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第180話 大王高校戦、中盤

 四回裏。


 東鶴間高校の攻撃。


 マウンドには、ついに大王高校のエース・外藤祐吉郎が上がっていた。


(やっぱり……俺が投げることになったか)


 外藤は小さく息を吐いた。


 本来なら登板する予定ではなかった。


 だが、試合は予想外の展開となっている。


 0対4。


 東鶴間高校がリードしていた。


 七番、進藤竜也。


 外藤はまず、様子を見るように真ん中へストレートを投げ込んだ。


 ズバンッ!


 進藤は見送る。


 だが、スコアボードには――


 147キロ。


(速い……)


 進藤は思わず目を見開いた。


 これまでの投手とは明らかに違う。


 二球目。


 高めのストレート。


 進藤は振りにいくが、バットは空を切った。


 ツーストライク。


 三球目。


 低めへ落ちるフォーク。


 進藤は見逃した。


 だが――。


「ストライク! バッターアウト!」


 三振。


 進藤は苦笑するしかなかった。


 続く八番、早田士郎。


 さらに九番、六条遊人。


 二人も外藤の前ではなすすべなく三振。


 三者連続三振。


 外藤にとっては、それが特別なことではなかった。


 ただ、いつも通り投げただけだった。


 五回表。


 大王高校の攻撃。


 だが――。


 それでも大王高校は天宮真十郎を攻略できない。


 高橋雪夜のリード。


 天宮真十郎の球威。


 その組み合わせは、想像以上だった。


 五回裏。


 一番、高柳龍二郎。


 外藤は高めへストレートを投げ込んだ。


 だが。


 龍二郎は迷わず振り抜く。


 打球は鋭くセンター前へ抜けていった。


「また高柳か……」


 観客席から驚きの声が漏れる。


 二番、高橋雪夜。


 雪夜は確実に送りバントを決め、一死二塁。


 三番、新井元気。


 レフト前へ運び、一死三塁一塁。


 追加点の好機。


 しかし――。


 四番、天宮真十郎。


 五番、浮田総二。


 外藤は二人を打ち取り、得点を許さなかった。


 六回表。


 大王高校の攻撃。


 だが、結果は変わらない。


 天宮真十郎は今日も崩れない。


 雪夜のミットへ向かって、次々とボールを投げ込んでいく。


 気が付けば――。


 二巡目終了時点で完全試合ペースだった。


 スタンドがざわつき始める。


「東鶴間が……」


「大王を完全に抑えてる……?」


「まさか……」


「大王高校相手に、完全試合をするのか……?」


 六回裏。


 今度は外藤が圧倒する番だった。


 六番、竹田栄司。


 七番、進藤竜也。


 八番、早田士郎。


 三者連続三振。


 まるで意地の張り合いだった。


 天宮と雪夜。


 外藤。


 それぞれが一歩も譲らない。


 七回表を迎える。


 東鶴間高校ベンチ。


 九条咲は選手たちを見回した。


「みんな……ここから大王高校の反撃が来るだろう。気を引き締めていけ」


「はい!」


 選手たちの声が響く。


 その中で、高橋雪夜だけは静かだった。


(多分……ここからが正念場になる)


 完全試合。


 そんなものが最後まで続くほど、高校野球は甘くない。


 相手は去年のベスト4。


 大王高校なのだから。


 一方、大王高校ベンチ。


 監督は声を張り上げた。


「お前たち! 三巡目だ! さすがに目も慣れてきただろう!」


 選手たちが顔を上げる。


「あのバッテリーを打ち崩してこい!」


「はい!」


 大王高校ナインの目にも闘志が宿り始めていた。


 だが。


 その様子を見ていた外藤祐吉郎だけは、違うことを考えていた。


(……そう簡単に、あのバッテリーを崩せるとは思えないな)


 六回まで見てきたからこそ分かる。


 天宮真十郎も凄い。


 だが、それ以上に――。


 高橋雪夜の存在が厄介だった。


 投手の力を最大限に引き出し、相手打者を追い詰める捕手。


 そんな捕手を、外藤はこれまで何人も見てきた。


 だからこそ分かる。


 あの二人は、簡単には崩れない。


 そして――。


 高橋雪夜の予想は、的中することになる。


 七回表。


 ついに試合が、大きく動き始めようとしていた。 

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