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201/323

第201話 城南ヶ丘戦、一回裏、後半

 一回裏。


 城南ヶ丘学園高校に先制点を許した東鶴間高校。


 なおもワンアウト、ランナー一塁。


 打席には四番、島田弦一郎。


 左打席へ入る島田を見て、中山太郎は頭の中で情報を整理する。


(こいつは打率が高い……ただ、ホームランはない)


 長打力よりも、確実にヒットを打つタイプ。


 そう判断した中山は、田中三郎に外角低めのストレートを要求した。


 田中が頷き、初球を投げ込む。


 外角低め。


 悪い球ではなかった。


 だが――。


 島田は余裕を持ってバットを出した。


 打球は左中間へ飛んでいく。


 センターの新井元気とレフトの高柳龍二郎が追う。


 しかし、打球は二人の間に落ちた。


 二塁打。


 ワンアウト、ランナー三塁二塁。


 中山は奥歯を噛みしめる。


(くそっ……簡単に打ってくるな……)


 城南ヶ丘打線は、甘くなかった。


 五番、花枝正臣。


 右打席へ入る花枝を見て、中山は再び警戒を強める。


(こいつはパワーヒッター……長打に気をつけないと……)


 一点は取られた。


 だが、まだ初回だ。


 これ以上大量失点すれば、試合の流れは一気に城南ヶ丘へ傾く。


 中山は低めを要求した。


 田中は外角低めへチェンジアップを投げる。


 タイミングを外す球。


 花枝は少し泳ぎながらも、ライト方向へ打ち上げた。


 打球は深い。


 ライトの天宮真十郎が下がる。


 そして――。


 なんとか捕球した。


「アウト!」


 だが、二塁と三塁ランナーはタッチアップをしていた。


 天宮が返球するも、間に合わない。


 ホームイン。


 城南ヶ丘、二点目。


 スコアは2対0。


 なおも、ランナー三塁。


 花枝はベンチへ戻ると、少し悔しそうに頭を下げた。


「礼二さん……すいません。ヒットに出来なくて」


 桐原礼二は首を横に振った。


「気にするな」


 そして、静かに続ける。


「犠牲フライで点は取った。それだけでいい」


 その言葉に、花枝は少し安堵した表情を浮かべた。


 城南ヶ丘は、ただ打つだけのチームではない。


 確実に点を取る。


 その意識が、チーム全体に根付いていた。


 六番、六本遊希。


 打席へ向かう前、桐原礼二が声をかける。


「遊希」


「はい」


「好きに打ってこい」


 遊希は静かに頷いた。


「はい」


 その姿を、東鶴間ベンチの何人かが見つめていた。


 高橋雪夜。


 新井元気。


 小山唯。


 浮田総二。


 竹田栄司。


 白石広志。


 かつて同じ中学で野球をしていた仲間。


 その六本遊希が、今は敵として打席に入る。


 六本遊希の左打席。


 田中の初球は、外角低めのストレート。


 遊希はバットを出す。


 だが、打球はファウル。


 ワンストライク。


 ここからだった。


 遊希は簡単には終わらなかった。


 二球目。


 ファウル。


 三球目。


 見逃し。


 四球目。


 ファウル。


 五球目。


 またファウル。


 田中は何度も投げ込む。


 中山も配球を変える。


 だが、遊希は食らいつく。


 際どい球は見逃し、打てる球はファウルで逃げる。


 まるで、田中のスタミナを削るような打席だった。


(遊希……)


 雪夜はセカンドの守備位置から、その打席を見ていた。


(相変わらず、嫌な打者だね……)


 そして九球目。


 田中の球は、わずかに外れた。


「ボール、フォア!」


 四球。


 遊希は一塁へ歩いていく。


 田中は汗を拭った。


 初回から、明らかに球数を使わされていた。


 七番、牧歳数。


 ここは何とか田中が踏ん張った。


 中山のサインに頷き、低めへ丁寧に投げ込む。


 打球は内野ゴロ。


 スリーアウトチェンジ。


 一回裏終了。


 城南ヶ丘学園高校が二点を先制した。


 東鶴間高校ベンチへ戻る田中と中山の表情は硬かった。


 初回から二失点。


 しかも、ただ打たれただけではない。


 走られた。


 揺さぶられた。


 粘られた。


 中山太郎は、城南ヶ丘の攻撃が自分に向けられていることを、少しずつ感じ始めていた。


 そして――。


 二回表。


 東鶴間高校の反撃が始まろうとしていた。

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