第176話 大王高校戦、作戦会議
四回戦――。
大王高校との試合前日。
東鶴間高校野球部の面々は、部室で作戦会議を行っていた。
部室の空気は重い。
それも無理はなかった。
相手は去年の県大会ベスト4、大王高校。
ここまで戦ってきた相手とは、格が違う。
マネージャーの夏目真衣は、資料を見ながら説明を始めた。
「みなさん、大王高校の話なのですが……」
全員の視線が真衣へ向く。
「特徴としては、三年生の外藤祐吉郎さんを中心にした、バランスの取れたチームです」
その名前を聞いただけで、部室の空気がさらに引き締まった。
ドラフト候補。
県内屈指の右腕。
それが、外藤祐吉郎だった。
「外藤さんは球速も速く、変化球はスライダーとフォークが決め球で、他にシュート、シンカーを投げてきます。コントロールも良くて、スタミナもあります」
真衣は一度言葉を区切る。
「正直言って……外藤さんが先発だったら、勝つのは大変だと思います」
誰も反論しなかった。
それほどまでに、外藤は完成された投手だった。
「二番手、三番手の投手も、強豪校じゃなかったらエース候補と呼ばれていたと思います。打線も良くて、去年ベスト4になっただけはあるチームです」
説明を聞きながら、野球部の面々は理解していた。
三回戦までのような戦い方では、通用しない。
相手は、本物の強豪校だ。
それでも――。
東鶴間には希望があった。
天宮真十郎。
そして、高橋雪夜。
このバッテリーなら、もしかしたら――。
そんな想いを、誰もが抱いていた。
すると、監督の九条咲が静かに口を開いた。
「みんな……」
その声に、全員が顔を上げる。
「相手の監督は、ご丁寧に外藤を先発させないと言ってきた……」
咲の目は、真っ直ぐだった。
「なら、手の内を明かしたことを、後悔させようじゃないか」
一瞬、静まり返る部室。
そして次の瞬間――。
「はいっ!」
野球部の面々が、一斉に返事をした。
そこには、恐怖だけではなく、闘志もあった。
弱小校。
万年一回戦負け。
そう言われ続けてきた東鶴間高校。
だが今は違う。
ここまで勝ち上がってきた。
だからこそ――。
強豪校にも、全力で挑む。
そして。
四回戦、大王高校戦当日が、ついにやって来るのだった。




