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第59話 桜桜花戦、三回表

 スコアは2対7となっていた。 


 三回表の攻撃に入る前、

 キャプテンの渡辺貴明は、ベンチで声を張った。


「みんな、気をつけろ。相手のキャッチャー、打席で何か囁いてくるぞ」


 だが――


「え? 俺、何も言われてないけど」

「俺もだぞ、キャプテン」

「ささやき? そんなのなかったぞ」


 返ってきたのは、戸惑いの声ばかりだった。


 渡辺は言葉に詰まった。


(……俺だけ、なのか?)


 混乱を抱えたまま、攻撃が始まる。


 一番・高柳龍二郎。


 立塚のストレートを鋭く捉え、打球は右中間を割る。


 二塁打。


 続く二番・高橋雪夜。


 こちらも迷いなく振り抜き、左中間への二塁打。


 高柳が生還し、3点目。


 流れは、確かにこちらに来ていた。


 三番・新井元気。


 レフト前へ運ぶヒット。


 雪夜がホームに滑り込み、4点目。


 ベンチが沸いた。


 ――まだ、いける。


 そう思わせるには、十分な反撃だった。


 そして、四番。


 渡辺貴明。


 打席に入った瞬間、背後から声が落ちてきた。


「よう、キャプテン。調子はどうだい」


 捕手・秋月小十郎だった。


 渡辺は顔をしかめた。


「……なんで、俺だけに囁くんだ」


「さあな。俺は、斉藤に言われたことをやってるだけだ」


 立塚尚文の初球。

 カーブ。


 渡辺は振ったが、空を切る。


 ワンストライク。


 マスクの奥から、再び声。


「次は――ストレートを投げさせるよ」


(……何を、言ってる)


 わかっている。

 ただの揺さぶりだ。


 それでも――耳に残る。


 二球目。

 低めのストレート。


 渡辺は、反射的に打ちにいった。


 打球はショート斉藤秀一の正面。


 二塁、一塁――


 ダブルプレー。


 その瞬間、秋月がわざと聞こえるように言った。


「はい、ツーアウト」


 渡辺は、何も言えずにベンチへ戻った。


(……くそ……)


 五番・中田大も倒れ、チェンジ。


 2点は取った。

 だが――


 何かを、確実に削られていた。


 三回裏。

 桜桜花高校の攻撃が、始まろうとしていた。

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