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第52話 四回戦前日

 部室には、いつもより重たい空気が漂っていた。


 四回戦前日。

 東鶴間高校野球部は、全員が部室に集められていた。


 マネージャーの夏目真衣が、一歩前に出る。


「みなさん……桜桜花高校の情報を共有します」


 その声に、私語は一切なくなった。

 誰もが、無意識に背筋を伸ばす。


「桜桜花の戦略は、三年生・斉藤秀一さんを中心としたチームです」


 その名前が出た瞬間、数人が息をのむ。


「斉藤さん以外にも実力者は揃っています。

 特に――一年生の市原圭一君。粘り強いカット打ちが持ち味です」


 夏目は資料に目を落とし、淡々と続けた。


「それから、二番手投手ながら“秘密兵器”と呼ばれている三年生、白田博樹さん。

 どの選手にも明確な長所があり、チームワークも非常に高い。

 ……正直、目立った弱点は見当たりません」


 部室の空気が、さらに重くなる。


 誰かが、喉を鳴らした。


 強い。

 間違いなく、ここまで戦ってきた相手とは“格”が違う。


 その沈黙を断ち切るように、監督の九条咲が口を開いた。


「天宮は出られない」


 短く、はっきりとした声だった。


「だがな……三回戦を勝ったのは事実だ」


 監督は、一人ひとりを見渡す。


「それは、誇っていい。

 明日は総力戦で行く。誰か一人に頼る試合じゃない」


 そして、静かに言った。


「恐れるな。

 お前たちは、ここまで来たんだ」


 その言葉に、胸の奥で何かが灯るのを、全員が感じていた。


 それでも――

 誰も口には出さなかったが、同じ思いが胸をよぎっていた。


 もしかしたら、明日がこのチームの最後の試合になるかもしれない。


 時間は、待ってくれない。


 やがて夜は更け、

 四回戦当日の朝が、容赦なく訪れるのだった。

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