↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
177/325

第177話 四回戦、試合前

 四回戦――。


 ついに、大王高校との試合当日となった。


 東鶴間高校野球部の面々の中には、さすがに緊張している者もいた。


 それも当然だった。


 相手は去年の県大会ベスト4、大王高校。


 県内でも有名な強豪校である。


 一方の東鶴間高校は、長年“万年一回戦負け”と言われてきた弱小校。


 去年、奇跡のように四回戦まで進んだものの、最後は大敗した。


 どう考えても、格が違う。


 球場へ到着した東鶴間高校野球部の面々は、大王高校野球部が球場入りする姿を見ていた。


 統率された動き。


 無駄のない足取り。


 その姿は、まるで軍隊のようだった。


「アレが、大王高校……」


「去年のベスト4……」


「本当に、同じ高校生なのか……?」


「なんか、軍隊みたいだ……」


 東鶴間の部員たちは、思わず圧倒されていた。


 そんな空気を感じ取った九条咲が、静かに言う。


「みんな……相手は同じ高校生だ。怖気づくことはないぞ」


 その言葉に、部員たちは深呼吸をした。


 落ち着け。


 まだ試合は始まっていない。


 そう自分に言い聞かせる。


 そして東鶴間高校野球部も球場入りし、ベンチへ向かう。


 そこで、九条咲の最後の話が始まった。


「みんな……相手はベスト4になった高校だ……それは事実だ」


 部員たちは静かに聞いていた。


「だが、我々も練習してきた……それも事実だ」


 咲の視線は、真っ直ぐだった。


「だから、始めから負けるつもりはない……」


 その言葉に、東鶴間の空気が少し変わる。


「天宮と雪夜のバッテリーで抑える。後は何点取れるかの勝負になる……ここが正念場だ。みんな、悔いのないように戦ってこい」


「はいっ!」


 東鶴間高校野球部の面々は、一斉に返事をした。


 一方――。


 大王高校ベンチでは、まるで別の空気が流れていた。


 監督は腕を組みながら言う。


「お前たち……相手は格下の高校だ。この試合もコールドで勝つ。奴らに現実を教えてこい」


 当然のような口調だった。


 すると、その時。


 エース・外藤祐吉郎が口を開く。


「監督……俺が投げなくてもいいのですか?」


 監督は鼻で笑った。


「外藤、お前が投げる価値のあるチームではない。今日は三仲に投げさせる……お前は中継ぎ待機だ」


 外藤は少しだけ眉をひそめた。


「相手は、二回戦で完封したバッテリーですよ」


 だが監督は気にしない。


「たまたまだろう……二回戦の相手が弱小同士だったのだろうから、完封しても不思議ではない」


「そうですか……」


 外藤はそれ以上言わなかった。


 監督は続ける。


「今日は五回コールドを目標にする……最低でも七回までにコールドだ。お前たち、奴らに恐怖を与えてこい」


 大王高校ナインは静かに頷いた。


 だが――。


 この時。


 外藤祐吉郎の予感が正しかったことを。


 そして東鶴間高校が、自分たちの想像以上のチームだったことを。


 まだ誰も知らなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。