↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
318/323

第318話 三回戦、前半

 一回表。


 三回戦は、相手チームの攻撃から始まった。


 マウンドには、夏目海が立っている。


 左のオーバーハンド。


 東鶴間高校にとって、三回戦の先発を任された投手だった。


 捕手の高橋雪夜は、ミットを構える。


 初球。


 海は外角低めへストレートを投げ込んだ。


 球は伸びながら、雪夜のミットへ吸い込まれる。


「ストライク!」


 球審の声が響いた。


 相手の一番打者は、バットを動かさなかった。


 だが、その表情は少し変わっていた。


(速いな……130キロ後半といったところか)


 球場の表示には、138キロと出ていた。


 海の球は、ただ速いだけではない。


 伸びがあった。


 打者の手元で、思ったより落ちてこない。


 それが、海のストレートだった。


 二球目。


 雪夜はもう一度、外角低めに構える。


 海は頷き、同じコースへ投げ込んだ。


 相手打者は今度こそ振りにいく。


 だが、バットは空を切った。


 空振り。


 ツーストライク。


(速い……そして、伸びもあるのか……)


 打者は、打席の中で海の球を警戒した。


 三球目。


 雪夜は高めに構えた。


 海は大きく腕を振る。


 高めのストレート。


 相手打者は反応した。


 だが、伸びる球にバットが追いつかない。


 空振り三振。


 一番打者を、三球で打ち取った。


 ベンチから声が飛ぶ。


「いいぞ、海!」


 海は大きく喜ぶことはしなかった。


 しかし、初回の先頭打者を抑えたことで、少しだけ表情が落ち着いた。


 続く二番打者。


 雪夜はストレートを中心にしながら、カーブを混ぜた。


 タイミングを外された打者は、力のない内野ゴロを打つ。


 セカンドの高柳龍二郎が処理し、ツーアウト。


 三番打者には、フォークを見せた。


 ストレートを意識していた打者は、低めに落ちる球に手を出し、空振りする。


 最後は外角のストレートで詰まらせた。


 ショートゴロ。


 六条遊人が落ち着いて捕り、一塁へ送球。


 スリーアウト。


 一回表、夏目海は相手打線を無失点に抑えた。


 そして、一回裏。


 東鶴間高校の攻撃が始まる。


 一番、セカンド、高柳龍二郎。


 龍二郎は左打席に入った。


 相手投手の球を見極め、甘く入った球を逃さない。


 鋭い打球が外野を破る。


 龍二郎は一塁を蹴り、二塁へ向かった。


 悠々セーフ。


 ツーベースヒット。


 東鶴間高校は、初回から得点圏にランナーを置いた。


 二番、キャッチャー、高橋雪夜。


 雪夜は左打席に入る。


 ここで、雪夜は送りバントを選択した。


 確実に龍二郎を三塁へ進める。


 相手投手が投げる。


 雪夜は落ち着いてバットを出し、三塁方向へ転がした。


 サードが処理し、一塁へ送球。


 雪夜はアウト。


 だが、龍二郎は三塁へ進んだ。


 ワンアウト、ランナー三塁。


 三番、センター、新井元気。


 元気は左打席に入った。


「ここで返すでやんす」


 相手投手のストレート。


 元気はそれをしっかりと捉えた。


 打球は外野へ伸びる。


 センターの頭を越える。


 三塁ランナーの龍二郎がホームへ帰る。


 東鶴間高校、先制。


 0対1。


 元気は二塁へ到達した。


 ワンアウト、ランナー二塁。


 四番、ライト、天宮真十郎。


 真十郎は右打席に入った。


 相手バッテリーは警戒していた。


 一点を取られ、なおも得点圏。


 ここで四番を迎えるのは、嫌な場面だった。


 真十郎は甘い球を逃さなかった。


 鋭い打球が一二塁間を抜ける。


 ライト前ヒット。


 二塁ランナーの元気は三塁で止まる。


 ワンアウト、ランナー一塁三塁。


 五番、ファースト、浮田総二。


 総二は左打席に入る。


 ここで最低限の仕事をする。


 その意識が、総二にはあった。


 相手投手が投げる。


 総二は外野へ打ち上げた。


 センターフライ。


 深さは十分だった。


 三塁ランナーの元気がタッチアップの準備をする。


 センターが捕球した瞬間、元気はスタートを切った。


 送球が返ってくる。


 だが、間に合わない。


 元気がホームベースを踏む。


 二点目。


 東鶴間高校は、初回に二点を先制した。


 ツーアウト、ランナー一塁。


 六番、サード、竹田栄司。


 栄司は右打席に入る。


 相手投手のストレートを狙い、強く振り抜いた。


 打球はレフト前へ抜ける。


 一塁ランナーの真十郎は二塁へ進む。


 ツーアウト、ランナー一塁二塁。


 七番、ピッチャー、夏目海。


 海は左打席に入った。


 投手としては初回を抑えた。


 打席でも何とかしたい気持ちはあった。


 だが、相手投手も簡単には打たせない。


 最後は低めの変化球に手が出た。


 空振り三振。


 スリーアウトチェンジ。


 一回裏、東鶴間高校は二点を先制した。


 0対2。


 先発の海にとって、大きな援護点だった。


 二回表。


 海の投球は、さらに勢いを増した。


 ストレートは130キロ後半を計測し、伸びがある。


 相手打者は、振っても空振りし、当てても差し込まれる。


 雪夜は、そのストレートを軸に配球を組み立てた。


 時にはカーブでタイミングを外す。


 時にはフォークを低めに落とす。


 そして、スクリューも見せる。


 相手打線は、海の球に思うように対応できなかった。


 二回表も無安打。


 三回表も無安打。


 夏目海は、三回まで相手打線を抑え込んだ。


 一方、東鶴間高校の打線も少しずつ点を重ねていた。


 龍二郎が出塁し、雪夜がつなぐ。


 元気が返し、真十郎がチャンスを広げる。


 浮田と竹田も打線を支えた。


 早田は足で揺さぶり、遊人も粘って球数を投げさせる。


 三回裏が終わった時点で、スコアは0対4。


 東鶴間高校がリードしていた。


 ここまでは、東鶴間のペースだった。


 だが、相手チームも黙ってはいなかった。


 四回表の攻撃前。


 相手チームの監督は、ベンチで選手たちを集めていた。


「お前たち……二巡目となる」


 選手たちは監督を見る。


「ここから相手を揺さぶっていく」


 監督の声には、はっきりとした狙いがあった。


「出塁したら、盗塁を仕掛けてこい」


 相手選手たちの表情が変わる。


 監督は続けた。


「データが本当なら……三盗も成功するだろう」


 その言葉には、東鶴間高校の弱点を突く意図があった。


 捕手、高橋雪夜。


 リードは上手い。


 配球も読みにくい。


 だが、肩が弱い。


 それが相手チームの調べてきた情報だった。


 相手チームは、そこを狙うことに決めた。


 四回表。


 相手チームの反撃が始まろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。