第125話 桜桜花戦、空気の違い
東鶴間高校野球部の面々は、試合前に円陣を組んでいた。
中央に立ったのは、キャプテンの進藤竜也だった。
「みんな……ついにこの日が来たね」
静かな声で言う。
「練習は嘘をつかない……僕はそう思っているよ」
部員たちは黙って聞いていた。
「とりあえず、完封負けは防ごう。そして、コールド負けもだ」
誰も笑わなかった。
それが現実的な目標だと、全員が理解していた。
進藤は続けた。
「慣れないポジションの者もいるけど、僕たちならなんとかなると思う」
拳を握る。
「東鶴間……さあ行くぞ!」
「おうっ!」
短い声が重なった。
一方――
桜桜花高校野球部も円陣を組んでいた。
キャプテンの立塚尚文が口を開く。
「いいかみんな。東鶴間は以前より強くなっている。油断しないでいこう」
だが、その言葉の直後だった。
「大丈夫ですよ、立塚キャプテン……僕が投げるのだから、余裕でしょう」
金村歳郎だった。
立塚は苦笑する。
「おい、歳郎……何度も言うが、俺に投げさせるなよ」
歳郎は自信満々に言った。
「大丈夫ですよ。完封しますから」
双子の弟、金村好郎が言う。
「兄さん……油断は禁物だよ」
「心配するなよ。僕は県内ナンバーワン投手なんだから」
その様子を見ていた九条神楽は、内心で思った。
(……やっぱり、この子は慢心しているわね……)
(この油断……打たれる可能性があるわ……)
そして――
両チームが守備位置につく。
東鶴間高校の先攻。
運命の練習試合が、幕を開けようとしていた。




