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314/323

第314話 二回戦、中盤

 二回表。


 白石広志は、再びマウンドへ上がった。


 初回に二点の援護をもらった。


 だが、油断することはない。


 白石はロージンバッグに手を伸ばし、指先を整える。


 捕手の高橋雪夜は、冷静にサインを出した。


 白石のストレートは速くない。


 球速は最速125キロ。


 力で押し切る投手ではない。


 だが、白石には武器がある。


 スライダー。


 シュート。


 シンカー。


 そして、途中までカーブに見える変化球。


 さらに、サイドハンド独特の角度。


 雪夜はそれらを組み合わせ、相手打者の狙いを外していった。


 内角にストレートを見せる。


 外角へスライダーを逃がす。


 シュートで詰まらせる。


 シンカーで低めへ沈める。


 そして、カーブに見える変化球でタイミングをずらす。


 相手打者は、白石の球速だけを見れば打てると思った。


 しかし、実際に打席に立つと簡単ではなかった。


 同じフォームから、違う球が来る。


 同じコースに、何度も投げ込まれる。


 カーブだと思った球が、カーブではない。


 ストレートだと思った球が、微妙に動く。


 打者は的を絞れない。


 その間に、雪夜と白石のバッテリーはアウトを重ねていった。


 三回。


 四回。


 五回。


 相手高校は何とか突破口を探そうとした。


 だが、白石は大きく崩れない。


 速球で圧倒するのではなく、打たせて取る。


 守備陣もそれを支えた。


 高柳龍二郎はセカンドで安定した守備を見せる。


 六条遊人はショートで確実にアウトを取る。


 竹田栄司もサードで懸命に打球に食らいついた。


 外野では、新井元気、早田士郎、天宮真十郎が白石を支えた。


 打線も止まらなかった。


 龍二郎が出塁し、雪夜がつなぐ。


 元気が返す。


 真十郎が状況に応じて打つ。


 浮田、竹田も打線を切らさない。


 早田も足で揺さぶり、遊人も前に飛ばす打撃を見せる。


 東鶴間高校は、一点ずつ確実に積み重ねていった。


 大量点を一気に奪うというより、相手の隙を逃さず、じわじわと差を広げる攻撃だった。


 そして六回裏が終わった時点で、スコアは0対8。


 東鶴間高校が大きくリードしていた。


 七回表。


 ここで七点差のまま終われば、七回コールドとなる。


 マウンドには、まだ白石広志が立っていた。


 白石は帽子のつばを軽く直す。


 ここまで無失点。


 だが、疲れがないわけではない。


 それでも、あと一回。


 この回を抑えれば、試合が終わる。


 ベンチでは、夏目海が静かに試合を見つめていた。


 もし白石が崩れれば、自分が投げる。


 その準備はできている。


 捕手の雪夜は、マスク越しに白石を見る。


 無理をさせるわけにはいかない。


 だが、白石の目はまだ死んでいなかった。


 東鶴間高校、0対8でリード。


 二回戦の勝利まで、あと三つのアウト。


 白石広志と高橋雪夜のバッテリーは、最後の七回表へ向かおうとしていた。

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