第243話 全国大会、準準決勝
練習の日々が過ぎていった。
東鶴間高校野球部の面々は、少しずつではあるが、確かに力をつけていた。
高橋雪夜はキャプテンとして、チーム全体を見るようになった。
六条遊人は副キャプテンとして、雪夜を支えながら自分の打撃にも向き合っていた。
高柳龍二郎は、強敵を想定して素振りを続けていた。
天宮真十郎は、エースとして投げ抜く体力をつけようとしていた。
一年生たちも、それぞれの課題に向き合っていた。
そんなある日。
部室のテレビには、全国大会準々決勝の中継が映っていた。
城南ヶ丘学園高校対中月大学付属高校。
東鶴間高校を県大会準々決勝で破り、そのまま県大会を制した城南ヶ丘学園高校。
その城南ヶ丘が、全国大会でどこまで勝ち上がるのか。
東鶴間の選手たちは、どうしても気になっていた。
自分たちを倒した相手。
桐原礼二。
若田部安高。
滝橋蓮次郎。
六本遊希。
県大会で東鶴間の前に立ちはだかった選手たちが、全国の舞台で戦っている。
それは悔しくもあり、誇らしくもあった。
だが、その相手は簡単な高校ではなかった。
中月大学付属高校。
その先発投手は、桜川守。
佐藤秋一郎たちの世代で、佐藤秋一郎、一ノ瀬京次郎、鈴木草助に次ぐ存在。
世代ナンバー4。
そう呼ばれている投手だった。
部室でテレビを見ていた六条遊人が、隣に座る雪夜へ声をかけた。
「雪夜」
「うん?」
「どちらが勝つと思うかい」
雪夜はテレビ画面を見つめたまま、少しだけ考えた。
画面には、試合前の城南ヶ丘ナインが映っている。
桐原礼二は真剣な表情でベンチ前に立っていた。
若田部安高は防具を確認している。
滝橋蓮次郎も、静かにグラウンドを見つめていた。
県大会を制したチーム。
東鶴間を倒したチーム。
その強さは、雪夜もよく知っている。
だが――。
「僕の予想なら……中月大学付属高校が勝つと思うよ」
雪夜の言葉に、六条は驚いたように目を開いた。
「えっ……城南ヶ丘じゃなくてかい?」
「うん」
雪夜は静かに頷く。
「中月には……世代ナンバー4の桜川守がいるから」
六条はテレビに映る中月大学付属高校の選手たちを見る。
その中に、桜川守の姿があった。
落ち着いた表情。
無駄のない立ち姿。
画面越しでも、普通の投手ではないことが分かった。
「そんなに、すごいの……世代ナンバー4は」
六条が尋ねる。
雪夜は少しだけ息を吐いた。
「もし、本当に世代ナンバー4なら……とんでもない投手になると思うよ」
東栄高校の佐藤秋一郎。
呉稲見高校の一ノ瀬京次郎。
春日野学園高校の鈴木草助。
そして、中月大学付属高校の桜川守。
その名前が並ぶ時点で、桜川がどれほどの投手なのかは想像できた。
城南ヶ丘は強い。
県大会王者として、全国大会でも勝ち上がってきた。
だが、全国にはさらに上がいる。
自分たちが届かなかった城南ヶ丘ですら、簡単には勝てない相手がいる。
その現実が、部室の空気を少し重くした。
高柳龍二郎も、画面を見ながら腕を組んでいた。
天宮真十郎は、桜川守の投球フォームを真剣に見ていた。
新井元気も、いつもの明るさを少し抑えてテレビに集中していた。
浮田総二たち一年生も、食い入るように画面を見つめていた。
自分たちを倒した城南ヶ丘学園高校。
そして、世代ナンバー4と呼ばれる桜川守を擁する中月大学付属高校。
全国大会準々決勝。
その試合が、今まさに始まろうとしていた。




