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第6話 天宮真十郎

 高柳龍二郎と天宮真十郎を勧誘することになった高橋雪夜と夏目真衣は、まず天宮のもとを訪れることにした。


 放課後の教室。

 窓際の席に、一人で静かに本を読んでいる生徒がいた。


 ――天宮真十郎。


 雪夜は一歩前に出て、声をかけた。


「初めまして、天宮君。君に、少し話があるんだ」


 天宮は顔を上げ、雪夜の姿を見て目を細めた。


「君は……確か、高橋君だったかな」


「へぇ……僕のこと、知ってたのかい」


「まあね」


 天宮は淡々と言った。


「野球をしていた者なら、知らないわけがない。

 あの天才投手たちとバッテリーを組んで、全国大会を優勝に導いた捕手だからね」


 思わぬ言葉に、雪夜は小さく苦笑した。


「なら、話は早い」


 真っ直ぐ天宮を見る。


「野球部に、入ってくれないかな」


「……悪いけど」


 天宮は、間を置かずに答えた。


「僕は、野球をやりたくないんだ」


「どうしてなんだい」


 雪夜は食い下がった。


「あれだけの実力があるのに、どうして野球をやらないのかな」


 天宮は視線を落とし、しばらく黙っていたが、やがて静かに口を開いた。


「もう、野球はこりごりなんだ」


 その声には、疲れが滲んでいた。


「僕が投げた試合で負けた時……

 みんなに責められた。

 『お前のせいだ』って。

 ……もう、たくさんなんだ」


 雪夜は、すぐには言葉を返さなかった。


 少し考えてから、静かに言う。


「なら、こうしよう」


「……?」


「君が投げる試合は、全部、僕が捕手をする」


 天宮が顔を上げる。


「それで、打たれて負けたら……」


 雪夜は、はっきりと言った。


「僕のせいにしていいよ」


「……どうして、そこまで言うんだい」


 天宮の声が、わずかに揺れた。


 雪夜は、答える代わりに問い返した。


「君は……野球が好きかい」


「それは……」


 一瞬、言葉に詰まりながらも、天宮は答えた。


「……好き、だけど」


「なら、それが理由だよ」


 それだけ言って、雪夜は微笑んだ。


 天宮は何も言わず、再び視線を落とした。


「……少し、待ってもらえるかな」


「いいよ」


 雪夜は頷いた。


「いい返事を、待ってる」


 そう言って、雪夜と夏目は教室を後にした。


 廊下に出てから、夏目が小さく言った。


「雪夜君……いい返事、聞けそうだね」


「うん……」


 雪夜は前を見据えたまま答えた。


「次は、高柳君だ」

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