第123話 桜桜花戦、分析
桜桜花高校との練習試合を翌日に控え――
東鶴間高校野球部は、軽めの調整を行っていた。
その一方で。
部室では、別の準備が進められていた。
高橋雪夜、夏目真衣、白石広志、そして九条咲。
四人で桜桜花高校の戦力分析を行い、部員たちに説明していた。
まず口を開いたのは、白石広志だった。
「僕が見た、投手の金村歳郎のことなんですが……」
資料に目を落とす。
「今の球速は143キロ。コントロールとスタミナは突出しているわけではないのですが、変化球が四種類もあるのが厄介です」
部員たちが真剣に聞く。
「高速スライダー、スローカーブ、チェンジアップ、スクリュー……」
「そこに捕手の金村好郎の配球とリードで抑えてきた……双子バッテリーと呼ばれるほどに成績を残してきました」
広志は結論を言った。
「正直、何点取れるかが勝負になってきます」
夏目真衣が補足する。
「歳郎君は打撃もよく、打率は高くないのですが、パワーがあります」
「弟の好郎君は逆にミート重視の打撃をしてきます」
「好郎君が出塁して、歳郎君がホームに返す……はっきり言って、隙がないです」
九条咲が腕を組んだ。
「なるほど……厄介なバッテリーだな」
雪夜が言った。
「そうですね……だからこそ、龍二郎を一番にしました」
部員たちの視線が高柳に集まる。
「龍二郎の打撃で突破口を開こうと思います」
真衣はさらに続けた。
「それと、打撃力で言うと……金村兄弟以外にも注意が必要です」
「打率が高い谷本智由君、粘りのカットマン市原圭一君、長打のある宮本草太郎さん」
九条が頷く。
「確かに、市原圭一には去年の県大会四回戦で苦しめられたからな」
真衣は資料をめくった。
「他の選手は打撃はそこそこですが、守備力が高いチームです」
「打撃に目をつぶれば、強豪校に行けたかもしれない選手もいます」
九条は小さく息を吐いた。
「そうなのか……斉藤秀一たちが抜けたのに、戦力がそろっているなんて……さすが姉さんというべきか……」
真衣はさらに続ける。
「それと……三年生投手、立塚尚文さんのことなんですが……」
部室の空気が変わった。
「斉藤秀一さんたちが抜けてから、人が変わったぐらいに練習漬けの日々を過ごして……」
「球速145キロ、コントロールとスタミナも向上。スライダーとカーブを極限まで鍛えたそうです」
真衣は言った。
「歳郎君を打ち崩せても、立塚さんが控えていると思うと……厳しい試合になると思います」
九条咲は部員たちを見渡した。
「確かに、厳しい試合になる」
そして続ける。
「だが、我々も練習してきた。それは事実だ」
声を少し強める。
「みんな、桜桜花に練習の成果を見せる時だ」
部員たちの表情が引き締まった。
こうして――
桜桜花高校との練習試合当日。
東鶴間高校野球部は、バスに乗り込み、桜桜花高校へ向かった。
決戦の時が、近づいていた。




