第39話 初陣、結末
試合終了の声が響いた瞬間、
東鶴間の選手たちは、一斉にマウンドへ駆け出した。
「やったぞ……!」
「勝った……俺たち、勝ったんだ!」
「一回戦、突破だ……!」
誰かが叫び、
誰かが笑い、
誰かは言葉も出ず、ただ立ち尽くしていた。
高橋雪夜は、マウンドの真ん中で立ち尽くしていた。
次の瞬間、
仲間たちが一斉に抱きついてくる。
「雪夜!」
「ナイスピッチング!」
「お前が決めたんだ!」
その声を浴びながら、
ようやく実感が、胸の奥に落ちてきた。
――勝ったんだ。
それは、夢ではなかった。
ベンチの外れで、
夏目真衣はその光景を見つめていた。
「……よかったね。みんな」
誰に向けた言葉かは、自分でも分からなかった。
ただ、胸がいっぱいで、
それ以上の言葉は出てこなかった。
一方、ベンチの奥。
監督の九条咲は、静かにグラウンドを見渡していた。
「……本当に、勝ったんだな」
ぽつりと漏れた声は、
誰にも聞かれなかった。
(……約束、だったな)
高橋雪夜との、あの約束。
一回戦を勝ったら、
練習を見に行く。
指導をする。
もう、逃げない。
九条は、そっと目を閉じた。
今はまだ、
勝利の余韻に浸っている東鶴間ナイン。
笑い、
騒ぎ、
信じられない現実を、何度も確かめるように語り合っていた。
だが、その勝利は偶然ではない。
積み重ねた練習。
諦めなかった時間。
そして、誰かが誰かを信じた結果だ。
こうして、
東鶴間高校は一回戦を突破した。
――それは紛れもない現実だった。
選手たちは、それぞれの帰路につきながら、
同じ思いを胸に抱いていた。
本当に……
こんな日が、来るとは思わなかった。
その勝利の重みを、
一人ひとりが、静かに噛みしめながら。




