↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
190/323

第190話 城南ヶ丘戦、作戦会議

 東鶴間高校野球部の面々は、城南ヶ丘学園高校戦に向けてミーティングを行っていた。


 準々決勝。


 ここまで来れば、相手はどこも強い。


 だが、城南ヶ丘学園高校は、それだけではなかった。


 高橋雪夜たちにとって、因縁のある相手でもあった。


 最初に口を開いたのは、マネージャーの夏目真衣だった。


「みなさん、城南ヶ丘の戦力なんですが……」


 全員が資料へ視線を向ける。


「城南ヶ丘は去年、県大会ベスト8まで行った強豪校です。二年前に桐原礼二さんが入学してから、強くなったらしいです」


 桐原礼二。


 その名前が出た瞬間、雪夜の表情がわずかに動いた。


 真衣は続ける。


「桐原さんがエースで、球速は149キロ。決め球はフォーク。他にスライダー、スローカーブ、シュートを投げます。コントロールも良く、桐原さんから何点取れるかの勝負になります」


 部室の空気が引き締まる。


 149キロ。


 大王高校の外藤祐吉郎にも劣らない球速。


 しかもコントロールも良い。


 間違いなく、県内屈指の投手だった。


 九条咲が静かに言う。


「そうか……桐原礼二と言ったら……雪夜」


「はい」


 雪夜は頷いた。


「この前、一緒に来ていた桐原礼里の兄です」


 咲は小さく頷く。


「なるほどな」


 すると、真衣は次の資料へ目を向けた。


「それと……二番手ながら、かなり厄介な投手がいます」


 その言葉に、部員たちの視線が再び集まる。


「二年生の滝橋蓮次郎君です。コントロールがすごく良くて、変化球はスライダー、カーブ、シンカー、シュート。技巧派の投手です」


 真衣は少し表情を曇らせた。


「桐原さんを打ち崩せても、滝橋君が控えています……正直、苦戦はします」


 その名前を聞いた瞬間、新井元気が雪夜を見た。


「雪夜、もしかして……」


 雪夜は、わずかに目を細める。


「そのまさかだね」


 そして、静かに言った。


「あの蓮次郎だろう」


 咲が雪夜を見る。


「雪夜、知り合いなのか?」


「……小学生の時のチームで、バッテリーを組んでいました」


 部室に小さなざわめきが起こる。


 雪夜がかつてバッテリーを組んでいた投手。


 その相手が、今は城南ヶ丘の二番手として待っている。


 それだけでも、この試合がただの準々決勝ではないことは明らかだった。


 真衣はさらに説明を続ける。


「それから打線なんですが……城南ヶ丘は、どちらかと言うとバランスが取れたチームです」


 資料をめくる音が部室に響く。


「捕手の若田部安高君は二年生で、県内ナンバーワン捕手と呼ばれています。彼の能力は高いので、気を付けていきましょう」


 九条咲は腕を組んだ。


「バッテリーがいいのか……これは要注意だな」


「はい」


 真衣は頷く。


「それから、遊撃手ながら今は外野で出場している一年生、六本遊希君が厄介です。粘り打ちが得意で、打率も良い方です」


 その名前に、白石広志が反応した。


「遊希が……城南ヶ丘に……」


 咲が白石を見る。


「どうした、白石。知り合いか?」


「はい……中学の時のチームメイトです」


 その言葉で、野球部の面々は気づいた。


 六本遊希。


 彼は白石だけではない。


 高橋雪夜。


 新井元気。


 小山唯。


 竹田栄司。


 浮田総二。


 彼らとも中学時代のチームメイトだった。


 竹田栄司が、悔しそうに呟く。


「遊希……どうして俺たちに内緒で、城南ヶ丘に行ったんだよ」


 浮田総二は、静かに言った。


「仕方ないじゃろう……遊希にも言えないことがあるんじゃよ」


 その言葉に、竹田は何も言い返せなかった。


 誰にだって、言えない事情はある。


 それでも、かつての仲間が敵として立ちはだかることに、胸がざわつくのは仕方なかった。


 九条咲は全員を見渡した。


「とにかく、城南ヶ丘が強いのは分かった」


 そして、資料を置く。


「ここから、スタメンを発表する」


 部室の空気が、さらに引き締まった。


 城南ヶ丘学園高校との運命の試合。


 雪夜にとっても。


 元気にとっても。


 唯にとっても。


 そして、かつての仲間たちにとっても。


 避けては通れない一戦に向けて、スタメン発表が始まろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。