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第30話 東栄戦、その後
練習試合が終わり、
東栄高校野球部のメンバーが、バスに乗り込んでいた。
その傍らで、
佐藤秋一郎と高橋雪夜は並んで立っていた。
「僕以外をアウトにしたとはね」
佐藤が、穏やかに言う。
「さすが雪夜だよ。
腕は、落ちてないみたいだね」
「当たり前だろ」
雪夜は、ぶっきらぼうに返した。
「お前のところ、全員一年生なんだからな」
「全国から集めた人材だよ」
佐藤は、淡々と言う。
「それを抑えた意味……
分かってるだろ?」
雪夜は、答えなかった。
代わりに、別の話題を投げる。
「それよりさ。
真ん中にストレート、二球連続って……
舐めてたのか?」
「舐めてないよ」
佐藤は、少しだけ笑った。
「僕の球、速くなってただろ?」
「まあ……
あの頃よりはな」
「それでも、君には打たれたけどね」
「真ん中に来るって分かってたら、
そりゃ打てるさ」
「普通は打てない」
佐藤は、きっぱりと言った。
「君の後、
みんな三振してたろ?」
「ああ……そうだったな」
一瞬、沈黙が落ちる。
そして、佐藤が口を開いた。
「ねえ……雪夜」
「なんだよ、改まって」
佐藤は、少しだけ視線を逸らし――
それでも、はっきりと言った。
「……うちに来ないか」
「東栄高校に」
その瞬間。
風の音が、
本当に止んだような気がした。




