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第179話 大王高校戦、序盤

 四回戦――。


 大王高校との試合が、ついに始まろうとしていた。


 一回表。


 大王高校の攻撃。


 マウンドには、東鶴間高校のエース・天宮真十郎が立っていた。


 だが、天宮に緊張はなかった。


 後ろには、高橋雪夜がいる。


 配球は雪夜に任せる。


 自分は、そのサイン通りに投げ込むだけ。


 それだけだった。


 初球。


 高橋雪夜のミットへ向かって、天宮のストレートが唸る。


 大王高校打線は、いきなり差し込まれていた。


 そして――。


 天宮真十郎と高橋雪夜のバッテリーは、一回表を三者凡退に抑えてみせた。


 静まり返る大王高校ベンチ。


 一方、東鶴間高校ベンチには勢いが生まれていた。


 そして一回裏。


 東鶴間高校の攻撃。


 一番、高柳龍二郎の打席となる。


 打席へ向かう前、高橋雪夜が静かに言った。


「龍二郎……狙っていいから」


 龍二郎は不敵に笑う。


「奇遇だな……俺もそう考えていた」


 大王高校の先発投手は、予告通り三番手投手の三仲玄也だった。


 大王高校監督の“格下相手”という慢心。


 それが、この試合の始まりだった。


 三仲の初球。


 低めのストレート。


 まずは様子を見るつもりだった。


 だが――。


 高柳龍二郎は、その初球を待っていた。


 鋭く振り抜かれた打球は、凄まじい速度でライト方向へ飛んでいく。


 そして――そのままスタンドへ突き刺さった。


 初球先頭打者ホームラン。


 東鶴間高校ベンチが、一気に沸き上がる。


 龍二郎は静かにダイヤモンドを回り、ホームベースを踏んだ。


 だが、大王高校監督はまだ余裕だった。


(まあ……一点ぐらいはいいだろう)


 そう思っていた。


 二番、高橋雪夜。


 雪夜もまた、三仲のストレートを狙っていた。


 鋭い打球を右中間へ運び、二塁打。


 さらに三番、新井元気がヒットで繋ぎ、ランナー三塁一塁。


 四番、天宮真十郎。


 天宮は外野まで運び、犠牲フライ。


 二点目。


 さらに五番、浮田総二もヒット。


 六番、竹田栄司が外野へ運び、またしても犠牲フライ。


 三点目。


 まさかの展開だった。


 東鶴間高校が、初回で三点先制。


 それでも、大王高校監督はまだ余裕を崩さない。


(まあ……三点なんて、すぐ取り返せる……)


 だが――。


 その余裕は、徐々に崩れていく。


 二回。


 三回。


 天宮真十郎は、大王打線を寄せ付けなかった。


 高橋雪夜の配球。


 天宮の球威。


 その全てが噛み合っていた。


 大王高校打線は、誰一人ヒットを打っていない。


 三回裏終了時点で、スコアは0対4。


 まさかの展開だった。


 弱小と呼ばれていた東鶴間高校が、強豪・大王高校を相手に四点差。


 しかも――ノーヒット。


 観客たちはざわめいていた。


「東鶴間って、こんなに強かったのか……?」


「いや……天宮と高橋のバッテリー、やばくないか……?」


 そして四回表。


 ここでも、大王打線はヒットすら打てなかった。


 さすがに――。


 大王高校監督も、動いた。


 四回裏。


 三番手投手・三仲玄也を諦め、ついにエースを投入する。


 外藤祐吉郎。


 ドラフト候補の本格派右腕だった。


 マウンドへ向かう外藤へ、大王高校監督が言う。


「外藤……あいつらを黙らせてこい」


 外藤は静かに頷いた。


「はい……」


 そして――。


 ここからが、本当の勝負になろうとしていた。

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