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第23話 東鶴間、一回裏

 高柳龍二郎の打席を、東栄バッテリーは正直、軽く見ていた。


 ――格下。

 ――弱小校。

 ――勢いだけの一発はない。


 そんな油断が、わずかにあった。


 マウンドの山元太郎が投じたのは、

 低めのストレート。


 様子見の一球だった。


 ――だが。


 高柳は、一切迷わなかった。


 踏み込み、

 体重を乗せ、

 フルスイング。


 乾いた打球音が、グラウンドに響いた。


 ボールは一直線に、ライト方向へ伸びていく。


 ――入った。


 初回先頭打者ホームラン。


 沈み切っていた東鶴間ナインが、一斉に湧いた。


「よっしゃあ!」


「高柳ぃ!」


 ベンチが、久しぶりに明るくなる。


 遊撃の位置で、佐藤秋一郎が小さく呟いた。


「……へぇ。やるじゃないか」


 捕手の小野冬誠は、すぐに山元に声をかける。


「気にするな。たまたまだろ」


 山元も頷き、表情を変えなかった。


 まだ、1点。

 それだけだ。


 続く二番、高橋雪夜。


 打席に向かう前、ベンチで小さく言った。


「……よし。続くぞ」


 左打席に入り、構える。


 山元の投球は、内角のストレート。


 雪夜は、コンパクトに振り抜いた。


 打球は、左中間へ。


 ――二塁打。


 スタンドが、どよめく。


 二塁ベース上で、佐藤が声をかけてきた。


「相変わらず打つねぇ、雪夜」


 だが、雪夜は――

 やはり、何も答えなかった。


 視線も向けない。


 三番、新井元気。


「よーしっ、打つぞぉ!」


 そう言って、左打席に立つ。


 山元の投球は、外角低めのストレート。


 新井は、逆らわずに流した。


 打球は、三遊間を抜けて――

 レフト前ヒット。


 ランナー一塁、三塁。


 ベンチの空気が、一気に変わる。


 四番、天宮真十郎。


 右打席に入る。


 ここで、山元は変化球を選んだ。


 低めのカーブ。


 天宮は体勢を崩されながらも、

 必死にバットを合わせた。


 打球は、レフトへ。


 ――犠牲フライ。


 三塁走者が生還し、

 二点目。


 東鶴間ベンチが、再び沸く。


 その様子を見て、

 東栄ナインの中に、戸惑いの色が浮かんだ。


 ――こいつら……

 ――本当に、弱小校なのか?


 だが、そこは東栄だった。


 五番の渡辺貴明、六番の中田大を、きっちりアウトに取る。


 反撃は、ここまで。


 それでも――

 2点。


 一年生中心とはいえ、

 あの東栄高校から、確かに奪った2点だった。


 そして――

 二回表。


 再び、東栄高校の攻撃が始まる。

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