第152話 三度、東鶴間の問題
桜桜花高校との練習試合を終えてから、数日が過ぎていた。
東鶴間高校野球部は、今日も変わらず練習の日々を送っている。
だが、その日の練習後――。
部室に集まった部員たちへ向けて、監督の九条咲が静かに口を開いた。
「みんな……今日は練習のことではなくて、もう一つ問題があることを話そうと思う」
いつもとは少し違う真面目な空気に、部員たちは自然と姿勢を正した。
咲は全員を見渡しながら続ける。
「……うちの野球部に、マネージャーが一人しかいないのは、みんなも気づいているわね」
その言葉に、部員たちは内心で頷いていた。
現在の東鶴間高校野球部は、選手が十四人。
それに対して、マネージャーは夏目真衣ただ一人だった。
練習メニューの管理。
スコア記録。
洗濯。
飲み物の準備。
試合相手の情報整理。
真衣の負担は、明らかに大きかった。
咲は少し申し訳なさそうに言った。
「このままだと、真衣の負担が大きくなる……だから、マネージャーを募集しようと思う」
その瞬間、部員たちはほぼ同時に同じことを考えていた。
(……いや、うちみたいな弱小野球部のマネージャーになりたい人、いるのか?)
去年までは、試合すらまともに出来なかったチームだ。
今でこそ少し変わり始めているが、学校内での知名度はまだ高くない。
咲はそんな空気を察したのか、小さく苦笑した。
「募集だけではなくて、みんなもマネージャーになってくれそうな人に、声をかけてみてほしいの」
部員たちは顔を見合わせる。
そして、とりあえず元気よく返事をした。
「はいっ!」
だが――。
返事とは裏腹に、全員の頭の中には同じ疑問が浮かんでいた。
(……誰に声をかければいいんだ?)
進藤竜也は腕を組みながら考え込む。
六条遊人は「うーん……」と唸っている。
中山太郎に至っては、完全に困り顔だった。
真衣はそんな様子を見て、少し申し訳なさそうに笑った。
「みんな、ごめんね……」
すると、雪夜が穏やかに首を振った。
「真衣さんが謝ることじゃないよ。実際、一人でやるのは大変だったでしょう?」
「う、うん……まあ、それなりに……」
真衣は苦笑する。
海が入部してからは少し楽になったとはいえ、やはり一人では限界がある。
咲も静かに頷いた。
「とりあえず、知人でも友達でもいい。誰か心当たりがあったら声をかけてみてくれ」
「了解です」
進藤が代表して答えた。
こうして、東鶴間高校野球部の新たな課題――“マネージャー探し”が始まった。
とはいえ。
部員たちは誰に声をかければいいのか分からず、とりあえず知人へ片っ端から話をしてみることにしたのだった。




