第202話 城南ヶ丘戦、二回の攻防、前半
二回表。
東鶴間高校の攻撃。
なんとか反撃したいところだった。
打席に入るのは、六番の進藤竜也。
七番、中山太郎。
八番、田中三郎。
三年生たちの打順だった。
負ければ、最後の夏が終わる。
だからこそ、誰も簡単に終わるつもりはなかった。
しかし――。
桐原礼二の投球は、想像以上だった。
進藤竜也。
空振り三振。
中山太郎。
見逃し三振。
田中三郎。
空振り三振。
三者連続三振。
東鶴間の三年生たちは、なすすべなくベンチへ戻ることになった。
もはや、準々決勝で当たる投手に、簡単には通用しなくなっていた。
これが強豪校のエース。
これが、桐原礼二だった。
二回裏。
城南ヶ丘学園高校の攻撃。
マウンドの田中三郎は、なんとか気持ちを切り替えようとしていた。
八番、山野翔太。
田中は低めに球を集め、山野をアウトに仕留めた。
ワンアウト。
ここで迎えるのは、九番。
桐原礼二。
右打席に入る礼二を見ながら、中山太郎は自分に言い聞かせる。
(こいつは投手で九番……打撃はたいしたことないはずだ……)
そう思いたかった。
いや、そう思わなければいけなかった。
一回裏だけで二点を失った。
これ以上、失点するわけにはいかない。
中山はミットを低めに構える。
初球。
低めのストレート。
田中が丁寧に投げ込む。
礼二は動かない。
「ストライク!」
ワンストライク。
中山は少しだけ息を吐いた。
(よし……)
だが、次の瞬間。
その油断は消し飛ぶことになる。
二球目。
高めのストレート。
田中の球がわずかに浮いた。
礼二は逃さなかった。
鋭く踏み込み、思いきり引っ張る。
金属音が響いた。
打球は、凄まじい勢いでレフト方向へ伸びていく。
高柳龍二郎が後ろへ下がる。
しかし、打球はその頭上を越えた。
そして――。
スタンドへ消えた。
ホームラン。
桐原礼二のソロホームラン。
城南ヶ丘学園高校、三点目。
礼二は表情を変えず、悠々とダイヤモンドを回った。
九番打者。
投手。
そのはずだった。
だが、礼二は打者としても一流だった。
ホームベースを踏む礼二を見ながら、中山は呆然としていた。
(なんで……)
頭の中が揺れる。
(九番なのに……)
九番だから打てない。
投手だから大したことはない。
そんな考えは、強豪校相手には通用しなかった。
城南ヶ丘には、下位打線にも隙がない。
その現実を、中山は突きつけられていた。
スコアは3対0。
まだ二回。
だが、東鶴間高校の空気は重くなり始めていた。
一回表の好機を逃し。
一回裏に二点を失い。
二回表は三者連続三振。
そして二回裏、九番の桐原礼二にホームラン。
流れは、完全に城南ヶ丘へ傾きつつあった。
それでも――。
城南ヶ丘の攻撃は、まだ終わろうとしていなかった。




