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302/307

第302話 一回戦、発表

部室では、県大会一回戦のスターティングメンバー発表が始まろうとしていた。


 東鶴間高校野球部の面々は、静かに監督の九条咲を見ている。


 いつもの部室。


 いつものメンバー。


 だが、空気はいつもより張り詰めていた。


 これから発表されるのは、ただの練習試合のオーダーではない。


 高橋雪夜たち三年生にとって、最後の県大会。


 その初戦のスターティングメンバーだった。


 咲はホワイトボードの前に立ち、部員たちを見渡した。


「みんな……これから、一回戦のスタメン発表をする」


 誰も口を挟まなかった。


 全員が、咲の言葉を待っていた。


 咲は小さく頷く。


「では……発表する」


 そして、ホワイトボードにペンを走らせながら、スタメンを読み上げていった。


「一番、セカンド、高柳龍二郎」


 龍二郎は静かに頷いた。


 東鶴間高校最強打者。


 その龍二郎が、一番打者として試合の流れを作る。


「二番、キャッチャー、高橋雪夜」


 雪夜は背筋を伸ばした。


 正捕手として、そしてキャプテンとして、初戦からマスクを被る。


 肩の弱さという不安はある。


 それでも、自分が受けるしかない。


 雪夜はその覚悟を胸に刻んだ。


「三番、センター、新井元気」


「はいでやんす」


 元気はいつもより少し真面目な声で返事をした。


 ミート能力と守備力。


 そして、チームを明るくする存在。


 三番としての役割は大きい。


「四番、ライト、天宮真十郎」


 真十郎が静かに頷く。


 この試合では投手ではなく、四番ライトとして出場する。


 エースを温存しながら、その打撃力を生かす形だった。


「五番、ファースト、浮田総二」


「はい」


 浮田は落ち着いた声で返事をする。


 ミート能力の高い一年生から、今は二年生となった打者。


 中軸の後ろで、確実にチャンスをつなぐ役割がある。


「六番、サード、竹田栄司」


 栄司は少しだけ表情を引き締めた。


 三盗封じの練習。


 守備への不安。


 外野手転向の申し出。


 いろいろなことがあった。


 それでも、咲は栄司をサードで起用した。


 雪夜も、うちのサードは栄司だと言ってくれた。


 その言葉を思い出しながら、栄司は返事をした。


「はいっ」


「七番、ピッチャー、伯方歩夢」


 歩夢は一瞬、目を見開いた。


 そして、すぐに真剣な表情になる。


 城南ヶ丘戦で最後の投手になった悔しさ。


 シンカー習得への挑戦。


 投げられない時間の練習。


 そのすべてが、歩夢の中にあった。


 初戦の先発。


 その役割を、咲は歩夢に託した。


「はい」


 歩夢は、はっきりと返事をした。


「八番、レフト、早田士郎」


 早田は少し驚いたように顔を上げた。


 だが、すぐに返事をする。


「はいっ」


 足を武器にするために、バント練習と盗塁練習を続けてきた。


 外野手として、そして足を使える選手として、初戦のスタメンに名を連ねた。


「九番、ショート、六条遊人」


 遊人は落ち着いて頷いた。


 守備の要。


 そして、最近は打撃にも光が見え始めている。


 九番に置かれたとしても、その存在感は小さくない。


 咲は全員を見渡した。


「以上が、一回戦のスタメンとなる」


 部室の中に、少しだけ緊張が残った。


 スタメンに入った者。


 控えに回った者。


 それぞれが、自分の役割を受け止めていた。

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