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230/320

第230話 城南ヶ丘対桜桜花

 県大会決勝。


 城南ヶ丘学園高校対桜桜花高校。


 東鶴間高校が越えられなかった二つの壁が、県大会の頂点をかけてぶつかっていた。


 だが、試合は予想以上の投手戦となっていた。


 城南ヶ丘学園高校の先発は、桐原礼二。


 準決勝で滝橋蓮次郎が完投したことで、決勝まで休むことができた城南ヶ丘のエース。


 その礼二は、立ち上がりから桜桜花打線を抑え続けていた。


 一方、桜桜花高校の先発は、立塚尚文。


 球速145キロの直球。


 そして、磨き上げられたスライダーとカーブ。


 準決勝で温存されていた三年生投手は、城南ヶ丘打線を相手に一歩も引かなかった。


 礼二が抑える。


 立塚も抑える。


 両校ともヒットは出る。


 だが、得点にはならない。


 ランナーを背負っても、あと一本を許さない。


 負ければ、そこで三年生の高校野球人生は終わる。


 桐原礼二も、立塚尚文も、それを分かっていた。


 だからこそ、簡単には崩れなかった。


 そんな展開が七回まで続いた。


 スコアは0対0。


 県大会決勝にふさわしい、息の詰まるような試合だった。


 そして八回表。


 城南ヶ丘学園高校の攻撃。


 打席には五番、花枝正臣。


 東鶴間高校との準々決勝で、七回コールドを決める長打を放った打者だった。


 マウンドの立塚尚文は、全力で投げ続けていた。


 ここまで何度もピンチをしのいできた。


 城南ヶ丘打線を相手に、無失点で踏ん張ってきた。


 だが、疲労は確実にたまっていた。


 腕は重い。


 足にも疲れが出ている。


 それでも、立塚は投げるしかなかった。


 桜桜花の三年生として。


 エースとして。


 この決勝を、簡単に渡すわけにはいかなかった。


 しかし――。


 わずかに甘くなった球を、花枝は見逃さなかった。


 力任せではない。


 狙いすました一振りだった。


 打球は高く上がる。


 左中間。


 外野手が追う。


 だが、届かない。


 打球はフェンスを越えた。


 ホームラン。


 城南ヶ丘学園高校、ついに先制。


 スコアは1対0。


 試合が動いた。


 城南ヶ丘ベンチが沸き上がる。


 桐原礼二もベンチから立ち上がり、花枝を迎えた。


 東鶴間戦でも試合を決めた花枝正臣が、決勝でも大きな一打を放った。


 だが、立塚尚文は崩れなかった。


 ホームランを浴びた。


 先制点を許した。


 それでも、マウンドで顔を伏せることはなかった。


 立塚は帽子を被り直し、次の打者へ向き直る。


 ここで崩れれば、試合が決まってしまう。


 それだけは避けなければならない。


 立塚は残った力を振り絞り、城南ヶ丘打線を抑えた。


 追加点は許さない。


 一点で止める。


 その意地が、桜桜花をまだ試合の中に残していた。


 八回表が終わり、スコアは1対0。


 城南ヶ丘が先制。


 だが、勝負はまだ分からない。


 試合は終盤戦へ入っていた。

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