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第216話 城南ヶ丘戦、六回裏

 六回裏。


 城南ヶ丘学園高校の攻撃。


 東鶴間高校のマウンドには、三番手として伯方歩夢が上がっていた。


 田中三郎。


 夏目海。


 そして、伯方歩夢。


 東鶴間は投手をつぎ込み、何とかこの試合を繋ごうとしていた。


 打席には六番、六本遊希。


 左打席へ入る遊希を見ながら、捕手の中山太郎はミットを構えた。


(粘り打ち……カットマン……どうすれば……)


 遊希は簡単には終わらない。


 それはもう、嫌というほど分かっていた。


 伯方の初球。


 遊希は見逃す。


 二球目。


 ファウル。


 三球目。


 またファウル。


 中山は配球を変える。


 伯方も緩急を使う。


 だが、遊希は食らいついてくる。


 際どい球は見逃し、打てる球はカットする。


 七球目まで粘られた。


 そして八球目。


 伯方の球は、わずかに外れた。


「ボール、フォア!」


 フォアボール。


 ノーアウト、一塁。


 中山は小さく息を吐いた。


 また、先頭打者を出してしまった。


 七番、牧歳数。


 左打席へ入る牧に対し、中山は伯方の持ち味を活かそうとした。


 初球。


 内角へ高速スライダー。


 鋭く曲がる球に、牧は手を出さない。


「ストライク!」


 ワンストライク。


 二球目。


 外角高めのストレート。


 これは外れてボール。


 三球目。


 内角低めのスローカーブ。


 高速スライダーを見せた後に、緩い球でタイミングを外す。


 緩急。


 伯方歩夢の得意な組み立てだった。


 だが――。


 牧はそのスローカーブを捉えた。


 打球はライト前へ飛ぶ。


 一塁ランナーの遊希は二塁へ進む。


 ノーアウト、ランナー二塁一塁。


 中山は歯を食いしばった。


(スローカーブまで打つのかよ……)


 城南ヶ丘は、やはり甘くなかった。


 八番、山野翔太。


 山野は迷わず送りバントを決めた。


 ワンアウト、ランナー三塁二塁。


 確実に得点圏へ走者を進める。


 城南ヶ丘は、大量リードをしていても攻撃の手を緩めなかった。


 そして――。


 九番、桐原礼二。


 右打席に入る礼二を見て、中山はミットを握りしめた。


(……もう、ホームランは打たせない)


 二回裏にはホームラン。


 三回裏にはタイムリー。


 この試合、礼二には何度も痛いところで打たれている。


 もうこれ以上、打たれるわけにはいかなかった。


 伯方は中山のサインに頷く。


 投げ込まれた球。


 礼二はそれを外野へ運んだ。


 大きな当たり。


 だが、レフトの高柳龍二郎が下がりながら捕球する。


「アウト!」


 しかし、三塁ランナーはタッチアップをしていた。


 高柳の返球。


 ホームへ向かうランナー。


 だが、間に合わない。


 ホームイン。


 城南ヶ丘、十点目。


 スコアは3対10。


 ついに七点差となった。


 一番、泉田陽一郎。


 ここでさらに繋がれれば、本当に試合が壊れる。


 伯方は必死に腕を振った。


 中山も残った集中力を振り絞ってサインを出す。


 なんとか泉田をアウトに仕留めた。


 スリーアウトチェンジ。


 六回裏終了。


 スコアは3対10。


 東鶴間高校は、七点差をつけられていた。


 七回表。


 東鶴間高校の攻撃。


 ここで一点でも取らなければ、七回コールドで試合終了となる。


 去年の四回戦。


 五回コールドで敗れた記憶が、東鶴間の選手たちの胸をよぎる。


 今年は、去年を超えた。


 四回戦を突破した。


 準々決勝まで来た。


 それでも――。


 ここで終わるわけにはいかない。


 東鶴間ナインは、誰もがそう思っていた。


 そして打席には、二番・高橋雪夜。


 左打席へ向かう雪夜を、東鶴間ベンチの全員が見つめていた。


 雪夜はバットを握り直す。


 目の前には、桐原礼二。


 そして、その先には城南ヶ丘学園高校。


 かつての幼馴染。


 かつての仲間。


 越えなければならない相手。


(ここで終わるわけにはいかない)


 雪夜は静かに息を吐いた。


 東鶴間高校の夏を繋ぐために。


 高橋雪夜は、打席へ入った。

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