第168話 二回戦
県大会二回戦当日――。
東鶴間高校野球部の面々は、静かな緊張感の中、ベンチへ入っていた。
一回戦を突破したとはいえ、まだ“弱小校”という印象は消えていない。
だからこそ、この試合は重要だった。
そんな中、監督の九条咲が選手たちの前に立つ。
「いいか……この試合は、天宮と雪夜のバッテリーで行く」
部員たちは静かに頷いた。
「後は、どれだけ点を取れるかの勝負になる」
その言葉には、信頼が込められていた。
天宮真十郎の投球。
高橋雪夜のリード。
この二人なら、試合を作れる。
咲はそう確信していた。
「では、行こうか」
その一言で、東鶴間高校の二回戦が始まった。
一回表――。
マウンドへ上がったのは、天宮真十郎。
捕手は、高橋雪夜。
天宮はマスク越しの雪夜を見る。
雪夜がサインを出す。
天宮は、迷いなく頷いた。
鋭いストレート。
切れ味のあるスライダー。
落差の大きいフォーク。
天宮真十郎は、圧倒していた。
三者凡退。
相手打線に何もさせず、一回表を終える。
そして、一回裏――。
一番、高柳龍二郎。
初球から鋭く振り抜き、ヒットで出塁。
二番、高橋雪夜。
ここは冷静に送りバントを決め、ランナー二塁。
三番、新井元気がヒットで繋ぎ、ランナー三塁一塁。
そして――。
四番、天宮真十郎。
エースであり四番でもある天宮は、見事にタイムリーヒットを放った。
東鶴間高校、先制。
さらに勢いは止まらない。
五番、浮田総二。
六番、竹田栄司。
連打、連打。
打線が繋がり、この回一気に三点。
スコアは0対3となった。
そして――。
ここからは、天宮真十郎の独壇場だった。
ランナーは出す。
だが、点は取られない。
雪夜の配球は冴え渡り、天宮もそれに完璧に応えていく。
ストレートで押し。
変化球で崩す。
時には大胆に内角を攻める。
天宮の投球。
雪夜のリード。
その全てが噛み合っていた。
六回終了時点――。
スコアは0対7。
観客席はざわついていた。
「東鶴間って……あの東鶴間か?」
「万年一回戦負けだったところだろ?」
「なんだよ、あのエース……」
一昨年までの東鶴間しか知らない者たちには、目の前の光景が信じられなかった。
そして七回表――。
あと三つアウトを取れば、七点差によるコールドゲーム。
天宮真十郎は、最後まで集中を切らさなかった。
最後の打者。
雪夜のサイン。
天宮は頷き、全力で腕を振る。
打球はショートゴロ。
進藤竜也が捕球し、一塁へ送球。
アウト。
試合終了――。
東鶴間高校、コールド勝利。
観客席からどよめきが起こる。
万年一回戦負けだった東鶴間高校が、県大会二回戦をコールドで勝った。
それは、誰も予想していなかった結果だった。
そして――。
東鶴間高校野球部は、三回戦へ進出した。




