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第28話 東栄、五回表

 五回表、東栄の攻撃。


 打席に向かう前、鈴本次郎が佐藤秋一郎に声をかけた。


「佐藤。あの投手の球、どうだった?」


 佐藤は少し考え、静かに答える。


「いい球だよ。正直に言うと……

 今の段階なら、僕以外は打てないと思う」


 その言葉に、東栄ナインの視線が集まった。


「勘違いしないでほしい。

 あの投手が特別すごい訳じゃない」


 佐藤は続ける。


「ただ――

 打てない理由が、ちゃんとある」


「無理だって言うのか? 俺でも?」


 鈴本の問いに、佐藤ははっきり答えた。


「普通にいったら……無理だね」


「根拠は?」


「それを説明すると、

 僕がこの試合を頼んだ理由――

 みんなが気乗りしなかったくせに

 “格下相手の情報がほしい”って話になるけど?」


「格下だろ。実際、13点取ってる」


「でも、あの投手に代わってから、点は取れてない」


 その一言で、空気が変わった。


「じゃあ、俺たちが点を取ればいいだけだろう」


「……出来ればね」


 佐藤は、それ以上は何も言わなかった。


 情報は与えない。


 それが、佐藤秋一郎だった。


 鈴本は打席に立つ。


 天宮の内角低めスライダー。


 引っ張るが、セカンドフライ。


 ワンアウト。


 六番・島田啓示はショートフライ。


 七番・金森公士郎はピッチャーフライ。


 ――三者凡退。


 佐藤の言葉どおりだった。


 五回裏。


 この回を抑えれば、コールド。


 佐藤は、副監督・竹村中正のもとへ向かった。


「監督。僕を投げさせてください」


「駄目だ。格下相手に、お前を投げさせる意味はない」


「この回で終わらせます」


「駄目だ」


「……コールドにしなくて、いいんですか?」


「なんだと」


「次の一番からの攻撃、

 僕以外だったら、打たれます」


 東栄ナインが、息をのむ。


「おい佐藤。言い過ぎだろ」


 山元太郎が言う。


「渡辺も、点は取られてるだろう」


 佐藤は、ただ事実を言っていた。


 渡辺義明は、視線を下に向けていた。


 竹村は、佐藤をじっと見た。


「……ほう。お前なら抑えると?」


「そういうことです」


「なら投げろ。ただし――

 点を取られたら、分かっているだろうな」


「ええ。失点しなければいいんですよね」


 交代が告げられる。


 ピッチャー、佐藤秋一郎。

 ショート、三木翔太。


 その瞬間――


 東鶴間ナインは、悟った。


 本物が来る。

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