第115話 東鶴間の問題、再び
新入部員が入り、東鶴間高校野球部は今日も練習に励んでいた。
そんなある日――
部室に全員が集められた。
監督の九条咲が、静かに口を開いた。
「みんな……そろっているな」
部員たちは、自然と背筋を伸ばす。
「新入部員も入ったことで、人数の問題は解決した。投手も五人いる……だが、まだ問題が残っているんだ」
部員たちは顔を見合わせた。
何のことか分からない。
九条は続けた。
「うちの野球部は今……捕手が何人いるか、気づいているか」
キャプテンの進藤竜也が、頭の中で数える。
そして気づいた。
捕手は――
中山太郎と高橋雪夜の二人しかいない。
「気づいたか……そうだ、うちには捕手が二人しかいないんだ」
今年の一年生の中に、メインポジションが捕手の者はいなかった。
九条は少し困ったように言った。
「まあ……渡辺が引退して、捕手が減ったからな……仕方ないことではあるが……」
その時だった。
「……あの、監督」
雪夜が手を挙げた。
「どうした、雪夜」
「だったら、三番手捕手を白石広志に任せたらいいと思います。広志は守備が上手いから、教えたことがあります」
九条は広志を見る。
「本当か、白石」
広志は少し緊張しながら答えた。
「はい。雪夜さんから捕手の手ほどきを受けたので、出来ない人よりはマシだと思います」
九条は頷いた。
「そうか……なら、なにかあったら頼むぞ」
「はい、分かりました」
進藤が確認するように言った。
「監督、これで問題は解決ですか」
九条は首を横に振った。
「いや、まだ問題があるんだ」
部室の空気が、少し張り詰めた。
「実はな……桜桜花高校から、練習試合を申し込まれたんだ」
その瞬間――
部室の空気が一変した。
全国大会優勝校。
桜桜花高校。
二年生と三年生は忘れていなかった。
去年の県大会――
5対17。
あの大敗を。
忘れるわけがなかった。
胸が高鳴る。
同時に、緊張が走る。
東鶴間高校野球部は、
再びあの強豪と向き合うことになった。




