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第181話 大王高校戦、終盤

 七回表。


 ついに大王打線が動いた。


 初球。


 外角シュート。


 振り抜かれる。


 レフト前ヒット。


 二番はまさかのセーフティバントバント。


 なんとか天宮真十郎がアウトにするも、一死二塁。


 三番。


 打ち返される。


 タイムリー。


 1点を返される。


 高橋雪夜は天宮に「天宮…3点差ある…ゆっくりいこう」


「ああ…分かった」


 天宮は崩れない。


 四番。


 フォーク。


 打たせて取る。


 セカンドゴロでダブルプレー。


 最小失点。


 七回裏。


 九番、六条遊人をアウトにして、一番の高柳龍二郎の打席となった。


(こいつ…只者ではない…なんで弱小高校なんかにいるんだ…)


 外藤祐吉郎は龍二郎を、そう評価していた


 高柳龍二郎が、二塁打。


 ここで九条咲が動く。


「雪夜」


「バントはいらない」


「打ってこい」


 雪夜は頷いた。


 外藤は油断していた。


(こいつは…さっき送りバントをしていたな)


 内野は前進。


 しかし――


 雪夜は振り抜いた。


 左中間。


 打球が抜ける。


 高柳生還。


 1対5。


 再び突き放す。


(俺から、点を取るなんて…)


 しかし、ここで崩れないのがエースである。


 三番、新井元気。


 四番、天宮真十郎


 連続でアウトに仕留めた


 八回表。


 五番をアウトにした。


 だが、天宮に疲れが見える。


 六番。


 失投。


 ――ホームラン。


 再び三点差。


 雪夜がタイムを取る。


「天宮…間を使っていこう」


 天宮は頷く。


 なんとか抑える。


 八回裏


 もはや、外藤祐吉郎からヒットを打てなかった


 五番、浮田総二


 六番、竹田栄司


 七番、進藤竜也


 連続アウトに仕留められていた。


 そして、九回表。


 スコアは――2対5。


 東鶴間高校が三点をリードしていた。


 だが。


 誰一人として安心などしていなかった。


 ツーアウト。


 それでも大王高校は食らいついていた。


 ヒット。


 フォアボール。


 ランナー二塁一塁。


 そして打席には四番。


 大王高校の主砲。


 スタンドには張り詰めた空気が漂う。


 もしホームランなら同点。


 延長戦になれば圧倒的に不利だった。


 天宮真十郎は一回から投げ続けている。


 一方、外藤祐吉郎は四回からの登板。


 スタミナには大きな差があった。


 誰もが理解していた。


 ここで追いつかれれば危険だと。


 高橋雪夜はマウンドへ向かった。


「天宮」


 静かな声だった。


 天宮は振り向く。


「ホームランでも同点だよ」


「……うん」


「逆転じゃない」


 雪夜は微笑んだ。


「強心臓の天宮真十郎を見せる時だよ」


 その言葉に。


 天宮は小さく笑った。


「ああ……あと一人で終わらせるよ」


 二人はホームへ戻る。


 スタンドが静まり返る。


 初球。


 ストライク。


 二球目。


 ファウル。


 ツーストライク。


 あと一球。


 あと一球で終わる。


 だが相手も簡単には終わらない。


 四番打者はバットを握り直した。


 雪夜が出したサイン。


 フォーク。


 天宮は頷いた。


 振りかぶる。


 投げる。


 白球はホームベースへ向かい――


 最後の瞬間。


 鋭く落ちた。


 打者は迷った。


 ストライクか。


 ボールか。


 一瞬だけ迷い――


 そして振った。


 ブンッ――!


 空を切る。


 ミットへ収まる。


 審判が拳を突き上げた。


「ストライク! バッターアウト!」


 試合終了。


 その瞬間。


 東鶴間高校ベンチから歓声が上がった。


「勝ったぁぁぁ!」


「やったぞ!」


「四回戦突破だ!」


 選手たちがグラウンドへ飛び出していく。


 高橋雪夜は思わず天宮の肩を叩いた。


「天宮、ナイスピッチング」


 天宮は苦笑した。


「ああ…疲れたよ……」


「だろうね、お疲れ様」


 二人は笑った。


 一方。


 大王高校ベンチ。


 外藤祐吉郎は静かにスコアボードを見つめていた。


 2対5。


 敗北。


 監督の慢心。


 三番手投手の三中玄也が先発。


 それがなければ結果は違ったかもしれない。


 だが。


 外藤は首を横に振った。


(違うな)


 今日の東鶴間は強かった。


 特に――。


 天宮真十郎と高橋雪夜。


 あのバッテリーは本物だった。


 こうして。


 万年一回戦負けと言われた東鶴間高校は。


 去年のベスト4。


 強豪・大王高校を破った。


 だが――。


 歓喜の裏で、代償もあった。


 天宮真十郎は限界まで投げ抜いた。


 次の試合で登板できるかどうか。


 それすら分からないほどに。


 東鶴間高校は大きな勝利を手にした。


 そして同時に。


 新たな試練を迎えようとしていた。

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