↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
205/322

第205話 城南ヶ丘戦、三回表、後半

 三回表。


 東鶴間高校は、高柳龍二郎と高橋雪夜の連続二塁打で一点を返した。


 スコアは1対4。


 なおもワンアウト、ランナー二塁。


 ここで打席に入るのは、三番・新井元気だった。


 左打席に立つ元気を、マウンドの桐原礼二は静かに見ていた。


(……誰に打たれても)


 礼二の指先に力が入る。


(お前だけには打たせない)


 妹の礼里の顔が、頭をよぎる。


 元気が悪いわけではない。


 それは分かっている。


 それでも、礼二にとって元気は、礼里を傷つけた男だった。


 だからこそ、ここだけは譲れなかった。


 初球。


 低めのストレート。


 元気は食らいつく。


 だが、打球はファウル。


 ワンストライク。


 二球目。


 高めのストレート。


 元気はなんとか当てた。


 しかし、これもファウル。


 ツーストライク。


 あっという間に追い込まれた。


 若田部安高はミットを構えながら、礼二の様子を見ていた。


(礼二さん……明らかに新井相手だと気合いが違うな)


 だが、その理由を深く聞くつもりはなかった。


 今は試合中。


 勝つために、打者を抑えるだけだった。


 三球目。


 低めのフォーク。


 元気は反応しかけたが、なんとかバットを止めた。


「ボール!」


 ツーストライク、ワンボール。


 四球目。


 高めのストレート。


 元気は見逃した。


「ボール!」


 ツーストライク、ツーボール。


 元気も簡単には終わらない。


 東鶴間ベンチから声が飛ぶ。


「元気、落ち着け!」


「つなげばいいぞ!」


 元気はバットを握り直した。


 後ろには天宮真十郎がいる。


 自分が出れば、まだチャンスは広がる。


 だが――。


 五球目。


 内角へ、緩いスローカーブ。


 元気のタイミングが、わずかに外された。


 見送る。


 だが、ボールは内角いっぱいに入った。


「ストライク! バッターアウト!」


 見逃し三振。


 元気は悔しそうに唇を噛んだ。


 礼二は小さく息を吐く。


(ふう……アウトに出来たか)


 表情こそ変えない。


 だが、胸の奥では安堵していた。


 元気だけは抑える。


 その思いを、また果たしたのだ。


 続く四番、天宮真十郎。


 東鶴間としては、ここでさらに一点を返したかった。


 しかし、桐原礼二と若田部安高のバッテリーは崩れない。


 天宮も強く振り抜いたが、打球は野手の正面へ飛んだ。


「アウト!」


 スリーアウトチェンジ。


 三回表。


 東鶴間高校は高柳龍二郎と高橋雪夜の連打で一点を返した。


 だが、取れたのは一点だけ。


 スコアは1対4。


 反撃の火は灯った。


 しかし、城南ヶ丘のエース・桐原礼二を完全に崩すには、まだ足りなかった。


 三回裏。


 城南ヶ丘学園高校の攻撃。


 点差は三点。


 だが、田中三郎と中山太郎のバッテリーにとっては、これ以上の失点は許されない。


 マウンドへ向かう田中の背中を見ながら、中山はミットを握りしめた。


(もう……これ以上は取られない)


 そう思っていた。


 いや、そう思わなければ、立っていられなかった。


 試合はまだ、序盤。


 だが東鶴間高校は、すでに大きな正念場を迎えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。