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307/312

第307話 一回戦、一回裏

 一番、セカンド、高柳龍二郎。


 龍二郎は左打席に入った。


 相手投手の初球を見送る。


 二球目。


 外角のストレート。


 龍二郎は逆らわずにバットを出した。


 鋭い打球が三遊間を抜ける。


 レフト前ヒット。


 東鶴間高校は、先頭打者が出塁した。


 続く二番、キャッチャー、高橋雪夜。


 雪夜は左打席に入る前から、すでに役割を決めていた。


 送りバント。


 一点を確実に取りにいく。


 相手投手が投げる。


 雪夜はバットを寝かせ、丁寧に転がした。


 打球は一塁線へ。


 一塁手が処理し、雪夜はアウト。


 だが、龍二郎は二塁へ進んだ。


 ワンアウト、ランナー二塁。


 三番、センター、新井元気。


 元気は左打席に入る。


「ここで打つでやんす」


 元気は短く呟いた。


 相手投手のストレートを、しっかりと捉える。


 打球はセンター前へ。


 二塁ランナーの龍二郎は三塁で止まる。


 ワンアウト、ランナー一塁三塁。


 東鶴間高校に先制のチャンスが訪れた。


 四番、ライト、天宮真十郎。


 今日は投手ではなく、四番打者としての出場だった。


 真十郎は右打席に入る。


 相手投手も、ここで簡単には打たせられない。


 初球は外角へ。


 真十郎は見送る。


 二球目。


 真十郎は高めの球をしっかりと外野へ運んだ。


 打球はライトへ上がる。


 深い。


 三塁ランナーの龍二郎がタッチアップの準備をする。


 ライトが捕球した瞬間、龍二郎はスタートを切った。


 送球が返ってくる。


 だが、間に合わない。


 龍二郎がホームベースを踏む。


 東鶴間高校、先制。


 0対1。


 真十郎は犠牲フライで、きっちり四番の役割を果たした。


 なおもツーアウト、ランナー一塁。


 五番、ファースト、浮田総二。


 総二は左打席に入る。


 相手投手は、ここで流れを切りたかった。


 だが、総二は粘った。


 外角の変化球を見極め、甘く入った球を逆方向へ運ぶ。


 レフト前ヒット。


 ツーアウト、ランナー一塁二塁。


 六番、サード、竹田栄司。


 栄司はバットを強く握った。


 守備では不安を抱えている。


 それでも、打撃では自分の力を見せたい。


 相手投手が投げたストレート。


 栄司は迷わず振り抜いた。


 打球は三遊間を破る。


 レフト前ヒット。


 二塁ランナーの元気は三塁で止まる。


 ツーアウト満塁。


 東鶴間高校は、なおもチャンスを広げた。


 七番、ピッチャー、伯方歩夢。


 歩夢は左打席に入った。


 相手投手は、わずかに表情を引き締める。


(ピッチャー相手に、これ以上は打たせん)


 そう思っていた。


 だが、歩夢は投手である前に、東鶴間高校の打者でもある。


 ミート能力には自信があった。


 相手投手がストレートを投げ込む。


 歩夢は無理に引っ張らなかった。


 逆方向へ、軽く合わせる。


 打球は三塁手の横を抜け、レフト前へ転がった。


 三塁ランナーの元気がホームへ帰る。


 二点目。


 東鶴間高校は、一回裏で二点を先制した。


 なおもツーアウト満塁。


 八番、レフト、早田士郎。


 早田は右打席に入る。


 ベンチから、雪夜が見つめていた。


 早田は深呼吸をする。


 足を生かすために練習してきた。


 バント練習も、何度も繰り返してきた。


 初球。


 早田は、いきなりセーフティバントを仕掛けた。


 相手バッテリーは一瞬遅れる。


 ボールは三塁線へ転がる。


 フェアゾーンに乗った。


 早田は全力で一塁へ走る。


 相手高校のサードが前へ突っ込んでくる。


 素早く捕球し、急いで一塁へ送球。


 早田はヘッドスライディングするような勢いで一塁へ駆け込んだ。


 判定は、アウト。


 スリーアウトチェンジ。


 早田は悔しそうに拳を握った。


 だが、雪夜はベンチで静かに頷いていた。


 アウトにはなった。


 けれど、バントをフェアゾーンに乗せた。


 相手守備を慌てさせた。


 それだけでも、練習の成果は出ていた。


 一回裏。


 東鶴間高校は二点を先制した。


 試合は、0対2。


 初回から打線がつながり、伯方歩夢にも援護点が入った。


 ベンチに戻ってきた歩夢に、雪夜はミットを持って近づく。


「歩夢、二点入ったよ」


「はい」


 歩夢は静かに頷いた。


「でも、ここからですね」


「うん」


 雪夜も頷く。


「ここからだよ」


 初回で二点を先制した東鶴間高校。


 そして、ここから伯方歩夢と高橋雪夜のバッテリーが、本領を発揮することになる。

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