どこまで、行けたのかな……」 


 誰も、答えなかった。


 答えられなかった。


 あまりにも――


 実力差があった。

 


 テレビの中では、

 桜桜花高校の選手たちが、

 優勝旗を掲げていた。


 それは――


 今の東鶴間には、届かない場所だった。


 だが――


 誰も、目を逸らさなかった。


 その頂点を、

 しっかりと、見つめていた。


 それが――


 次に、自分たちが目指す場所だった。

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