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第151話 3人の話し合い

 捕手の併用。


 バッテリーの固定。


 そして、ポジション決め――。


 監督である九条咲の方針が決まり、東鶴間高校野球部の面々は、それぞれ帰路についていた。


 だが、部室にはまだ三人だけ残っていた。


 監督の九条咲。


 作戦参謀の高橋雪夜。


 そして、マネージャーの夏目真衣である。


 夕暮れの光が、静かな部室へ差し込んでいた。


 咲は椅子に座りながら、小さく息を吐いた。


「雪夜、真衣……今回の話、率直にどう思う?」


 その問いに、雪夜は少し考えてから口を開いた。


「そうですね……僕と天宮のバッテリーの時は、すんなりポジションが決まりました」


 だが、と雪夜は続けた。


「田中さんと中山さんの時のポジションは……決まりませんね」


 真衣も苦笑いを浮かべた。


「そうだね……誰をどのポジションにするか、難しいよね」


 咲は腕を組みながら頷いた。


「そうだな……誰を入れて、誰を外すか……悩むものだな」


 以前の東鶴間なら、そんな悩みは存在しなかった。


 人数が足りなかったからだ。


 だが今は違う。


 選択肢がある。


 それは、チームが強くなっている証拠でもあった。


 真衣は資料を見ながら言った。


「私は……打撃重視でいくなら、六条遊人君か早田士郎君のどちらかを外したほうがいいと思います」


 雪夜は少し考え込みながら答えた。


「それだと、守備力が落ちるかな……」


 彼の脳裏には、桜桜花戦での守備が浮かんでいた。


「六条の肩と守備、早田の足は魅力的だから……守備重視でいくなら、竹田栄司を代打待機にするのもありだと思います」


「なるほどねぇ……」


 真衣は感心したように頷いた。


 咲は苦笑しながら言った。


「まあ……仕方ない。その日の調子で決めることにするか」


 完璧な答えなどない。


 だからこそ、悩み続けるしかないのだろう。


 それでも、以前の東鶴間より確実に前へ進んでいた。


 話し合いを終え、三人は部室を出た。


 雪夜は真衣の方を見て言った。


「真衣さん、途中まで送ろうか?」


「あっ……ありがとう、雪夜君」


 だが、部室の前へ出た瞬間だった。


 そこには、二人の姿があった。


 六条遊人と、夏目海である。


 真衣は目を丸くした。


「遊人君、海……待っていてくれたんだね」


 六条は当然のように肩をすくめた。


「あたり前だよ。幼馴染なんだから」


 海も静かに言った。


「僕は、姉さんを待っていただけだよ」


 その様子を見た雪夜は、小さく笑った。


「なんだ……なら、僕はこれで帰ることにするよ」


 真衣は少し申し訳なさそうに言った。


「ありがとう、雪夜君……送ってくれるって言ってくれたのに……」


「いいんだ」


 雪夜は穏やかに笑った。


「二人がいるなら、安心だから」


 そう言って手を振り、校門へ向かって歩き出す。


 夕暮れの風は、少しだけ涼しかった。


 そして、校門を出て少ししたところで――。


「よう」


 聞き慣れた声がした。


 雪夜が視線を向けると、そこには高柳龍二郎が立っていた。


 壁にもたれながら、こちらを見ている。


 雪夜は少し驚きながら笑った。


「龍二郎、待っていてくれたんだね」


「まあ……少しな」


 ぶっきらぼうに答える龍二郎。


 だが、その声音はどこか柔らかかった。


 雪夜は自然と笑みを浮かべた。


「それじゃ、一緒に帰ろうか」


「ああ」


 そうして二人は、夕焼けに染まる道を並んで歩き始めた。


 東鶴間高校野球部は、少しずつ変わっていく。


 そして彼らの日々もまた、静かに前へ進み続けていた。

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