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第161話 発表

 県大会が目前に迫る中――。


 東鶴間高校野球部では、ついに最後のメンバー発表が行われようとしていた。


 部室には、いつも以上に重い空気が流れている。


 誰も無駄話をしない。


 誰も笑わない。


 全員が、自分の名前を待っていた。


 やがて――。


 監督の九条咲が、静かに口を開いた。


「みんな……これから、県大会のメンバー発表をする」


 その一言で、部室の空気がさらに張り詰める。


 咲は手元の紙に視線を落としながら、ゆっくり読み上げていった。


「ピッチャー、田中三郎」


「キャッチャー、中山太郎」


「ファースト、浮田総二」


「セカンド、高橋雪夜」


「サード、進藤竜也」


「ショート、六条遊人」


「レフト、高柳龍二郎」


「センター、新井元気」


「ライト、天宮真十郎」


 名前を呼ばれた選手たちは、静かに頷いていく。


「控えは、竹田栄司、早田士郎、白石広志、夏目海、伯方歩夢」


 そして咲は、最後に言った。


「これが、ポジションとなる」


 誰も異論を口にしなかった。


 だが、それぞれ思うことはあった。


 雪夜はセカンド。


 天宮はライト。


 そして、バッテリーは田中と中山。


 咲自身も、この決断には迷いがあった。


 本当は――。


 天宮真十郎をエースに。


 高橋雪夜を正捕手に。


 そうしたい気持ちは、確かにあった。


 だが。


 田中三郎と中山太郎は三年生だった。


 この県大会が、最後になる。


 その現実を考えた時、咲はどうしても二人を外せなかった。


 雪夜も、天宮も、その気持ちは理解していた。


 だからこそ、何も言わない。


 ただ、自分に出来ることをやるだけだった。


 雪夜は静かに拳を握る。


(僕は、セカンドとして……そして作戦参謀として、チームを支えよう)


 天宮もまた、静かに前を向いていた。


(どんな形でもいい……チームが勝てば、それでいい)


 東鶴間高校野球部は、少しずつ“チーム”になっていた。


 そして――。


 県大会前日。


 ついに、その時がやって来ようとしていた。

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